増えるお墓の新形態 家族の負担軽く、生前予約も終活見聞録(9)

家の墓は親から子へと代々受け継がれてきた。だが、近年は少子化や核家族化で継ぐ人がいないケースが増えている。子どものいない夫婦やおひとりさま、中には子どもがいても「負担をかけたくない」と考える人も少なくない。従来型と違って、新形態の墓は次世代への継承を前提としていないものも多い。さらに管理に手間がかからず、なおかつ費用も安いので、彼らのニーズを満たしている。「継承を前提とする従来の墓は高い。葬式と墓で500万円かかってしまうことも珍しくない。100万円ぐらいで30年は個別で供養するという墓が増えればよいのだが」と、墓地問題に詳しい茨城キリスト教大学の森謙二教授は話す。

スタイル様々、念入りに確認を

墓を選ぶ際には、複数の墓地を見学し、なおかつ納得するまで足を運ぶのが重要だ。長期間使用するだけに、経営主体の健全性を考慮する必要もある。新形態の墓はスタイルも様々。個人や家族で入るものもあれば、大勢で入るものもある。形でいえば、墓石を立てるものもあれば、納骨堂や、樹木を墓標とするものもある。使用期間や、墓碑などに名前を刻めるかどうか、さらには合同供養祭の有無や参拝方法などについても確認したい。家族や親戚がいるのなら、彼らの理解も欠かせない。「墓には、遺骨を入れる施設と死者を慰霊する場所という2つの側面がある。消費者の選択としては安い方がよいが、新形態の墓はもともと法の空白部で展開したもので、すべてで利用者の権利が保護されているわけではない。単なる遺骨の収容場所になってしまう可能性もある」と森教授は続ける。よく考えて選びたい。

ワンポイント:改葬と墓じまい

近年、話題を呼んでいるテーマのひとつに「改葬」がある。田舎の墓を自宅の近くに移す墓の引っ越しのことだ。厚生労働省の調査によれば2015年度は10年ぶりに年間9万件を超えた。一時期7万件台で推移していたが、ジワリと増えている。

(注)厚生労働省「衛生行政報告例」より、無縁墳墓等の改葬も含む

改葬は基本的には使用者が自由にできるが、現在の墓がある市区町村で改葬許可証を発行してもらわなければ、遺骨を移動できない。引っ越し先でも所定の手続きが欠かせない。改葬には元の墓を更地にする費用も必要になり、40万~50万円かかるのが一般的だ。これに新しい墓の費用が加わる。最近ではこうした手続きを一括して請け負う業者も出てきた。改葬許可証には元の管理者の埋蔵証明が必要で、寺院墓地の場合、寺から「離檀料」などと呼ばれるお金を請求されてトラブルになったというケースも聞く。手続きをスムーズに進めるには、早い段階から相談し、話をこじれさせないのがコツだ。

「墓じまい」という言葉を見聞きする機会も増えてきた。先祖の墓を処分し、遺骨を散骨にしたり、合葬墓に移したりすることをいう。いわば墓の片付けだ。古いお墓を撤去するので改葬をこう呼ぶ人もいる。跡継ぎがいなかったり、子どもたちに負担をかけたくないという人の中では、墓じまいを考える人も増えている。墓の手当てだけでなく、片付けもまた終活のひとつといえそうだ。

(マネー報道部 土井誠司)

[日経回廊の記事を再構成]

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