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オーディオブック、子育て女性から人気 火付け役は…

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若者の「テレビ離れ」「活字離れ」が著しいのと対照的に、人気を獲得しつつある新メディアがある。本を「聴く」オーディオブック。ビジネス書や小説など、書籍を音声コンテンツにしたもので、中には人気声優を起用したものも。スマートフォンで購入・再生できる手軽さなどが受けて、20歳代から40歳代を中心に市場を拡大している。制作・配信で国内最大手のオトバンクに、人気の理由やコンテンツ制作秘話、新サービスについて聞いた。

月額750円聴き放題サービス開始

オトバンクによれば、同社が運営するオーディオブック販売サイト「FeBe(フィービー)」は、2017年3月時点で会員数が約20万人を突破した。特に最近は会員数の伸びが大きく、会員登録者数(単月)は前年比約5倍程度だという。コンテンツも、2007年1月のサイト開設時には1000タイトルほどだったが、現在ではビジネス書から実用書、文芸作品まで約2万タイトルに増やした。

2017年6月26日には定額制のオーディオブック配信サービス「audiobook.jp」も開始した。専用アプリを使い、月額750円(税込み)でオーディオブックが聴き放題になるというもので、アプリはAndroid OSとiOSにそれぞれ対応する(Android版は配信中、iOS版は近日配信予定)。

サービス開始時点でaudiobook.jpで聴けるのは、FeBeのオーディオブックのうち約1万タイトル。『火花』(又吉直樹著)などのヒット作も対象だ。FeBeで販売しているオーディオブックの価格が単行本と同額の平均1200~1500円だということを考えると、月額750円で聴き放題はお得感が強い。オトバンク会長の上田渉氏は「これを機に、より多くの人にオーディオブックを体験してもらいたい」と意欲を語る。

手をふさがず"ながら聴き"しやすい

オーディオブックの利用者数が伸びている要因の一つには、スマホの普及でオーディオブックを気軽に持ち出せるようになったことがあるようだ。以前はパソコンなどにダウンロードしてオーディオプレーヤーに移さなければならなかったが、スマホならダウンロードしてそのまま聴ける。上田氏は「他のことをしながらでも聴けるのは大きい」と話す。本を持ったりページをめくったりするのに手を使わないので、電車移動中や入浴中、ランニング中、出かける前に身じたくをしながら、あるいはスマホでゲームをしながらなど、"ながら聴き"を楽しめるのが強みだ。

最近のユーザーアンケートでは、子育て中の母親の利用が増えていることが分かったという。「お母さんが本を開いていると、子供が寂しがって邪魔をすることがあるそうで、本が好きなのに読めずにいたお母さんから『オーディオブックならスピーカーで再生しながら子供と遊べる』と喜んでもらえた」(上田氏)。

FeBeでは、倍速バージョンのオーディオブックも聴ける。再生速度は0.5~4倍に対応しているのが特徴だ。「2倍速ならほとんどの人が訓練なしで聞き取れる。3倍速でも5分ほど聴いていれば耳が慣れる」(上田氏)。例えば、ビジネス書なら通常4~5時間かかるところを2時間程度で再生できるので、手軽に短時間で本の内容を頭に入れるのに適している。

さらに上田氏は心理的な障壁の低さも指摘する。「本を読むのが能動的な行為なのに対し、オーディオブックは再生すると耳に流れ込んでくる。いわば受動的な読書が可能になる」。それによって、本に対するハードルが下がるのでは、というのだ。例えば、ゲーテの『若きウェルテルの悩み』は配信開始直後から売れ行き好調だ。「有名だが難解そうな本にも、オーディオブックでなら接してみようというユーザー心理が感じられる」(上田氏)。

会員数の伸びをけん引するもう一つの要因が、コンテンツの質・量の充実だ。当初の品ぞろえはビジネス書が中心だったが、現在は小説やエッセーを含め、幅広いジャンルをカバー。1人で朗読している作品もあれば、ドラマCDやラジオドラマのように複数人のキャストがキャラクターを演じる作品もあり、多様な表現が取り入れられている。著者のコメントなどの特典音源を含め、本にはない魅力を加えられる強みもある。

こうしたコンテンツの拡充が奏功し、FeBeでは、声優ファンや文芸好きの女性、高齢者など新たなユーザーを獲得できたという。「当初は8:2だったユーザーの男女構成比は現在、およそ7:3になっている」(上田氏)。ラジオなどでオーディオブックの存在を知った高齢者から「パソコンやスマホを持っていないが、どうしても聴きたい」という問い合わせを受け、ファクスで受注して銀行振り込みで代金を受け取り、スタッフが音源をCDに焼いて発送したこともある。サービス化はしていないが、ユーザーサポートの範囲内で、電子機器が苦手な人の利用を助けているという。

ファングッズとしてのニーズも

また、オーディオブックのダウンロード権という本来は形のないものをあえてカードにして、新たな市場も開拓した。カードごとに2次元コードとシリアルナンバーを付与し、スマホなどでコードを読み取れば該当のオーディオブックがダウンロードできるというもので、「OTOCA(オトカ)」の名称で展開中だ。

