満島ひかり ルーツの地で「やっちまった」禊ぎの撮影

2017/7/28

私のモノ語り

映画、ドラマ、舞台などで圧倒的な演技力を発揮。2017年6月には『トットてれび』(NHK)、『カルテット』(TBS)などの演技が評価され、ギャラクシー賞(テレビ部門・個人賞)や放送文化基金賞(演技賞)を受賞して話題になった満島ひかりさん。彼女が見せてくれたのは、「常に財布にいる」というギター弾き用のピックだった。

気まずい思いのまま、いつも財布にいるピック

「ドラマ『ごめんね青春!』(14年/TBS)の撮影の後に、スタッフやキャストでごはんを食べに行ったんです。その時、共演していた錦戸亮くんが財布から出したのがこれ。『何それ?』と聞いたら、『長瀬(智也)さんにもらったヤツなんやけど、いる?』って。『小銭入れのお守りや』『ありがとう』なんて言いながらもらったんですけど、これは長瀬さんが、錦戸くんだからあげたもの。私が持っていていいのかなって、なんか気まずい思いを抱えたまま、でもどうすることもできずに小銭入れにずっといるヤツです(笑)。

私はギター弾きじゃないし、特別このピックに愛着があるわけでもない。でもずっと近くにいるから、見るたびに不思議な気持ちになりますね。でもその不思議な距離感がいいな、とも思う(笑)。

実際、お守りになっているかもしれないので、これと、その年に引いたおみくじをいつも財布に入れています。おみくじも見せた方がいいですか?」

「長瀬さんと会ったらどうしようっていうドキドキはいつもあります。お会いした時に、このピックのことを言った方がいいのかな、言わない方がいいのかなって(笑)」

そう言って見せてくれたのは、今年初め、『カルテット』の撮影時に神社で拾ったというおみくじ。

「軽井沢の神社で、私の足元に落ちていたんです。これを今年のおみくじにしよう、と思って、そのまま財布に。人のもの? いや、お金はちゃんと入れましたよ(笑)。それに落ちているものには福があるって、フランスでは言うらしいので。ここ日本ですが。

運勢は、大吉です。今年は何でもかんでもうまくいくって書いてある。でも最近ちょっと風邪気味だし、厄年だし、そんなにうまくいってる感じはないんですけど(笑)」

戦争って、嘘じゃなかったんだ

17年7月29日に公開される主演映画は、『死の棘』の作家・島尾敏雄と妻・ミホとの戦時中の出会いを描いた『海辺の生と死』。作家でもあるミホが書いた同名作品集や、敏雄の『島の果て』を原作とし、2人が実際に恋に落ちた鹿児島県、奄美群島・加計呂麻(かけろま)島で撮影が行われた。

「奄美は私のルーツといえる場所。原作を読んで、私の祖先はこんな土地で育ったんだ、と思いました。

私はおばあちゃん子だったので、昔の奄美の話はよく聞いてもいたんです。おばあちゃんのお兄さんが特攻隊になり、飛行機が飛んでくるたびに妹と2人で海に入って、『あにい、あにい、会いたいよー!』って、泣きながら手を振っていたとか。

ロケに使われた奄美群島の加計呂麻島は原生林が残り、圧倒的な生命力をたたえる。「ちょっと神秘的で怖いところもいっぱいありますね。なんでもかんでも、宿っている感じがする」写真:『海辺の生と死』 (C)2017 島尾ミホ / 島尾敏雄 / 株式会社ユマニテ

故郷の仏壇に手を合わせに行くと、今でも白い軍服を着た、そのお兄さんの写真が真ん中に飾ってあります。顔つきが私の弟にも似ていて、不思議な気持ちがするんです。『ああ、戦争って、嘘じゃなかったんだ』って、見るたびに思います」

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