一獲千金より「手堅さ」重視 大富豪の株式投資

日経マネー

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大富豪と呼ばれる人たちがいる。多額の富を保有する彼らのお金に対する考え方は、いったいどのようなものだろうか。かつて金融資産10億円を超える大手顧客を対象とした野村証券のプライベートバンク部門で辣腕をふるったZUU社長兼CEO(最高経営責任者)の冨田和成氏が、大富豪が実践する「お金の哲学」を解説する。

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株式投資は大別すると、株価の値上がりから収益を上げるキャピタルゲイン型と、毎年の配当を収益とするインカムゲイン型に分かれます。不動産投資と大きく異なるのは、株式の世界ではキャピタルゲイン狙いの人が圧倒的に多いことです。

私はキャピタルゲイン狙いが悪いとは思いません。ただ、資産の大部分をキャピタルゲイン狙いにしてしまうのは、リスクが高いことは明らかです。実際、大富豪は「今さらキャピタルゲイン狙いに血眼になってもねぇ」と、乱高下する株式市場を一歩引いた立場から見ている方が多いのです。もちろん、大富豪でも将来大きく値上がりしそうな銘柄があったら興味を持ちます。ただ、それを買う時はあくまでも失ってもいい額しか買いません。

大富豪にとって株式投資の軸となるのは、より確実なインカムゲイン狙いです。「でも、株の配当って安くない?」と思われた方。正解です。国内企業の株式配当利回りは平均すると年1~2%程度で、他の金融商品と比べて高いわけではありません。仮に1000万円を投じても10年間で10~20%(100万~200万円)の収益しか上げられません。

ただ、これは単利で運用した話。得られた配当金を再投資する「複利運用」を行うなど、運用次第で利回りは改善します。また、配当の他に、株主優待の存在も見逃せません。航空会社であれば国内線の半額チケット、食品メーカーであれば現物の支給……。普段、自腹で購入しているものや自分が本当に好きなものであれば、現金をもらっているようなものです。中には株主優待の利回りが年10%を超える銘柄もあります。

ただ、インカムゲイン狙いで最も恐ろしいのは、企業の業績悪化で無配になることです。それを避けるには、なるべく景気に左右されない業界の銘柄や、財務基盤がしっかりした銘柄を選ぶことが求められます。

そこで、私が証券マン時代に提案することがあったのが医薬品セクターです。「景気が悪いから薬を飲むのをやめよう」と思う人はまずいません。それでいて、配当利回りは年2~3%程度、市場環境によっては年4%以上になることもあります。インカムゲイン前提で銘柄を選ぶ大富豪はこうした業種を狙っています。

株式投資は9連勝していても1つの大敗で全てが台無しになることがしばしば起こります。資産が少ないうちはリスクを取って高いリターンを狙う戦略もありますが、資産が増えた大富豪はわざわざ大勝負に出る必要がありません。むしろ、「どれだけ確実に増えるか」という基準で、コツコツ10連勝、20連勝を目指します。これが大富豪の投資の特徴です。

冨田和成
ZUU社長兼CEO。一橋大学在学中にIT分野で起業。卒業後、野村証券プライベートバンク部門で活躍。退職後にZUUを設立し、国内最大規模の金融ポータルメディアZUU onlineなどフィンテック分野で事業を展開中。

[日経マネー2017年9月号の記事を再構成]

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