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Huluになにが起きたか トラブルで露呈した未成熟さ

西田宗千佳のデジタル未来図

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NIKKEI STYLE

日本テレビ傘下の映像配信ビジネス「Hulu(フールー)」は、サービスの大規模なリニューアルを行った。14年に日本テレビが子会社化して以来、最大のリニューアルであり、同社としてもビジネスを攻めに転ずる重要なタイミングと位置づけていた。

だが、このリニューアルは、同社にとって輝かしいものとはならなかった。システム変更に伴い、大規模な配信トラブルが発生したためだ。同時に、著作権保護機能やパソコンからのアクセス用URLも変更になったが、そのことが周知されていなかったこともあり、ある種「炎上」に火を注いだ部分がある。筆者もトラブルに直面したユーザーの一人だが、短期的にはサービスの満足度が大きく下がった、と感じている。

トラブルはリニューアル前から予見できた?

利用者を戸惑わせる予兆は、2017年5月17日のリニューアルの直前から存在した。5月8日、同社は、ユーザー向けにリニューアルについての告知を行ったが、その中で、パソコン向けに使ってきたアクセス用のアドレスを「hulu.jp」から「happyon.jp」に切り替える、と告知した。URLの変更はここで初めて発表され、利用者に不安を抱かせた。

そして5月17日、サービスのリニューアルが行われると、大きなトラブルが発生した。動作が緩慢になり、サービスを正常に利用できない状況が数日にわたって続いた。

利用者を戸惑わせた問題は他にもあった。例えば、パソコンなどにディスプレーを外部接続して視聴していた利用者の一部が視聴できなくなった。理由は、著作権保護のルールが変更になり、ディスプレーを外部接続する場合には、「HDCP」という技術に対応していることが必須になったためだ。このことは、サービスがリニューアルされるまで告知が一切なかった。また、一部の機器において、技術的・著作権保護的要件を満たしているにもかかわらず、不具合や設定のミスによって表示されない……といった多数の不具合が存在した。

「告知」「テスト」の甘さがトラブルを招いた

今回、HJホールディングスに取材を申し入れたが、「今はまだご迷惑をおかけしたユーザーの皆さまへの対応に注力したいと考えておりまして、メディア各社様から取材のお問い合わせをいただいているのですが、お断りさせていただいている状況」(同社広報)とのことで、文書での回答となった(以下、カギかっこ内は同社コメントよりの抜粋)。

問題は3つある。

1つは、技術的なトラブルによって視聴できない時間が生まれたことだ。これについては「パフォーマンス低下は配信システムのトラブル。様々なケースを想定していたが、予想外のトラブルが発生した。詳細については発表していない」とする。筆者が関係者から得ている情報では、配信を効率化するコンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)側のトラブルが主因であり、想定外のものであった、というのは事実であるようだ。

だが、想定外のトラブル、というのは「テストでの想定不足」でもある。一部機器でアクセスできない問題が発生したり、字幕表示に問題が出たり、といったトラブルもあったのだが、「テストでの想定不足」が問題だ。

2つ目は、告知が不完全であったことだ。

URL変更や著作権保護ルールの変更などは、本来もっと早期から周知すべきだった。特に著作権保護ルールの変更については、結果的に、利用者が実際に試すまでわからなかった。この点については同社も、「アナログ出力で外部ディスプレーを使用していたお客様への事前周知が徹底できず、大変ご迷惑をおかけした」と陳謝している。17年4月には、記者を集めてリニューアルについての説明会を開催しているのだが、その際も、アドレス変更や著作権保護ルールに関する説明はなかった。意図してかそうでないかはともかくとして、こうした「不利益を伴う変更」は、まずなによりも先に伝えるのが、後々のトラブルを避けるためには重要なことである。

3つ目は、「アドレス変更に伴い、サービスへの不信感が生まれた」ことだ。サービスへのアクセスURLは、サービスのブランドを意味する重要なものだ。それを変更するということは、サービス名が変わるのではないか、サービス体制が大きく変わるのではないか、という不安を抱かせる。一部のウェブの記事で、「日本テレビはHuluのブランド変更を計画しており、アドレス変更はその布石ではないか」という指摘があったことも、この懸念に拍車をかけた。

