増えるお墓の新形態 家族の負担軽く、生前予約も終活見聞録(9)

2017/7/21

「和」「想」「絆」……。年末恒例の「今年の漢字」ではない。実はこれ、墓石に刻む文字で人気の高いものだ。「○○家の墓」と彫られた縦長の石に代わって近年増えているのが、故人の好きだった言葉や家族の思いを伝える文字を刻んだ横長の墓石。「愛」や「偲」、「希望」や「感謝」、「やすらぎ」「ありがとう」など、墓地に行けば種類の多さに気づく。古くからのしきたりに則っていると思いがちの墓だが、実際は大きく変化している。

霊園見学会では様々な質問が飛んだ(横浜三保浄苑)

「お墓の中に骨壺はいくつ入るの?」「4つまでです。5つめからは古いものから自然にかえします」「角地とその隣で値段が違うのはなぜ?」「角地は通路が使えるので割高になっています。向きによって値段が違うケースもありますよ」。2015年秋に横浜三保浄苑(横浜市緑区)の見学会に同行した。参加者は十数人の男女。苑内を巡りながら、参加者と案内人との質疑応答が続いた。石の値段や日当たりについての質問もあった。三保浄苑は当時オープンしたばかり。一般の墓苑だけでなく、ペットと眠れる区画や樹木葬の墓苑など、様々なタイプがあった。親と自分たちのお墓を探しに来たという50代の夫婦は「これまでも3~4カ所見学したが……」と決めかねている様子だった。

墓地の選択肢は3つ

家族が亡くなった場合、葬儀に続いて多くの人が直面するのが、墓の問題だ。入る場所が決まっていればよいが、なければ手当てを考える必要がある。墓地の選択肢は、寺が管理する寺院墓地、自治体の公営墓地、そして民間霊園の3つだ。

寺院墓地は故人を供養するにはよい環境だが、檀家になり、行事への参加やお布施などを求められることがある。公営墓地は安価だが、すべての自治体にあるわけではなく、あっても新規の募集がなかったり、競争倍率が高かったりする。そして街中で広告や看板をよく見かけるのが民間霊園。募集が多く、選びやすい。表向きの経営主体は宗教法人や財団法人などだが、実際は石材店や霊園開発をする企業が運営しているケースが多い。このため施工する石材店が決まっているといった制約もある。それぞれに一長一短はあるが、地方では寺院墓地、都市部では民間霊園を選ぶ人が多いという。

お墓の値段は、墓石代や加工費などの「墓石建立費」、墓地を使用する権利を取得する「永代使用料」、そして草刈りや共同利用物の修繕などに使う「管理料」の合計とされる。「墓を買う」と言っても、土地を使用する権利を買うのであって、土地そのものを買うわけではない。分かりにくいのが「永代」という言葉だ。代が続く限りという意味で、永久や永遠のことではない。「永代使用」は引き継ぐ人がいて管理料を払い続ける限り使用できるという意味で、継承者がいなくなるか、管理料が滞れば、撤去されてしまう。

※金額が小さいので墓の総額では管理料を外す考え方もある。寺院墓地では別途、護持費(寺の運営費)がかかる場合がある
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