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「汗かき下手」は肌トラブルのもと 汗の意外な役割

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

連日厳しい猛暑が続く今夏、例年以上に「汗」が気になる人も多いのではないだろうか。汗をかくとアトピー性皮膚炎のかゆみが増したり、あせもや炎症などの肌トラブルにつながることが少なくない。しかし、汗は本当に悪者なのだろうか? 夏になると気になる汗と皮膚の関係について、大阪大学医学部皮膚科学教室准教授・室田浩之さんに聞いた。

――暑くなると大量に汗が出てうっとうしいものですが、汗は体にとって大切な役割を果たしているのですよね。まずはご専門の皮膚と汗の関係から教えてください。

診療でお会いする多くのアトピー性皮膚炎の患者さんも「汗をかくと気持ちが悪い」、そして「ものすごくかゆい」と訴えます。そのため、従来、汗はアトピー性皮膚炎の悪化因子と考えられてきました。臨床現場でも汗をかかないよう指導する医師が多かったのですが、短絡的に「汗を避けるべき」という指導では、患者さんの生活はとても制限されてしまいます。そこで私はエビデンス(科学的根拠)に基づく適切な指導をしたいと汗の研究を始めました。そして、多方面の研究の蓄積もあり、近年、汗には様々な機能が備わっていることが分かってきました。

明らかになってきた汗の役割

――具体的にはどんな機能があるのでしょうか?

まず、汗には「体温調節」の機能があります。例えば体重70kgの人が運動などで上がった体温を1度下げるには、100mLの汗をかくことが必要で、皮膚表面に出た100mLの汗全てが蒸発する気化熱で体が冷やされることによってようやく1度下げられます[注1]。通常、健康であれば環境と体温上昇に応じて、暑い日にはその分たくさん汗をかいて体温調節をしているのですが、少しでも汗をかきにくい状態になると容易に体温が上がりやすくなり、うつ熱(体内に熱がこもる状態)や皮膚温の上昇が生じ、熱中症のリスクにもつながります。

2つ目に、汗には「保湿」作用もあります。汗の中には乳酸ナトリウム、尿素など、水と親和性の高い天然保湿因子が含まれています。皮膚の保湿にはこういった汗の成分が大きく貢献しており、汗をかけない人はドライスキン(乾燥肌)になっていきます。

3つ目に、汗の中には抗菌ペプチドなどの「生体防御」に関わる物質も含まれています。抗菌ペプチドは皮膚表面で悪影響を及ぼすバクテリアの細胞膜に付着して、その発育を抑えます。皮膚表面でもいわば善玉、悪玉というような各種の菌が共生していますから、汗がきちんとかけるということは、適切な菌の発育に貢献し、細菌叢(そう)のバランスを整えるのに重要だと考えられます。

さらに、アレルギーの原因となるダニなどの抗原は、プロテアーゼと呼ばれるタンパク分解酵素を持っていて、タンパク質を溶かすことで皮膚に入り込み炎症を引き起こすのですが、汗にはこれらのタンパク分解酵素を抑える作用があることが報告されています(抗原失活)。ですから汗をかくことで、アレルギーの原因となる抗原の悪影響も、ある程度抑えられるのではないかと考えられます。

かいた汗を放置すると、あせもや炎症の原因に

――では、なるべくたくさん汗をかき、かいた汗は拭き取らないほうがいいということでしょうか?

汗は、かいてすぐのうちは皮膚表面にとどまって保湿や抗菌などのメリットを発揮しますが、時間とともにそのメリットが損なわれるようです。抗原失活効果は汗をかいてから45分後には著明に低下するという報告があります[注2]。そもそも汗は蒸発することによる気化熱で体を冷やす働きがあるため、かいた汗が全部速やかに蒸発して、皮膚表面に残らないのが理想的な発汗といえます。テカるような汗や流れるような汗をかいたときは、放置せずにタオルやおしぼりなどで吸い取るか、水で洗い流すかしたほうがいいでしょう。

皮膚表面に残った汗を長時間放置すると、皮膚に様々な悪影響が出てくることも分かっています。一つはあせも。これは汗が通る道筋(汗管)が詰まることによって水ぶくれや皮疹ができるもので、肘の内側や膝の後ろや、首など、蒸れて汗がたまりやすい場所にできます。あせも以外にも、汗と皮膚表面のほこりなどが混ざってたまると、それが刺激になってかゆみや炎症を引き起こすこともあります。

さらに、そうした場所を放置すると汗をかきにくくなることもあります。1967年に、ザルツバーガーというアトピー性皮膚炎の名付け親でもあるアメリカの皮膚科医が、48例の成人男性の左側の背中にラップを48時間貼って密閉した実験があります。48時間後にはラップを貼ったところにあせもができていたのですが、ブロムフェノールブルー反応(発汗がある部分は青色になる)で見ると、あせもができたところは、多くの被験者がその後ラップを外しても約2週間汗が出ていなかったのです。皮膚は長時間湿潤した環境下に置かれると、汗の出口が閉塞してあせもができたり、汗をかきにくい状況に陥ることが示唆されました[注3]

このように、汗をかいたあと長時間放置することは、メリットが少なく、逆にデメリットが多いことが分かっています。汗はかいても全く問題のないもの。ただし、それを放置せず、速やかに拭き取ったり、洗い流したりすることが大切なのです。

――なるほど、汗をかくこと自体は、全く避ける必要はないんですね。アトピー性皮膚炎の人にとっても、汗は「かいても問題ない」といえるのでしょうか。

[注1]小川徳雄『新 汗のはなし-汗と暑さの生理学』(アドア出版)

[注2]Yokozeki H,et al. Am J Physiol. 1991;260:R314-320.

