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ハマるジン、食べ比べチョコ 語れる、がヒットの目玉

日経トレンディ

2017/8/2

日経トレンディ

 おいしいだけ、便利なだけではもはや売れない。今、消費者の心を強く捉えているのが「語れる商品」だ。それも、SNSでつながる見知らぬ誰かにではなく、身近な人につい語りたくなる強いストーリーを持ったものが存在感を増している。

 その象徴といえるのが、手の込んだ製法で個性を打ち出したクラフトビール。驚くほど多様性があり、知れば知るほど深みにハマる。結果、つい飲みながら語り合い、リアルな場で「いいね!」を共有したくなるのだ。従来はビール好きのたしなみだったニッチなジャンルが今、一般化しつつある。

 クラフト化の波はとどまるところを知らず、ビール以外にも拡大を続ける。京都発の和製クラフトジンや、カカオ豆の産地ごとの味を堪能できる「Bean to Bar」を体現した「明治 ザ・チョコレート」(明治)が異例のヒット。どちらも飲み比べ、食べ比べができる楽しさが知識欲をくすぐって共有を促し、裾野を劇的に広げている。

■クラフトブームの最先端「クラフトジン」

 手の込んだ製法や材料の工夫で、個性的な味わいを生み出すクラフトビールが人気だ。その波が、今度はジンに押し寄せている。欧米には多くのクラフトジン蒸留所があり、日本にも2016年秋、京都や岡山にジンの小規模蒸留所が相次ぎ誕生した。

ウィスク・イーは京都にジン専用の蒸留所を設立した。京都産の素材を数多く使用している
宮下酒造「岡山」長年焼酎やウイスキーで培った蒸留技術をジンに応用。樽貯蔵で熟成するのが特徴

 ジンは原材料として、香り付けのスパイスなどを組み合わせて造る。国産クラフトジンでは、サンショウやユズなど日本独特の素材を使う他、地域の特産品を使うなど、他の酒類と比べて個性を出しやすいのが特徴だ。

 この多様性やオンリーワンのストーリー性に、知識欲の強い“クラフト好き”が敏感に反応。飲みながら好みを語り合ったり、誰かに薦めたりと、これまでなかった“語れるジン”に熱い支持が集まった。

 酒類の輸入販売を手がけるウィスク・イーが16年10月に発売した「季の美 京都ドライジン」は、玉露を使うなどした限定品9000本が発売直後から品薄に。17年6月にはアサヒビールが、7月にはサントリースピリッツが個性的な味わいの高級ジンを発売して参戦。「数年前まで1本3000円以上のクラフトジン市場はほぼなかったが、急激に立ち上がった」(ウィスク・イーCEOのデービッド・クロール氏)と言う。

「季の美 京都ドライジン」
アサヒビール「ニッカ カフェジン」リンゴや和かんきつを使い50年以上使用する伝統の蒸留器で造る高級ジン
サントリースピリッツ「ROKU」ビームサントリー社と共同開発した高級ジン。桜花や煎茶などを使用

 ジントニックはそのベーシックさ故、バーの実力がわかるカクテルともいわれ、バーテンダーもクラフトジンに熱い視線を注ぐ。アサヒビールの山根卓也氏は「ジンとトニックウォーターの配合比といったレシピだけでなく、ジンそのもので他店と違いを出せる点が、バーテンダーには魅力的」と分析。“酒の伝道師”をも巻き込み、ブームは加速している。

■キャッチーなデザインで誘う「明治 ザ・チョコレート」

 カカオ豆の選定からチョコレートの製造までを一貫して行い、産地ごとの味の違いを楽しむ「Bean to Bar」。専門店が中心だった嗜好性の高い世界を市販品に落とし込んだ「明治 ザ・チョコレート」(明治)が大ヒットしている。16年9月の発売から半年で約2000万枚を突破。16年ヒットしたロッテの「乳酸菌ショコラ」をしのぐ勢いだ。

「明治 ザ・チョコレート」

 実はザ・チョコレートは、14年に高級感を打ち出し、2種類の味で発売したが大苦戦。その反省を踏まえ、今回はパッケージをガラリと変え、ラインアップも全7種類に拡大した。

 新パッケージは、手作り感を想起させるクラフト紙風の茶色い紙箱を採用。それぞれの味や香りの個性を、箔押し加工で光沢感を出したおしゃれなカカオのモチーフで表現している。この写真栄えする凝ったデザインが、店頭で異彩を放った。

カカオのイラストを切り抜き、しおりにして使用するアレンジも流行

 まず反応したのは若い女性だ。インスタグラムなどのSNSにパッケージの写真を投稿する人が続出。箱を切り抜いてスマホカバーやしおりに加工するなど、リメークを楽しむ人まで現れた。収集欲、創作欲を刺激された女性が、コンプリートを楽しむ姿も目立った。

 また、既存の板チョコは横型デザインばかりだが、ザ・チョコレートは異例の縦型。「省スペースで多くの商品を並べられ、店頭で目立つ」(明治の佐藤政宏氏)といい、実際、棚争奪戦が熾烈なコンビニでも全種類並べるところが多い。併せて店頭では味や香りの特徴を表すチャートも掲示したことで、複数の食べ比べを誘発。驚くほど味わいが異なる本格チョコに多くの人がハマった。「ワインのように知識欲を刺激できたことで、男性の購入比率も予想以上に伸びている」(佐藤氏)

小売店の販売棚には味の解説も個別に用意している

 さらに、ワークショップ形式で食べ比べをしながら学べる「カカオ会議」を全国で開催。リアルな場でファンの共感を呼び、板チョコを単なる「子供のおやつ」から「大人の嗜好品」へ昇華させた。

(日経トレンディ編集部)

[日経トレンディ2017年8月号の記事を再構成]

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