ブツブツ見ると気持ち悪い? トライポフォビアに新説

日経ナショナル ジオグラフィック社

つまり、小さな穴やブツブツの集合体に恐怖を抱く人々は、寄生虫や人から人へと簡単に伝わる病気に不安を感じている可能性があるということだ。研究チームは、天然痘やはしか、チフスなどの病気の症状として現れるブツブツの集合体が、日常生活で目にするよく似た模様への過剰な反応を引き起こしているかもしれないと理論付けている。

恐怖というより嫌悪

研究チームは自らの仮説を証明するため、複数のオンライングループからトライポフォビアを自称する300人を集め、トライポフォビアでないと申告する大学生300人と比較した。どちらのグループも16枚の画像を見せられた。8枚は病変部に見られる小さな穴の集合体で、残りの8枚はハスの花床やれんがに開けられた穴など、病気とは無関係の画像だ。

その結果、どちらのグループも病変部の画像に嫌悪感を抱いていたが、人ではない画像に不快感を示したのはトライポフォビアのグループだけだった。具体的にどのような気分かを質問したところ、恐怖を感じたと答えた人より、肌がゾワゾワするような感覚と答えた人の方が多かった。このように恐怖(fear)というより嫌悪(aversion)を感じる人の方が圧倒的に多かったため、命を奪う動物への恐怖ではなく、病原体への嫌悪がトライポフォビアを引き起こしている可能性が高いと結論付けた。

米フロリダ大学の精神医学の教授で、不安障害を専門とするキャロル・マシューズ氏は、進化の過程で獲得した危険なものへの嫌悪が恐怖症へと発展する理由を説明している。最も一般的な恐怖症はクモやヘビ、高所に対するものだが、これらの嫌悪が一種の防御として働いている可能性があるという。

「すべての恐怖症はある程度、進化による適応から生じているという話です。そのため、(トライポフォビアは)本物の恐怖症だと思われます」

ただし、「病院で治療を受ける必要があるようなものではありません」とマシューズ氏は言い添えている。

電話の呼び出し音から雲まで

確かに、多くの恐怖症は防御の役割を果たしているのかもしれないが、人々の恐怖症の範囲はとどまるところを知らない。「恐怖症リスト」のサイトには、電話の呼び出し音から雲まで、多種多様な恐怖症がリストアップされている。トライポフォビアが本物の恐怖症でないという主張の根拠としてよく挙げられるのは、ネットでトライポフォビアが話題になるにつれ、小さな穴の集合体は不快だと考えるように多くの人が影響を受けたというものだ。

「トライポフォビアはおそらくずっと前から存在しました。インターネットのおかげで、容易に知識を得られるようになったため、人々がいろいろなことを知るようになったのでしょう」とマシューズ氏も話している。

マシューズ氏は寄生虫や病気への恐怖という仮説は興味深いとしながらも、トライポフォビアの完全な解明にはほど遠いと付け加えた。

(文 Sarah Gibbens、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2017年7月18日付]

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