だが、Hulu側はこの点を否定する。

「同一ドメインへの移行は、切り替え時に長時間のサービス停止が必要となるため、お客様に多大なご迷惑がかかる。また、新システムは多彩なデバイスに対応する非常に大きなもの。同一ドメイン上に全く別の大規模なシステムを載せ替えることは、事前テストの制約など、高いリスクを負ってしまう。別ドメインへの移行はユーザーの皆様への影響を最小限にするためのもので、米国Huluとの契約は関係ない」

なお、筆者が17年4月にインタビューした際、於保社長は「サービス名変更の意思は一切ない」と答えている。

少なくともこれまでのところ、アドレス変更は「サービス移行のトラブルを避けるため」だった、というのが公式な見解である。そしておそらく、その通りなのだろう。

ネットサービス事業者としての未熟さを露呈

だが、この点にこそ、今回のトラブルを生んだ最大の課題が潜んでいるのではないか、と筆者は考えている。

利用者の混乱を減らすためにアドレスを変更した、とはいうものの、サービス変更そのものは「事業者側の都合」である。そうしなければいけない理由はわかるが、告知やテストを徹底していれば、こうした問題は避けられたのではないか。一時的に、例えば数週間、旧システムと新システムの両方を運営し、ゆっくり移行するような手段も考えられたのではないか。本当に必要ならば、1~2日サービスを止める判断もあり得たのではないか。なにより、移行に伴ってなにが変わるのか、なにが想定されるかを、もっと慎重に告知すべきではなかったのか。

別の言い方をすれば、ネットサービスの事業者としての経験の浅さが、こうしたトラブルを生んでしまったのではないか、ともいえる。Netflixなども、内部ではかなり大がかりなシステム変更を繰り返しているのだが、その様子を利用者に悟られることなく、うまくこなしている。それをこなせるノウハウの蓄積が、ネットサービス事業者が身につけるべき「基礎体力」ともいえる。

日本独自サービスに向け「システムを再構築」

そもそもHuluはなぜリニューアルしなければならなかったのか?

Huluはもともと日本のサービスではなく、米国で08年3月に運営を開始したサービスが母体である。Huluが日本でサービスをスタートしたのは11年8月のこと。「黒船」襲来と言われたがユーザー獲得には苦戦し、2014年に日本テレビがHulu Japanを買収、100%子会社化した。

日本テレビ傘下になって以降は、コンテンツ調達力が向上したことなどから、17年3月末現在の会員数は155万1595人と、順調に顧客を獲得してきた。利用者の「アクティブ率」も高かったがシステム的には他社に比べて遅れていた。

画質は他社が「フルHDは当然・4K+HDRも……」という中で、最高で1280×720ドット(720P)止まり。スマートフォン(スマホ)アプリはiPhone向けとAndroid向けでは操作性が大きく異なり、使いにくかった。スポーツ(巨人戦など)やBBCワールドニュースなどの「リアルタイム配信」はパソコンでしか視聴できなかった。

しかし、配信システムは米国と共通であり、日本独自の改修はできなかった。HJホールディングスの於保浩之社長は、以前筆者の取材にこう答えている。「システム全体に自由度がなかった。なにをやるにも、米国の改修プログラムに入れてもらわないといけない。このままでは、独自のことができない、と判断した」

これがリニューアルが必要だった理由であり、日本側が全額を出資して作った新しい配信システムは、将来Hulu以外の日本テレビグループの映像配信サービスでも利用することが前提となっていたのだった。

Huluが、これから信頼を回復するには、「リニューアルのかいがあった」と思ってもらえる、価値の高いコンテンツの準備とサービスの提供が必要だ。それは、彼らがもともとやりたかったことであり、なによりもまず、その姿勢を見せることが重要である。

西田宗千佳
 フリージャーナリスト。1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。

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