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嘘の国を売った史上最悪の詐欺師 270人が死の入植

日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/8/6

モスキティアとポヤイス国とその近隣諸国の地図(1822年)

■270人中、母国に戻れたのは50人に満たず

 だが、目的地にたどり着いた移住者たちはひどく困惑した。彼らが目にしたのは、文明のかけらもない未開の密林と、マラリア病の発生源になりそうな沼地ばかりだった。ポヤイスという国も、豊かな土地も、文明化された都も存在しない。彼らは狡猾(こうかつ)な夢想家にだまされたのだ。母国に帰るすべもなく、夢破れた移住者たちは補給品を船から降ろし、海岸で野営するほかなかった。4月になっても状況はまったく変わらなかった。町は1つとして見つからず、助けが来る様子はなく、野営地は絶望に包まれた。病気が広がり、1カ月のうちに8人の移住者の命が奪われた。「王女御用達」の座を約束された靴屋は再び家族に会う望みを絶たれ、銃で自らの頭を撃ち抜いた。

 どん底の状況で地平線に船影が現れた。しかも、船に掲げられていたのは英国の国旗だった。この船はベリーズから来たメキシカン・イーグル号で、外交上の任務のために付近を通りかかり、野営地を見つけてやってきたのだ。弱りきった移住者たちは船に助け上げられ、ベリーズの病院で手当てを受けてから、足取りも重くロンドンへと帰った。男女合わせて270人がポヤイス国へ旅立ったが、再び母国の土を踏むことができたのは50人に満たなかった。

 その頃にはマグレガーはフランスに高飛びし、もう一度詐欺をはたらこうとして失敗した(失敗の理由は、存在しない国へのビザ申請が殺到していることにフランス政府が気づいたためだった)。やむなくマグレガーはベネズエラに逃亡し、1845年にそこで死んだ。このような希有な恐るべき罪を犯したにもかかわらず、最後まで彼が罪に問われることはなかった。

[書籍『世界をまどわせた地図』を再構成]

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