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人事評価は覆らない スタート時点の行動がカギ 20代から考える出世戦略(13)

2017/8/1

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 一定のタイミングごとに上司に評価をされて、その結果昇給額や賞与額が決まる。その決定方法に理不尽な思いをした人も多いのではないでしょうか。

 たとえば5段階評価で、平均より下の評価が2回も続けば、何をする気にもなりません。

 周囲に愚痴を言っても「努力すればきっと変わるよ」「仕事の進め方を改善すればいいよ」と「助言」されるばかり。自分の気持ちとしては、評価をする上司がわかってくれていないとか、そもそも会社の評価の仕組みがおかしいだろうと考えているのにもかかわらず。

 では人事評価とどのようにつきあうことが正しいのでしょうか。それはそもそも、人事評価がなぜ存在しているのかを考えればシンプルに理解できます。

■上司の評価に納得できないのは当然

まず最初に。「上司がわかってくれない」「隣のあいつより私の方がデキるはずなのに評価が低いのは納得いかない」という不満を持つことは決しておかしくない、ということをお話しておきます。

 評価に納得できないとき、上司側を原因とした理由と、自分を原因とした理由があります。

 第一に、上司側を原因とした理由は、3つあります。

(1) 評価基準があいまい

(2) 評価基準に基づく確認があいまい

(3) 評価をする意識があいまい

 このうち、(1)の「評価基準があいまい」という理由については、評価の仕組みそのものが原因の場合もあります。たとえば「積極性」が評価基準だとして、その基準の具体的な評価方法がないとすれば、それを適切に評価することなんて誰にもできっこありません。また目標管理制度という仕組みを使う場合には、設定した目標が妥当なものでなければやはり納得できる評価結果は得られません。

 (2)の「評価基準に基づく確認があいまい」という理由は、上司と部下が常に一緒に行動しないからこそ起きる問題です。しかし常に一緒に行動する上司と部下の方がレアでしょう。だからこそ、誰が見てもわかるような数字を評価基準に据えたりするのですが、行動や能力の評価だとどうしても確認があいまいになってしまいがちです。また数字評価の場合にでも、本当に数字だけで評価してよいのか、という疑問も生じる場合があります。

 (3)はあまりなさそうなのですが、一部にそういう上司がいることも事実です。「どうせ評価結果なんて決まっているから、評価基準とかどうでもいい」という意識を持っている人が上司になると、どうしても納得性のある評価にはなりづらいのです。

 さて、こうして見てみると、評価に対して納得できなかったり、不満を持ったりするのも当然だと思えるでしょう。

■だからといって評価される側が正しいわけではない

 しかし評価制度を運用する現場を見ていると、それだけで説明がつかない場面がとても多いことに気づきます。いや、むしろ上司側が原因でない場合に、評価はもめることが多いのです。

 たとえばあなたがある同僚から評価の不満を打ち明けられたとしましょう。あなたは彼に合意するでしょうか。

評価に納得できなかったタナカさん:

「君も聞いているかもしれないけれど、今回の僕の評価はずいぶんと低かったんだ。ここだけの話、C評価だ。業績が未達成だったからね。けれども、これもやっぱり君もわかると思うんだけれど、業績が未達成になったのは僕の責任じゃない。顧客側の担当課長が変わってしまって、いきなり去年までの契約を反故にされたからね。だから数字の結果だけで評価されてしまって、どうしても納得ができないんだ」

 これだけだとタナカさんはずいぶん不遇なようです。不満をもっても当然だと思えますよね。しかし、タナカさんからの一方的な情報では判断が難しいと考える人も多いでしょう。では、別の同僚からこんな情報を得たとすればどうでしょう。

同僚のキノシタさん:

「タナカさんの不満はまあわかるけれどね。でもここだけの話、あの会社はタナカさんの仕事ぶりに不満を持っていたって話だよ。だから担当課長が変わったことを口実にうちとの契約を切ったってね。だから自業自得だと思うんだけれど、これを本人に言った方がよいのかな」

 実際にこのような状況は多々起こり得ます。実例としてこのような事実を伝えて、評価に納得性があることを示そうとした上司もいました。しかしそれでもこんな不満が返ってきました。

 「こちらに不満を持っていたと言いますけどね、こっちだって先方に不満がありますよ。発注数量をコロコロ変えるし、値段だって値引きしろっていつもうるさいし。そんな会社、こちらから契約を打ち切ってやるべきでしょう!」

 「じゃあタナカ君は自分の評価に納得してもらえるんだね」

 「それとこれとは話が別です! そもそもそんな会社との売り上げを前提とした目標をたてさせた上司のあなたが悪いんだ!」

 これは極端な例ですが、実は人は自分のことを棚上げする癖があります。他責や自己過信がその原因ですが、要は「常に自分は悪くない」と思ってしまう癖です。そして実はこのような文章を読んだ時「そういう人はたしかにいるなぁ」と思う人こそがまさにそういう他責や自己過信の人の可能性が高いのです。自責傾向のある人は「もしかして自分にもそういうところもあるかも」と思うものだからです。

 そしておそらく、他責の人の方が世の中には多い。まあそうでなければ世の中はずいぶん生きづらくなるでしょうしね。他責は安らかに生きていくためには必須の考え方でもあるのですから、決して悪い考え方ではないのです。

■そもそも評価とはなんのためにあるのか

 つまり、ここまでで言いたいのは「評価に納得性を求めることが間違っている」という事実です。「完全に納得できる評価なんてない」とも言えるでしょう。

 評価する側にしっかりとした説明責任を求めたとしても、これまでに示したような理由から、完全には納得できません。また、完璧に納得できる説明をされたとしても、どんな人も少しは他責の心を持っています。だから、完全に納得することはありません。心のどこかで「それは私だけの責任じゃない」と思います。

 ぜひ考えてみていただきたいのは、なぜ会社に評価の仕組みがあるのか、という本質です。

 世界で一番最初に評価の仕組みが体系化されたのは、フォードの工場だと言われています。そこではテイラーの科学管理法に基づき、ノルマを達成した場合に時間あたり賃金を増やし、未達成の場合に減らしました。

 人件費としてそこで増減させた額は微々たるものです。だから人件費を節約するためにそういう仕組みが導入されたのではありません。

 評価の目的は、評価するという予告によって、生産性を上げる点にあります。だから評価の仕組みとうまく付き合うためには、評価が出た時点ではなく、評価の基準を説明される時点でしっかりとコミュニケーションをとることが大事なのです。

 また、何をすれば評価されるのか、ということを会社から自分自身に対する成長の期待として前向きにとらえられるかどうか、ということもポイントなのです。

 結果が出てしまった時点から評価に文句を言っても、結果は覆りません。仮に低い結果になったとして、そのことに対して自分を無理に納得させようとしても納得しきれるものでもありません。

 大事なことは、次の評価のスタート時点での理解を徹底し、行動に移すことです。

 そうすれば自然に成長し、評価に一喜一憂することも減っていくことでしょう。

平康慶浩
 セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。

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