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「責任はすべて加害者に」 性被害の法整備働きかけ SANE=性暴力被害者支援看護師(折れないキャリア)

2017/8/5 日本経済新聞 朝刊

 性暴力被害者支援看護師(SANE)として、性暴力被害者への理解を深めるための講演、研修活動をしている。7月には性暴力に関する政策提言をする一般社団法人Springをつくった。5月までは病院の現場で看護師としても働いていたが、今は活動に専念する。

山本潤 杏林大学大学院修了。看護師資格を取得。2017年から一般社団法人Spring代表。43歳

 活動を始めたのは自身もまた、性暴力の被害者だからだ。13歳の時、実の父親から体を触られた。両親が別れるまで7年間続いた。

 父親と離れた後も精神的な被害は続いた。男性に恐怖感を覚える。自分が置かれている状況を忘れようと、アルコールに頼ることもあった。男性が少ない職場を求め、看護師の資格を取った。

 職場に男性の医師や患者がいることで、働くうちに皆が性暴力を振るうわけではないと知った。救急病棟のように人の生死に関わる仕事はやりがいがある。私生活でも夫をはじめ、様々な人と関わる中「少しずつもがきながら自分を取り戻した」。

 性暴力について学び、SANEとなったのが10年前だ。自らの経験を人前で話すのは勇気のいることだったが「自分が伝えなければ何も変わらないと思った」。日本社会は海外に比べ、性暴力への理解がない。性暴力なんて大したことはない、被害者にも責任があるのではという風潮がある。「責任はすべて加害者にあるんだと伝えたかった」

 やりがいを感じるのは参加者からの反応をじかに感じるとき。例えば、ある男性警察官から「被害者からの聞き取りをするときにどう対応すべきか考えたい」と意識が変化したとの感想を聞いた。「言えばきちんと伝わる」と実感できた。

 被害者を守るためには加害者を罰する法律の整備が欠かせない。先日、性犯罪に関する罰則規定が抜本的に改正された。これまで女性のみを被害者と認定してきた性別規定の撤廃などを盛る。ただ、犯罪の認定には抵抗できないほどの脅迫や暴行があったとの証明が必要。被害者には、怖くて抵抗すらできない人も少なくないから「まだ本質的な改正ではないと感じている」。

 今後は日本社会の性暴力被害への理解を深め、さらなる法整備につなげたいという。性暴力に遭った人に救いの手をさしのべ、当たり前のように支える社会になってほしいと考えている。

(聞き手は渡辺夏奈)

[日本経済新聞朝刊2017年7月31日付]

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