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富士山頂、快適通信の舞台裏 アンテナ設置に毎夏4日

佐野正弘のモバイル最前線

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NIKKEI STYLE

夏休みシーズンが到来しようとしている。夏休みには多くの人たちが観光地や、花火大会などさまざまなイベントに訪れ、特定のエリアに携帯電話の利用が集中する。大手携帯会社は、そうした時期に合わせて、人が多く訪れる場所へのインフラ増強対策を進めている。

そうした夏の人気スポットの一つが富士山である。富士山は7月1日より登山ルートごとに順次山開きになり、9月10日の閉山までの間は非常に多くの登山客が訪れる。近年は世界遺産に登録されたことや、外国人観光客の増加もあって、日本人だけでなく外国人の登山客も増加。人気が一層高まりつつある。

さらに、SNSなどに登山中や登頂後の様子などをアップロードする人も増えており、山開き期間は携帯電話の利用者が大幅に増える。そこで大手携帯会社は毎年、山開きシーズンに合わせて富士山のエリア対策を実施し、登山客が快適に携帯電話を利用できる環境の構築に力を入れているのだ。

今回、筆者はソフトバンクから、富士山におけるネットワーク対策の説明を、現地で受ける機会を頂いたことから、実際に富士山に登って携帯会社のネットワーク対策状況を確認してみた。そのときの様子をお伝えしながら、携帯会社がどのようにして、富士山をカバーしているのかを確認してみたい。

富士山は標高3776mと、日本で一番高い山として知られている。だがそれだけに通信機器を設置すること自体難しく、また国立公園の一部であることから、電波塔を建てたり、光ファイバーを敷設したりといったように、地上と同じ方法で電波対策をとることは難しい。では一体、携帯会社はどのような方法で富士山のエリア対策を進めているのだろうか。

地上から電波を射出して山小屋を基地局化

一つの方法が、レピーターと呼ばれる装置を山小屋などに設置して、地上の携帯電話基地局から発せられる電波を中継し、周辺エリアをカバーする方法である。ソフトバンクのテクノロジーユニットモバイル技術統括西日本本部東海技術統括部東海技術建築課の楠見嵩史氏によると、ソフトバンクでも富士山の一部のエリアはレピーターを使ってエリアカバーをしているそうだが、この方法には弱点もあるという。

というのも、レピーターはあくまで地上の基地局の電波を中継して届けているにすぎない。そのためレピーターの周辺に多くの人が訪れて同時に通信すると、1つの基地局に通信が集中し、通信速度が遅くなってしまう。シーズン中は山頂に1日3000人もの人が訪れるというだけに、レピーターによる対策だけでは快適な通信環境を提供するのが難しい。

そうしたことからソフトバンクでは、もう一つの方法によって富士山のエリア対策を進めていると、楠見氏は話す。それは「無線エントランス」を用い、富士山に携帯電話基地局を作ってしまうというものだ。

無線エントランスとは、簡単に言ってしまえば携帯電話事業者の基幹のネットワークから基地局までをつなぐ伝送路に、光ファイバーではなく無線の電波を用いるというもの。光ファイバーと比べ通信速度や容量は落ちるが、光ファイバーを敷設できない場所にも柔軟に対応できることから、ケーブルを引くのが難しい離島のエリアカバーや、災害発生時の一時的なエリア復旧などに用いられることが多い。

ソフトバンクでは富士山のエリア対策に当たり、5GHz帯の周波数帯を用いた無線エントランスを活用。地上に設置された電波塔から、山小屋などに設置された基地局に向けて5GHz帯の電波を射出。それを基地局側が受け、そこから携帯電話の電波を射出することにより、周辺のエリアをカバーするわけだ。

アンテナはシーズン終了時に外す必要あり

富士山頂までの登山ルートには、大きく分けて「富士吉田」「富士宮」「須走」「御殿場」の4つがあり、今回筆者らが通ったのは須走ルート。その本八合目にある山小屋の側面には、無線エントランスを用いたソフトバンクの基地局が設置されていた。

