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先進医療の負担軽減策は? 民間保険の特約など活用

NIKKEIプラス1

2017/8/3

がんの陽子線治療の設備(筑波大学)

 放射線でがんをピンポイントで狙い撃ちするなど、新しい医療技術で手術や検査をする「先進医療」が広がっている。全額自己負担だが、これを保障する民間医療保険も多い。

 保険会社が医療保険パンフレットなどでよく紹介している先進医療は「陽子線」「重粒子線」といった放射線でがんを狙い撃ちするものだ。メスを入れる開腹手術などに比べて体の負担が少ない。ただし、費用は陽子線、重粒子線ともに全額自己負担で300万円程度かかる。

 このため、先進医療はどれもケタ外れに高額というイメージがあるようだ。会社員のA子さん(33)は「どんな病気でも先進医療なら助かるかもしれない。お金がなくてあきらめるのは絶対にイヤ」と先進医療の費用を保障する民間保険を検討している。

■先進医療の実施件数、5年で7割増

 もっとも、A子さんの認識は必ずしも正確ではない。まず費用を見てみよう。厚生労働省によると、2016年6月までの1年間に実施された先進医療は5年前に比べて7割増の2万4785件。ただ陽子線治療など費用が100万円以上のものは17%にとどまった。半数近くは白内障の「多焦点眼内レンズを使った水晶体再建術」で費用は約55万円。全体の3割強は10万円未満のものだった。

 さらに先進医療は公的医療保険を適用するかどうか「評価中の技術」であり、患者の願いをかなえる「夢の技術」ではない。厚労省は7月1日現在で104技術を指定している。安全性と有効性がしっかり確立したと評価されれば、いずれ保険適用になる。一方、評価が得られず指定から外れる技術もある。

■混合診療、公的医療保険と併用

 それでも試してみたいという患者ニーズがあるので、特別に公的医療保険と併用する「混合診療」を認めているわけだ。先進医療の費用は全額自己負担だが、その他の通常の検査や入院などには保険が適用され、現役世代なら3割の負担。例えば全体の医療費が100万円かかり、うち先進医療が20万円なら、自己負担は44万円になる計算だ。

 先進医療は簡単に受けられるわけではない。治療を受けられる部位や患者の状態などが定められているからだ。例えば陽子線治療は血液のがんや胃がん、卵巣がんなどには通常は使えない。

 さらに104技術それぞれ厚労相が承認した医療機関でしか受けられない。陽子線治療は全国12カ所に限られ、技術によっては1カ所だけのものもある。公的保険が適用される治療に比べて優れた効果が期待できるとも限らない。

 先進医療を保障する民間の保険はどうなっているのか。大半の保険会社は先進医療の保障を医療保険やがん保険の主契約とセットの「特約」にしている。例えばメットライフ生命保険の「終身医療保険フレキシィS」は、最大2000万円まで先進医療の費用が実費で保障される特約を月107円で付ける仕組みだ。他社も同水準の安価な保険料が多いのは使われる機会が多くないためだが、いざというときには大きな力になる。

■先進医療と臓器移植に限定した商品も

先進医療を保障する保険は多い

 医療保険などはいらないと思っていた人が、先進医療特約を主な狙いに新たに加入を検討することも多い。この場合は、少なくとも月数千円の保険料負担になる。先進医療の実情を知ったうえで、医療保険そのものが必要かも含めて総合的に判断したい。

 すでに民間保険に入っている場合、保険会社や商品によっては後から先進医療の特約を付けられないことがある。新しい保険に入り直すと、年齢を重ねている分だけ主契約の保険料が高くなってしまうことも要注意だ。

 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険は昨年、保障を先進医療と臓器移植に限定した医療保険「リンククロス・コインズ」の取り扱いを始めた。先進医療の保障は最大2000万円で、保険料は月500円。こうした単品型の保険も今後増えてきそうだ。

(編集委員 田村正之)

[NIKKEIプラス1 2017年7月29日付]

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