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キリンR&D本部のリサーチフェロー、村上敦司氏

キリンR&D本部のリサーチフェロー、村上敦司氏

ホップ博士「ドクター・ムラカミ」がドキドキの夏を迎える。ビールの味や風味を左右するホップ。キリンR&D本部のリサーチフェロー、村上敦司(54)はドイツのホップ研究協会からアジアで唯一のビール用ホップの技術アドバイザーとして認められている。20年近く手塩にかけたホップが「MURAKAMI・SEVEN(ムラカミ・セブン)」としてその実をつける2度目の夏だ。

ムラカミ・セブン、即完売

8月20日が迫っている。村上が緊張しながら待つこの日、岩手県遠野市の契約農家の畑10アールでムラカミ・セブンが収穫される。うまくいけば100キロ~200キロ。「どうか台風が来ませんように」「お天気に恵まれますように」。毎日、村上の祈る日々が続く。

村上が育てたホップでつくるビール「シングルホップ・ムラカミ・セブン」は今、世界中で最も注目されるホップといっていい。昨年、初めて通販サイトで発売したところ、あっという間に売り切れてしまった。

イチジクのようにしとやかだけれど華やか、控えめだが芯がしっかりした大和撫子(やまとなでしこ)のようなホップ。「世界でも類をみない傑作」だ。カリスマ・ブリュワリー(醸造家)として名高い米国のギャレット・オリバーも「ファンタステイック! 気に入った」と評価する。

だが、ムラカミ・セブンがたどってきた道は決して平たんではない。もともと「エサシNo.7」とよばれたこのホップ、実は15年以上も前に天寿を全うする運命だった。本社が「新しいホップを作り出したとしてもとても量産できない。コスト上無理がある」として品種改良を打ち切ることを決定、栽培していたホップを全て処分することになり、エサシもその一つとして姿を消すはずだった。

貴重なホップ、こっそり移管

ところが、その危機を村上の機転が救った。当時、村上はビール醸造研究所の研究員。約800種類あったうち約20種類を「捨ててしまうには、あまりに惜しい」とこっそり引き抜き、岩手ホップ管理センター(岩手県奥州市)に移管しておいたのだ。「時期が来るまで育てていてほしい」。管理者に頭を下げた。

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