[注3]Griffin TB,et al. J Invest Dermatol. 1967;49(4):379-385.

はい、そういえます。日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン(2016年版)でも、「発汗を避ける指導が症状を改善したとするエビデンスはない」と記載されるなど、今では、汗をかくこと自体がアトピー性皮膚炎を悪化させるという明確な根拠はない、とされています。同じガイドラインでは、「発汗を避ける指導は必要ない」として、「汗をかくこと(発汗)」と「かいた後の汗」を区別して考えるように推奨しています。

アトピー性皮膚炎は「汗停滞症候群」?

――ここからは、アトピー性皮膚炎と汗の関係についてお聞きしていきます。先ほど、あせもができたところはしばらく汗がかけなくなるという話が出てきましたが、アトピー性皮膚炎の人も皮膚の炎症が起こります。つまり、アトピーの患者さんは汗をかけないことが多いということでしょうか?

私たちの研究でアトピー性皮膚炎の人の発汗量を測定したところ、健康な人のおよそ半分以下、発汗刺激をしてから汗が出てくるまでの時間も長くかかることが分かりました。皮膚の温度を下げるにはさっと発汗して速やかに蒸発してほしいのですが、アトピー性皮膚炎の人はじわじわゆっくりとしか汗がかけないのです。

おそらく多くの患者さんは汗をかいているという自覚はあるけれども、じめっと湿っている感じで流れるほどはかけておらず、そういうときに限って皮膚の温度も上がり、かゆみが増します。患者さんの中にはこういった発汗異常がある人が少なくないと思われます。ただし、患者さんの全員が汗を上手にかけないというわけではなく、なかには健康な人と同じように汗をかける人もいます。

アトピー性皮膚炎の人の発汗異常は、歴史的にも古くから指摘されていました。ザルツバーガーは1947年に「アトピー性皮膚炎は汗停滞症候群である」として、汗の出口が詰まってあせものような皮疹ができたり、汗が停滞してしまうことで皮膚が乾燥や感染を起こしやすくなるのではないかと言っています。こうしたことからも、汗をかけないことは問題だと考えられるわけです。

私も日常診療で、「皮膚が熱くなるとかゆくなり、体から熱が抜けないような感じがして、しんどい」と訴えるアトピー性皮膚炎の患者さんほど、ほとんど汗が出ていないことを経験しています。そういう人は、日頃から汗をかく機会が少ないようです。恐らく汗をかかないことが習慣化すると、汗をかきにくくなるのではないかと思います。

また、患者さんのなかには、昔アトピー性皮膚炎があって、改善したけれど、思春期や成人になって再び悪化する人もいます。そうした人に聞いてみると、子どもの頃は運動をして汗をかいていたけれど、今では運動をしておらず、オフィスなど空調環境下で過ごしている人が多いです。もしかしたら、発汗機会が少ないライフスタイルになって、汗をかく反応を起こしにくくなっていることも、アトピー性皮膚炎の再燃と関係しているかもしれません。

――汗をかける人、かけない人、それぞれ治療はどのように進めるのがよいと先生は考えていますか?

汗をかけない患者さんの特徴は、乾燥がひどい、暑いところに行くとかゆみが出やすい、皮膚に熱感がある、そして多くの場合、皮膚のシワを避けて皮疹が出ることです。汗をかけている人の場合は肘の内側、膝の後ろなどのシワに皮疹が出やすい。というのはそこに汗が流れ込んでたまるからです。

こうした臨床症状や発汗試験などから状態を見極めて、それぞれの患者さんに合った治療方針を決めます。汗がかけていないと思われる人の場合は、皮膚の炎症が汗を止めてしまうことがあるので、ステロイド剤などの炎症を抑える塗り薬で治療しながら、汗をきちんとかけることを目標に指導します。

一方、汗がかけている人の場合は、余分な汗を放置することで皮膚の炎症が悪化し、汗をかけなくなっていきますから、汗をかいたあとの対策を優先します。具体的には、「長時間放置しないこと」が大切で、汗をかいたら洗い流す、おしぼりや濡れタオルで汗を吸い取ることが基本です。運動などで発汗する習慣を持っている人などは、かいた汗をこまめに洗い流すだけで肌の皮疹やかゆみが改善していくケースもあります(次回「あせも、かゆみ… 汗の肌トラブル防ぐ5つのコツ」で、衣類や入浴法などの汗対策を詳しくお伝えする)。

――アトピー性皮膚炎の患者さんはどんな心構えで汗と付き合えばよいでしょうか?

アトピー性皮膚炎の患者さんは、汗をかくとかゆいからと汗を恐れている人が多いのですが、「汗をかくとかゆくて」と患者さんが言うときは、私は「そのときこそ症状を改善するチャンスですからケアをしましょう」とお話ししています。かゆみを起こすということはまだ少し治療が必要ということですから、きちんと薬物療法も行います。並行して運動などで発汗する機会を持ち、汗がかけるようになれば、もっと皮膚の熱も冷めるでしょうし、乾燥肌も改善するでしょう。患者さんには、汗をかけるのはいいことだとポジティブに捉え、積極的に取り組んでもらいたいと思います。

次回は、「あせも、かゆみ… 汗の肌トラブル防ぐ5つのコツ」について紹介する。

室田浩之さん
 大阪大学医学部皮膚科学教室准教授。1995年長崎大学医学部卒業、2002年長崎大学大学院修了。国立療養所川棚病院(現長崎川棚医療センター)、長崎大学医学部附属病院(現長崎大学病院)などを経て、2004年大阪大学大学院医学系研究科皮膚科学教室助手となり、アトピー性皮膚炎専門外来などを担当してきた。日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版の作成委員と分担執筆を担当。

(ライター 塚越小枝子)

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