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東京から最短45分 山ガールにもおすすめの島

水津陽子のちょっとディープ旅

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NIKKEI STYLE

島旅というと石垣島など沖縄の島や、直島など瀬戸内の島々を思い浮かべる方が多いでしょう。でも首都圏の近くにも、独特の魅力にあふれるリゾートアイランドがあります。

9つの有人島を含み、100余りの島々からなる伊豆諸島は東京の南方、約100~350kmに広がります。伊豆諸島では1970~80年代に若者を中心に離島ブームが盛り上がりました。ブームは去って久しいものの、多彩な魅力は変わっていません。のんびりしたい大人にも、マリンスポーツやトレッキングを楽しみたいアクティブ派のニーズにもこたえてくれます。今回はそんな東京都の島の中から神津島をご紹介しましょう。

水の伝説が示す豊かな湧水の島

神津島は東京から約180km、伊豆七島のほぼ中央に位置します。島へのアクセスは竹芝桟橋からジェット船で約3時間10分、空路は調布飛行場から約45分。島には東西に港があるため、他の島に比べ欠航率が低いのも特徴です。

島は周囲約33.3km。島の東側には多幸湾、西側には前浜という雰囲気の異なる2つのビーチがあり、朝は海に昇る朝日を、日没には空と海を染める美しい夕日に出合えます。

島はその昔、大国主命の息子、事代主命が伊豆の島々を作るために神々を集めて相談したとされ、古い名前は「神集島」といったとか。島中央にそびえる天上山には、神々が水を島々にどう分配するかについて会議を開いたという水配り伝説が残ります。

水配り伝説の舞台となるだけあって、神津島は豊かな湧水に恵まれ、東京の名湧水57選にも選ばれているほど。この湧水を使い、伊豆諸島で初のクラフトビール「あしたばエール」を醸造するのが2017年春にオープンした「Hyuga Brewery」です(7月28日より販売)。現在のところ飲めるのは店内だけですが、2018年からは瓶入りも販売予定とのこと。店では島の食材を生かした料理や世界のビールも楽しめます。

飲食店には伝統的な島料理のほか、本格的な手打ちそばやフランス料理なども。島の民宿や旅館、ペンションなどでも朝夕、新鮮な地魚料理が味わえます。

海のかなたに富士山 「花の百名山」には異世界の砂漠が!

神津島には、海と山の絶景ポイントが点在しています。島の東側にある多幸湾は、神津島のシンボルである天上山の断崖絶壁や黒曜石が露出する砂糠崎(さぬかざき)、海に浮かぶ丸島などがつくり出す大迫力の景観に目を奪われてしまいます。青々した松に囲まれた多幸湾展望台からの眺めを堪能したら、湾に下りて、豊富に湧き出る多幸湧水を味わってみたいもの。

山ガールにも、そうでない女子にもおすすめなのが天上山トレッキング。天上山(標高572m)は花の百名山や新東京百景の一つにも数えられていて、この標高でありながら高山植物が自生しています。車で行ける6合目の白島登山口から最高地点までは約1時間、山頂の周遊に約2時間として4~5時間の登山コース。歩きやすい靴や服装であれば、初心者でも不安なく登れます(山歩きに不慣れな方は地元ガイドをお願いすることもできます)。

山頂には、水配り伝説で神々の会議の場所となったとされる「不入ガ沢」や、降雨の後にハート形の池が出現する「不動池」などがあります。ハート池を見られたらラッキーかも。山頂付近の荒涼とした「表砂漠・裏砂漠」はまるで月世界のよう。不思議な空間に迷い込んだ気分になります。

三宅島、御蔵島、新島などの島々を一望できる展望スポットはあちこちにあり、天気がよければ富士山や南アルプスも望めます。海のかなたに望む富士山の姿は新鮮です。

ゆるりと散策、アクティブにマリンレジャー

島内は公共交通の便数が少なく、移動は徒歩かレンタカーやタクシー、レンタサイクルなどになりますが、神津島港や前浜海岸に近く、宿や飲食店、商店が集中する村中心部であれば徒歩で過ごせます。神津島港で水揚げされた新鮮なキンメダイや赤イカ、島産のテングサを使った絶品のところてん、名産のあしたば料理など島グルメが堪能できます。

美しい白砂のビーチが1kmにわたって続く前浜海岸は海水浴場としても人気。ビーチ沿いにはシュノーケリングやダイビングなどマリンレジャーのショップや土産店が並び、手軽にランチができる店もこのあたりに集中しています。

ゆるりと散策したいなら、島の開祖・物忌奈命(ものいみなのみこと)を祭る「物忌奈命神社」、江戸初期のキリシタン殉難者「おたあジュリアの墓地」や漁港の竜神様などのパワースポット巡りをしてみては。途中で出合う島ネコにも癒やされます。

海岸線沿いの道を2kmほど北上すると、自然の岩場を利用した温浴施設「温泉保養センター」に到着。大露天風呂や展望露天風呂は、海を間近に眺めながらのんびりくつろげます(露天風呂は水着着用)。もちろんマリンスポーツの疲れを癒やすのもお薦め。

島の宿泊は、民宿や旅館、ペンションなど40カ所以上ありますが、大人のための宿をうたうのが岬の高台に立つ「だいじんこ」。静かな癒やしの空間を大切にするオーナーの方針で、小学校低学年までのお子さんの利用はお断りしています。

客室はわずか4室。島ではトイレや洗面台が共用の宿も少なくありませんが、ここは全室トイレ・洗面台を備え、バス付きの客室もあります。宿泊の基本スタイルはウェルカムドリンクと朝食付きで8000円から。夕食は付きませんがあらかじめお願いすれば作ってくれます。

オーシャンビューの客室や海に面した庭のテラスからは天上山と前浜海岸を一望でき、夕暮れ時には遮るもののないドラマチックな夕日ショー、夜は満天の星空に出合えます。海までは徒歩15分とやや離れていますが、近くには屈指の絶景スポット「ありま展望台」があり、朝夕に散策すれば都会では耳にすることがない鳥のさえずりが聞こえます。

ほかでは見られない「東京の絶景」に、会いに行ってみませんか。

水津陽子
 合同会社フォーティR&C代表。経営コンサルタント。地域資源を生かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、コンサルティング、調査研究などを行う。

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