ビーチパラソルだけで日焼けは防げる?
ビーチパラソルの日焼け予防効果を評価し、日焼け止め剤を用いた場合と比較する世界初の研究を行った米Johnson & Johnson Consumer社の研究者たちが、パラソルは日焼け予防策としては不十分すぎることを明らかにしました。
ビーチパラソルのような日よけは、有害な紫外線を物理的に遮りますが、パラソルだけで適切に日焼けを予防できるのかどうかは明らかではありませんでした。そこで研究者たちは、通常の使用環境での、標準的なビーチパラソルの日焼け予防効果を、強力な日焼け止め剤と比較するランダム化比較試験[注1]を行いました。
試験は、2014年8月13日から15日まで、テキサス州のルイスビル湖(海抜159メートル)の湖畔で行われました。参加したのは条件を満たした92人で、81人(平均年齢41歳、男性25人、女性56人)が試験を完了できました。81人の肌のタイプは、フィッツパトリックスキンタイプ分類[注2]のタイプI(最も紫外線に弱く皮膚がんのリスクが高いタイプ)が1人、タイプIIが42人、タイプIIIが38人でした。
参加者は、以下の2群のいずれかに、ランダムに割り付けられました。
・ビーチパラソル(市販されている中で最も一般的な、直径203cm、高さ190cmの製品。JGR Copa社製)を使う群
・SPF100の日焼け止め剤(Neutrogena Ultra Sheer SPF100+、Neutrogena社製)を使う群
パラソル群には、肌の露出部分に日光が直接当たることがないよう、パラソルの角度を調節するよう指示しました。
一方日焼け止め群には、日光の下に出る15分前に、肌の露出している部分に指示通りに日焼け止め剤を塗り、少なくとも2時間ごとに、または製品の表示に従って、複数回塗り直すよう指導しました。実際に塗布した量は、使用前と試験終了後の重量の差を計測して求めました。
より日焼けしたのはパラソル? 日焼け止め?
どちらの参加者にも、10時から14時までの間に、計3時間半にわたって、日当たりの良い湖畔のビーチ(波打ち際から33メートル以上離れた場所)に居続けることを求めました。その間に最大で30分間、屋内で休憩することを許可しました。
[注1] ランダム化比較試験:参加者を条件の異なる複数のグループにランダムに割り付けて、その後の経過を比較する臨床試験のこと。
[注2] フィッツパトリックスキンタイプ(Fitzpatrick skin types)分類:皮膚の色と紫外線に当たった部位の反応に基づいて、肌の紫外線に対する強さをタイプIからタイプVIまでの6段階に分類したもの。最も紫外線に弱く皮膚がんのリスクが高いのがタイプI。
日焼けタイム終了から22~24時間後に、参加者の肌の露出部位計7カ所(顔、首の後ろ、首から胸元、両腕、両脚)の日焼けの程度を、日焼けスコア(0=日焼けなし、1=はっきりしないが日焼けの可能性あり、2=明らかに紫外線が原因とみなせる赤みあり、3=赤みが顕著な重症の日焼け、4=浮腫と水疱のいずれかまたは両方が見られる日光皮膚炎)を使って評価しました。1人当たり平均7カ所のスコアの平均を求めて、その人の全身日焼けスコアとしました。
日焼け止め群は、最初に平均15.8gを塗布しており、塗り直しは平均2.3回で、使用総量は平均29.6gでした。
途中で休憩したのは、パラソル群の28人(休憩時間の平均は7分間)と、日焼け止め群の30人(平均11分間)でした。
パラソルではすべての部位が日焼け、日焼け止めでも顔は日焼け
全身日焼けスコアの平均は、両群ともに上昇しており、ビーチパラソル群は0から0.75に、日焼け止め剤群は0から0.05になっていました(いずれも統計学的に意味のある変化と判定された)。
パラソル群では全ての露出部位の日焼けスコアが上昇していましたが、日焼け止め群は顔のみ、スコアが上昇していました。
参加者全員の日焼け部位の数を合計したところ、パラソル群は計142カ所、日焼け止め群は計17カ所でした。日焼けスコアが2以上の部位が1カ所以上見つかったのは、パラソル群の17人と日焼け止め群の2人でした。
結局、ビーチパラソルの下で過ごすよりも、パラソルなしでSPF100の日焼け止めを適度に塗り直した方が日焼け予防効果は高かったものの、いずれも単独では日焼けを完全に防ぐことはできませんでした。ビーチパラソルのみに頼った場合の日焼け防止効果は明らかに不十分だったことから、「ビーチパラソルを使う場合は、日焼け止めなどの日焼け予防策を併用するよう人々に知らせることが重要だ」と研究者たちは述べています。
論文は、2017年1月18日付のJAMA Dermatology誌電子版に掲載されています[注3]。
なお、紫外線の健康への影響や、紫外線の浴び過ぎを防ぐ方法については、少し古いですが、環境省の「紫外線環境保健マニュアル2008」も参考になります。
[注3] Ou-Yang H, et al. JAMA Dermatol. 2017;153(3):304-308. doi:10.1001/jamadermatol.2016.4922
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。
[日経Gooday 2017年7月20日付記事を再構成]
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