入荷すれば完売 中高生が夢中、30年前のシャーペン
1000円超ながらも入荷するたびに中高生が我先にと買い求め、瞬時に完売するシャープペンが「スマッシュ」(ぺんてる)だ。相次ぐ高機能シャープペンの新モデルかと思いきや、発売は1986年。そこから約30年間、マイナーチェンジを全くしていないというからさらに驚く。
スマッシュは、一部の文房具マニアが支持していた知る人ぞ知るシャープペン。ぺんてるの製図用シャープペン「グラフ1000」を一般向けにするという目的で約30年前に開発された。内部機構はグラフ1000と同じものを採用。先端部分とグリップが一体パーツになっており、芯をつかむ機構が金属製であるなど、しっかりとした作りで安定した書き心地が売りだ。ペン先がよく見えるよう芯を出すパイプが4mmと長かったり、「芯硬度表示窓」を用意するなど、一般向けでありながら製図用のエッセンスも取り入れられている。
折しも、文房具市場には「芯が折れない」「芯が回転する」といった高機能シャープペンブームが到来。その余波を受けて、最新機能を搭載していないにもかかわらずじわじわと注目度が高まり、13年にはアマゾンの「年間ランキング(筆記具)」で1位を獲得した。韓国で展開していたカラーバリエーションモデル(5色)をロフトが限定版として16年8月に売り出したところ、ユーチューバーのはじめしゃちょーが紹介。動画を見た中高生が文房具売り場に殺到し、「16年度は11年度の約50倍もの出荷本数を記録」(ぺんてる)するほどのブレークとなった。
過去には0.3mm芯、0.7mm芯といったバリエーションの他、ボールペンなども展開していたが、現在ではすべて廃番となり、0.5mm芯だけで長い間ひっそりと生き永らえてきたスマッシュ。製図用のDNAを受け継いだプロ仕様や安定した書き心地など、ギミックに頼らない本質的な使いやすさが、スマッシュの存在を知らなかった中高生に新鮮に映った。
(日経トレンディ編集部)
[日経トレンディ2017年8月号の記事を再構成]
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