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北沢豪さんがスポーツとアートで狙う「障害者の自立」 「パラリンアートカップ」で審査員、その可能性を語る

2017/8/5

「SOMPOパラリンアートカップ」の審査員を務める元サッカー日本代表の北沢豪さん

 障害者の支援活動に取り組む一般社団法人、障がい者自立推進機構は、障害者が描いた絵画などのコンテスト「SOMPOパラリンアートカップ」を毎年開いている。今年のテーマは「サッカー」と「バスケットボール」で、9月22日まで作品を募集する。

 審査員の1人である元サッカー日本代表の北沢豪さんは日本経済新聞のインタビューで、障害者アートの魅力について「自分たちとまったく異なる発想」と語った。日本障がい者サッカー連盟(JIFF)の会長として障害者によるサッカー競技の普及にも取り組んでおり、「アートやスポーツでスターを生み出し、経済的な自立につなげたい」と意気込みを示した。

 ――北沢さんは、サッカーをテーマにした昨年のパラリンアートでも審査員を務めました。印象に残った作品を1つあげてください。

 「千葉県在住のTaeさんが描いた『球蹴る足』です。注目すべきは、その発想ですよ。ボールを中心にして、サッカーに必要なものがつながっています。描かれているのは足の裏側ですよ。僕らとは、まったく違う発想です。そして、しっかりと中心に据えるものが決まっている。中心にある大事なものから考えるという発想は忘れがちじゃないですか。外枠ばかり攻めていた自分にとって、大切なものを見落としてはいけないというメッセージを感じました」

昨年、日本障がい者サッカー連盟賞に選ばれたTaeさんの「球蹴る足」(提供:障がい者自立推進機構)

 ――今年はどんな作品を期待していますか。

 「今年はテーマにバスケットボールも加わりましたから、サッカーとバスケットボールが融合している作品が出てくるんじゃないかと思っています。別々の競技ではありますが、スポーツという枠組みはひとつです。健常者と障害者も同じで、ひとつといえるかもしれません。何かと何かが混じり、垣根がなくなっていくことを想像させます。僕はJIFFの会長として、共生社会をつくり出すために何が必要なのかを考えています。そのヒントがもらえそうな気がしています」

 ――20世紀前半の五輪には「芸術競技」もあって、スポーツ選手と同じように芸術家が競い合っていました。スポーツとアートは垣根が低いのかもしれません。

 「僕らがサッカーしているときには、どうやって芸術的なプレーを見せようかと、『絵づくり』を意識します。プレーには『リズム』もありますし、計算もあります。ですからサッカーは絵画的な要素と音楽の要素、そして理数的な要素の集合体ですね。ほかのあらゆるスポーツも同じだと思います」

 ――障害者の支援ということでは、経済的な自立も考える必要があるのではないですか。

 「僕は(コンテストの入賞者が)賞金を獲得できるようにしてもらえればなあと思っています。お金の話になると、いやらしい感じを受けるかもしれませんが、障害者が仕事に就くのは大変なんです。それって『生活』そのものじゃないですか。コンテストで作品が評価されることで、チャレンジする喜びだけでなく、少なからずお金が入って、生活が変わっていくようになればよいと思います」

 「コンテストで大賞をとった人がヒーローやヒロインになって、ちゃんとした仕事があるということになっていくと、経済的な自立につながっていきます。たとえば今回のパラリンアートで審査員を務める(ダウン症の)書家、金沢翔子さんは9月23~30日に上野の森美術館(東京・台東)で入場料をとる個展を開きます。有料の個展ですよ。これこそ象徴だと思います。自分が持っている能力によって、お金を払ってでも見に行きたいものを創造する。そういうことを評価する社会にしないといけない」

 ――自立できる環境が必要なのは障害者スポーツも同じではないですか。

 「僕が会長を務めるJIFFは障害者サッカーの普及に取り組んでいて、有料でお客さんを呼べるようにしたいと考えています。『かわいそう』という思いからではなく、『すごい』と思って見に来てもらって、お金を生み出せるようにしたいのです」

 「有料でお客さんを呼ぶには、競技場などを借りなければなりません。そのためにはお金が必要で、お客さんが入らないかもしれないというリスクも負わなくてはならないから踏み切れない。そのリスクを軽くするために、スポーツ庁などが何らかの補填をしてくれれば、チャレンジしやすくなります」

 ――選手たちの意識も変わるでしょうか。

 「お金を払って見に来てもらうようになれば、選手の意識も変わってくると思います。責任感を持ってプレーをする人が出てくれば、頂点の位置が高くなりますから、全体の普及活動も強化活動もしっかりしてくるでしょう」

 ――障害者サッカーにも、書家の金沢翔子さんのような象徴的な存在が求められますね。

 「今はスター選手が活躍する場もないから、選手はスターになろうとも思わない。でも環境が変わってスターが出てくると、障害を持って生まれてきた子も『俺もあんなふうになりたいな』と思えるようになるでしょう。そういうことが大事だと思います。『どうしようかな』と考え込むよりも、『前を向いていこう』と思わせるような存在をつくることが大切。プロ化まではいかなくても、それに近いものを考えるべきだと思います」

 ――20年の東京パラリンピックはスター選手が登場するきっかけになるのでは。

 「もともと選手にはピッチで活躍する格好良さがありますし、その背景には、彼らが乗り越えてきたものがたくさんあります。東京パラリンピックで注目されれば、選手が元来持っている魅力との相乗効果も期待できます」

(聞き手は山根昭)

北沢豪
 1968年生まれ。元サッカー日本代表。本田技研、V川崎(現東京V)で活躍。日本代表では58試合に出場。ワールドカップの米国大会予選、フランス大会予選などで活躍した。2002年に引退した後は国際協力機構(JICA)オフィシャルサポーター、日本サッカー協会理事、日本障がい者サッカー連盟(JIFF)会長などを務める。
SOMPOパラリンアートカップ
 損害保険ジャパン日本興亜がトップスポンサーになり、日本経済新聞社などがメディアパートナーを務めている。2017年のコンテストで募集する作品は水彩画、油絵、切り絵、版画、書など。サイズはA4判からA3判まで。締め切りは9月22日。12月に審査結果を発表、表彰式を開く。問い合わせは運営事務局(電)03・5565・7279まで。

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