『シカゴ』シリーズ2作が快調 『CSI』後継の有力作
2017年6月 海外ドラマ月間レンタルランキング
米国のテレビ業界では、人気のドラマが生まれると、そのスピンオフ番組としてサブキャラクターや設定を生かした新作を製作して、関連したシリーズを広げていく手法が盛ん。TSUTAYA月間ランキングの12位と14位に初登場した『シカゴ・ファイア』と『シカゴ P.D.』も同様の手法で生まれたシリーズだ。登場人物がそれぞれの作品を行き来するクロスオーバー・エピソードも盛んで、共に人気を広げている。
12位に入った『シカゴ・ファイア』は、シカゴ消防局51分署を舞台に、所属する消防隊員と救命士たちが命がけで職務に立ち向かう姿を描くアクションドラマ。米国では2012年に放送がスタートするやヒット番組となり、シーズン6の制作が決まっている。
その人気を受けて、『シカゴ・ファイア』に登場した悪徳刑事ハンク・ボイドを主人公につくられた新たなシリーズが、14位に入った『シカゴ P.D.』。同じシカゴにある警察署を舞台に、事件解決のためなら違法捜査もいとわないワイルドな捜査方法と、こわもての半面、実は情が深いボイドの人間性が受けて、こちらも人気番組に。14年から全米放送が始まり、シーズン5の制作が決まっている。
また、15年からはシカゴの病院を舞台にした『シカゴ・メッド』が全米で放送開始。こちらもシーズン3の制作が発表されている。これら3作は『シカゴ』シリーズとして、放送しているNBCの看板番組となり、同局の好調な視聴率を引っぱっている。
TSUTAYA レンタルユニット 映像チーム海外ドラマ担当の中山知美氏は「同じく人気シリーズだった『CSI』は舞台となる町を変えましたが、『シカゴ』シリーズは逆にシカゴという舞台を変えずに、職業を変えているのが特徴。クロスオーバー・エピソードも人気が高く、両方のドラマを見るきっかけにもなっているようです」と言う。
■『LAW & ORDER』の製作者が手がけた新作
シリーズ展開の先駆けである『CSI』は、ラスベガスを舞台にした『CSI:科学捜査班』が2000年に全米放送を開始。科学捜査と専門知識を駆使して犯罪事件を解決する手法が斬新で、大ヒットした。続いて02年にはマイアミを舞台にした『CSI:マイアミ』、04年にはニューヨークを舞台にした『CSI:NY』の全米放送が始まった。いずれも科学捜査の手法は共通で、舞台となる町を変えて、シリーズを増やしていった。一時期は全米視聴率ランキング上位に3番組とも入るほどの人気シリーズとなるが、現在は3作とも終了している。
『CSI』と入れ替わるように台頭したのが『シカゴ』シリーズだ。同じシカゴの町を舞台に、登場人物の職業を変えたのが新機軸。事故や災害が起こると、消防、警察、病院の人々は連携して仕事にあたるため、登場人物はそれぞれのドラマを行き来する。兄弟や元恋人といった人間関係もつながっている。
そこにスポットをあて、ひとつの事件を、それぞれのドラマの視点から描くのがクロスオーバー・エピソードだ。シカゴ消防局が現場での人命救出にあたり、その事件や事故の真相をシカゴ警察が追うといった具合に、ひとつのエピソードを異なる視点から楽しめる。視聴者は両方のドラマを見たくなるため、シリーズ人気を広げる手法となっている。
製作総指揮を務めるのはディック・ウルフ。90~2010年に全米放送されて大ヒットした犯罪捜査ドラマ『LAW & ORDER』を成功させた大物プロデューサーだ。『LAW & ORDER』は物語の前半で捜査、後半で裁判を描く斬新なスタイルでヒット。4本のスピンオフと英国版が制作される人気シリーズとなった。そのノウハウを基に、次に手がけたのが『シカゴ』シリーズである。
日本では16年12月から『シカゴ・ファイア』を皮切りにシリーズのDVDリリースが始まり、10月には2作目のスピンオフである『シカゴ・メッド』もリリースされる。人気が高かった『CSI』シリーズの後を継ぐ、新たなヒットシリーズとなりそうだ。
(日経エンタテインメント!小川仁志)
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