この基地局は須走ルートの登山道全体をカバーするために用いられているそうで、無線エントランスを受信するためのアンテナと、携帯電話の電波を山頂方面に射出する上向きのアンテナ、そして下の登山道をカバーする2つのアンテナが設置されている。

楠見氏によると、無線エントランスを用いる最大の理由は、やはり富士山に直接基地局を設置することで、より多くの人に快適な通信環境を提供できることだという。最近ではLTEによる高速・大容量通信が広く普及し、トラフィックの量も増える傾向にあるだけに、レピーターよりも無線エントランスによるエリア構築が主体となっているようだ。

ただ楠見氏によると、富士山のエリア対策をする上では、そうした技術面以外にも課題がいくつかあるとのこと。何より大きな課題となるのはアンテナの設置・管理だ。アンテナをはじめとした基地局設備の多くは、登山道や山頂にある山小屋などに許諾を得て設置しているが、「アンテナを設置したままにしておくと、冬の雨や積雪などで、設置許可を頂いている山小屋の建物に影響を与えてしまう可能性がある」(楠見氏)ことから、年中設置したままにしておくわけにはいかないのだそうだ。

しかもアンテナは、冬場の気温や湿度の変化などによって故障してしまう可能性もあることから、外して現地に保管しておくことも難しいという。それゆえ毎年、山開きシーズン開始直前にアンテナを地上から運搬して設置し、シーズン終了後にアンテナを外して地上に運搬する、という作業を繰り返しているのだと、楠見氏は話す。

筆者が富士山に登頂したのは全ての登山ルートが解禁される7月10日であったことから、ちょうど富士宮ルート頂上の山小屋にアンテナを運搬し、設置する様子も見ることができた。ちなみにアンテナなど必要な機材は専用のブルドーザーで地上から3時間かけて運搬し、作業員は3泊4日のスケジュールでアンテナの設置や、地上と連携して無線エントランスの調整などの作業を進めるとのこと。この間作業員は山小屋に宿泊し、風呂に入ることもできないなど、大変な環境での作業になるようだ。

トラフィック増加に合わせて無線エントランスも強化

ソフトバンクでは今後さらに増大するトラフィックに対処するため、無線エントランスの強化を進めているとのこと。実際、今回工事を進めていた富士宮ルート山頂の山小屋に設置する基地局には、5GHz帯に加え、新たに80GHz帯という、より高い周波数帯を用いた無線エントランスが導入されている。

80GHz帯を用いた無線エントランスは、富士山の南東にある地上の電波塔にアンテナが設置され、そこから電波を射出して山頂にある基地局と通信する形になるとのこと。ただし取材時点では、作業日程の都合からまだ80GHzのアンテナがまだ設置されておらず、実際の様子は確認できなかった。

80GHz帯を用いる理由について、楠見氏は通信速度の一層の高速・大容量化が実現できるためだと話す。理論値での通信速度を比較すると、5GHz帯を用いた場合は300Mbpsなのに対し、80GHz帯を用いた場合は1Gbpsの速度を実現するとのことで、80GHz帯の方が多くの人が高速通信を実現しやすくなるというのだ。

だが一方で、80GHz帯は障害物に弱い。天候が良いときは問題ないのだが、雨が降ったときは通信に影響が出る可能性が高いという弱点があるそうで、あくまで5GHz帯との併用という形になる。また山小屋によっては、場所の問題から無線エントランスのアンテナを複数設置できない場合もあるため、利用できる場所もある程度限られてくるようだ。

筆者も今回、富士山に登っている様子を写真撮影し、それをSNSにリアルタイムで投稿し、多くの人から「いいね!」をもらうなど、普段と同じ感覚でスマートフォンを利用できた。「日本一の山」でこうした当たり前の通信ができるその裏には、ネットワークを支える携帯電話事業者の工夫と努力があるということを知っておくと、登山の楽しみ方もまた変わってくるのではないだろうか。

佐野正弘
 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

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