安全機能充実の新レクサス 死亡事故原因の半分に対応
レクサスがフラッグシップセダン「LS」の新型モデルを日本で初披露した。2017年秋以降にフルモデルチェンジを実施する予定だ。現時点では、ガソリン仕様の「LS500」ハイブリッド仕様の「LS500h」の存在が明らかになっている。
LSはレクサスの最上級セダンで、初代から3代目までは日本ではトヨタ「セルシオ」として販売され、4代目から日本でもLSとして販売されるようになった。5代目となる新型は11年ぶりの世代交代だけあって、あらゆる面を一新している。
新型は2017年1月に米国ミシガン州デトロイト市で開催された「北米国際自動車ショー(通称デトロイトモーターショー)」で世界初公開されており、今回は秋の発売に先駆けて、右ハンドルの日本仕様と、搭載予定の先進予防安全技術についても発表された。
最大の注目はやはり安全装備だ。今回初めて搭載される予防安全パッケージ「Lexus Safety System +A」は日本、北米、欧州で導入予定で、2015年に導入が始まった現行型の予防安全パッケージ「Lexus Safety System +」の機能をさらに高めたもの。特に注目すべきは、「プリクラッシュセーフティ(歩行者注意喚起・アクティブ操舵回避支援)」「Lexus CoDrive」「ドライバー異常時停車支援システム」の新機能だろう。
世界初のアクティブ操舵回避支援
警告、ブレーキアシスト、自動ブレーキで衝突回避支援および被害の軽減につなげるのは従来型と同じだが、世界初の歩行者注意喚起とアクティブ操舵回避支援を装着した点が大きい。歩行者注意喚起機能は、前方の歩行者と衝突の可能性があると判断すると、ドライバーの目の前に表示される大型ヘッドアップディスプレイに、歩行者がいる方向を分かりやすくアニメーションで示し、注意を促すもの。アクティブ操舵回避支援機能は、自車線内の歩行者や、ガードレールのような連続した構造物と衝突する可能性が高いと判断した場合、警告とブレーキ制御に加え、ステアリングを自動操舵することで、衝突被害回避あるいは軽減を支援するもの。
車線変更もサポートする「Lexus CoDrive」
レーダークルーズコントロール(ACC)、レーントレーシングアシスト(車線内走行維持支援:LTA)、レーンチェンジアシスト(自動車線変更支援:LCA)の3機能を連携させることで、高速道路や自動車専用道路で、自動運転レベル2(加減速とハンドルの両方を自動化する)に相当する運転支援を実現。この新機能の総称が「Lexus CoDrive」だ。
ACCは全車速対応。ACC作動時に車線内を維持するように自動操舵を支援するアクティブレーンキープ機能のLTAは、白線を認識して車線を維持する機能に加え、先行車の走行軌跡を利用した追従により、渋滞時などの車線が認識できない場合にも支援を継続できるようになったという。またナビゲーションの情報を基に、カーブへの進入速度が速いと判断すると、ディスプレー表示で注意を喚起し、自動的に減速する。
新たに加わったLCAは、ドライバーがウインカーを操作すると作動する車線変更支援機能で、周辺の道路状況を監視しながらステアリングを自動で操舵、加減速を行い、車線を変更し終わると機能がオフになる仕組み。レクサスでは、将来の自動運転につながる高度運転支援機能だという。
なおLCAは当面、日本のみの対応となる。
ドライバー異常時には停車して救援要請
ドライバーが運転操作を行わない場合に、自動停車させる機能。LTA制御中にドライバーの無操作状態が続くと、音と表示、緩やかな減速によってドライバーに警告。さらにハザードとホーンで車外に異常を知らせながら、自車線内に減速停車し、自損・加害事故の回避、事故被害の低減を図る。停車後は、ドアの解錠とヘルプネット(緊急通報サービス)に自動接続し、救命要請も行う。
ほかにも交差点での出合い頭の事故を予防する交差車検知警告機能「フロントクロストラフィックアラート」、LEDヘッドライトを細やかに制御することでより照射範囲を広げた「上下2段式アダプティブハイビームシステム」、カメラやナビゲーションマップを用いて交通標識情報をディスプレー表示する「ロードサインアシスト」、駐車場での事故被害軽減を目的とした「パーキングサポートブレーキ」など多彩な機能を備えている。