従来はCDをセットにしていた教材本やビジネス書などに、CDの代わりにOTOCAを同梱(こん)したり、アニメやゲームとコラボしたオーディオブックのOTOCAをキャラクターをあしらったデザインで売りだしたりしている。「今は、CDプレーヤーやCDドライブ付きのパソコンを持っていない人も多い。スマホなどにその場でダウンロードできるOTOCAのニーズは高い」と上田氏は話す。

物販との相性もいい。今年3月に開催された人気ゲーム「グランブルーファンタジー」のイベントでグッズとOTOCAのセットを販売したところ、用意した全量が売れるなど、ファングッズとしての可能性を示した。

人気声優起用、こだわりのキャスティング

オーディオブックの作り方はこうだ。オトバンクは、出版社やラジオ局などのコンテンツホルダーにオーディオブックの企画を提案し、提案先から依頼を受けて、著作権処理・制作・取次・販売を一括して請け負う。制作費はオトバンクの負担。主な制作工程は書籍の台本化、キャスティング、収録、編集だ。制作期間は短くて2カ月、文芸作品では通常3~4カ月をかけている。人気声優を起用した場合は、まとまった時間を確保しづらく、少しずつとり進めていくことになるので、1年ほどかかることもあるという。

書籍を台本にする際は、当て字やカッコで補足説明されている部分を書き換えたり、固有名詞など難読部分の読み方を、アクセントも含めて明確にする。時代ごとの風俗などを確認するため、博物館を訪ねて学芸員に話を聞くこともあるという。「苦労するのは歴史モノなどに登場する戒名。お寺へ電話で問い合わせるものの、住職がご高齢で耳が遠く、電話では話が通じないので、お寺を訪ねて対面でご回答いただいたこともあります」(上田氏)。

キャスティングは、オトバンクが候補を挙げて著者が承認する。例えば、主人公のモノローグが多い『世界から猫が消えたなら』(川村元気著)は人気声優の小野大輔を起用して大ヒットした。『筋トレが最強のソリューションである』(Testosterone著)には、ベテラン声優の玄田哲章を起用。アーノルド・シュワルツェネッガー出演映画の吹き替えなどで知られる玄田の声と筋トレという題材の相性の良さで、異例のヒットにつながった。『声で聞く シルバー川柳 七転び八起き編』(みやぎシルバーネット、河出書房新社編集部編)は毒蝮三太夫が朗読を。年配層から問い合わせが多かったという。

著者の希望を生かして成功した例もある。『夢をかなえるゾウ』では、"こてこての関西弁"を話すキャラクターに、オトバンクは関西出身の声優を推したが、著者からのリクエストは「もっとどぎついオッサンがいい」。「どぎついオッサン」の演技を優先して選考し直した結果、鹿児島県出身の声優・大川透に関西弁指導をつける形に落ち着いた。配信後は、生き生きとしたセリフ回しでユーザーの評判は上々だ。『一路』(浅田次郎著)では「江戸弁を話す人にお願いしたい」との著者の希望で、落語家・林家たけ平の一人語りの形を取り、売れ行き好調という。

収録は、オトバンク社内のスタジオか、提携先スタジオで行う。制作部には声優の経歴を持つスタッフもいて、キャストへの演技指導には妥協がない。「声優事務所から新人をしっかり教育してもらいたいといわれることも。また、声優自身も意欲的に取り組んでくれている。オーディオブックでは、アニメに特有の節回しは使わず、長く聴いても疲れない自然なしゃべり方で、かつ感情が伝わるように読む必要がある。そうした点を『勉強になる』と捉えてもらえたようだ」(上田氏)

知らない人がいないサービス目指し

オトバンクは2004年12月、目の不自由な人に貢献することを目的に会社を設立、2007年にFeBeを立ち上げた。しかし、FeBeは目が不自由な人を主なターゲットにはしていない。「目の不自由な人は、そうでない人に比べて情報をキャッチしにくい傾向がある。目の不自由な人にサービスを届けたければ、まず周りの人や家族にサービスを知ってもらうことが重要」(上田氏)との考えからだ。

サービス開始から約10年。先述のようにユーザー層を拡大することに成功し、「今では目の不自由な人にも少しずつ利用してもらえるようになってきた」(上田氏)。FeBeのサイトはユーザビリティーテストをクリアしており、目の不自由な人も音声ブラウザーを使ってオーディオブックを買うことが可能だ。

オトバンクはAmazonのオーディオブック配信サービス「Audible (オーディブル)」にも一部コンテンツを提供している。オトバンクが最終的に目指すのは、文化的なインフラとしてのオーディオブック。上田氏は「日本中の人に、いつでも誰でもどこでも使ってもらえるようにしたい。知らない人がいないサービスに育てていけたら」と目標を掲げる。競合サービスについても「競合ではなく協働の感覚。小さな市場を取り合うのではなく、一緒に市場を拡大していきたい」との考えだ。

(ライター 赤坂麻実)

[日経トレンディネット 2017年7月4日付の記事を再構成]

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