安全機能は2017年末までにほぼ全車に搭載
開発の際には、世界でも有数の複雑な自動車専用道路として知られる首都高速も走り込んだというだけに、走行性能やLexus Safety System +Aのカバー範囲にも注目が集まっている。安全性能については、トヨタ自動車先進技術開発カンパニープレジデントの伊勢清貴氏は「新型LSは、世界で最も安全なクルマを目指した」と自信をうかがわせた。ただ誤解してはいけないのは、だからといって首都高のような厳しい道路環境でも、LEXUS CoDriveのような運転アシスト機能がフルに使えるという意味ではないこと。どのような仕上がりになっているかは、発売後に実際にテストしてみるしかないだろう。
トヨタ、レクサスともに現在、「交通死傷者ゼロ」を目標とした新車の開発に力を注いでいる。レクサスによれば歩行者事故、逸脱事故、交差点事故、追突事故が日本の交通事故の約90%を占めており、それぞれの事故形態を分析して、対応する安全技術を開発して目標を実現する考えで、その点Lexus Safety System +Aは、交通死亡事故要因の50%弱までカバーできる内容となっているという。
ただし、トヨタ全体で目標をクリアしていくためには、効果の高い先進安全技術を開発するだけでなく、小型化、低コスト化により多くの車両に搭載できるような普及技術も開発しなければならない。
例えば現行型の予防安全パッケージLexus Safety System +と、トヨタの衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense」は、すでに搭載車の事故低減効果も出ているといい、現在はトヨタとレクサス合わせて32車種に搭載しているが、2017年末までには日米欧で展開するほぼすべての乗用車に設定を完了させる予定だという。
また近年増加する踏み間違え事故の低減につながる「インテリジェントクリアランスソナー」は、前後の超音波センサーで障害物を検知し、出力抑制と自動ブレーキをかける機能。現在11車種に設定しているものを、主力車種を中心に搭載車種を増やし、2018年度末には全体の90%の車種に設定予定だ。
死亡事故ゼロ実現に向けた安全運転支援機能の普及
今後レクサスは、LSに搭載するLTAなどを組み込んだ次世代のLexus Safety System +Aと、Toyota Safety Senseを2018年より全車で展開を開始し、安全運転支援機能をさらに普及していく考えだ。
ただ死亡事故ゼロの実現の具体的な目標達成時期は、「エンジニアとしては、なるべく早い実現を目指したい」という伊勢氏の言葉から察するに、死亡事故ゼロに向き合う難しさがうかがえた。ただ、トヨタとレクサスのモデルには今後、加速度的に今回のLS同等の安全機能が搭載されていくだろう。
4ドアクーペのようなエクステリア
新型LSのエクステリアは先代の高級セダンらしいスタイルから、4ドアクーペとも呼べる流麗なデザインになった。2017年3月に発売されたフラッグシップクーペ「LC」で採用された新開発の「GA-Lプラットフォーム」を新型LSにも採用しており、LS500、LS500hの標準ボディーサイズは全長5235×全幅1900×全高1450mm、ホイールベース3125mmで、前後席ともに車内はかなり広々としている。
パワートレインは全車3.5LのV6エンジンを採用。LS500には新開発のツインターボエンジンに最新の10速ATを組み合わせ、最高出力421ps/5200~6000rpm、最大トルク600Nm/1600rpmを発揮する。ハイブリッド仕様のLS500hには、2017年3月に発売の「LC500h」と同じマルチステージハイブリッドを搭載し、システム最高出力は264kW(357ps)になる。このほか、3.5LのV6自然吸気エンジン仕様があるという。
なお新型LSの発売時期や仕様、価格など詳細な情報はまだ明かされていない。
(文・写真 大音安弘)
[日経トレンディネット 2017年7月11日付の記事を再構成]
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