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ママ社員への不満どう防ぐ ストライプの時短勤務

ストライプインターナショナル 石川康晴社長インタビュー(後編)

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NIKKEI STYLE

子育て前の若い女性による長時間労働に依存する企業モデルはもう限界です。短時間正社員制度、会議削減、現場の業務効率改善など、次々と斬新な働き方改革で人をひき付ける会社になった、ストライプインターナショナル。同様の制度を導入する会社は少なくないのですが、実際に機能させるための鍵は運用にあるそうです。実際の運用はどうすればいいのか、特に「労働時間格差」による、職場のストレスはどう対処するのか? 石川康晴社長に詳しくお聞きしました。

働き方改革はイノベーションを起すため

石川(以下敬称略) 働き方改革で重要なことは、労働時間の削減ではありません。どの会社もイノベーションを起こさなければならない。それを考える時間をどう作り出すか。ここが重要なポイントになります。

当社では、まず2つの対策を打ち出しました。1つは、「クォーターカット」。各店舗の接客以外の作業、例えば納品チェックやタグ付け、ディスプレイなどの各作業にかかる時間をストップウオッチで計り、作業時間を毎年4分の1ずつ短縮することを目指したのです。

もう1つは、「モジュールプロジェクト」。これは、社内会議にルールを設けて効率化し、会議にかける時間も基本的に半分にするというものです。

社内の会議には、各部門から報告だけを受けるようなものとクリエイティブな議論をするものの2通りがあります。会議を調べたところ、当社の会議の8割は報告で占められていました。クリエイティブな議論をする会議は、2割しかなかったのです。

これを何とかせねばと、まずは役員会議や営業会議などを中心に、報告会議の時間を半分にしました。最終的に、かなりの会議がリストラされましたね。削減した時間のうち、半分がクリエイティブなものに使われ、残り半分は残業時間の削減に貢献しました。

白河 さらにストライプでは、個人の生産性を上げるためのマトリクスを作りましたよね。

石川 ええ、仕事を整理するためのツールとして、「ストライプ生産性マトリクス」を用意しました。

縦軸は各作業にかかる労働時間、横軸はその作業が生み出す収益です。これを3×3のマスに分けて、各自の作業を分類してもらいました。短い時間で収益を生み出す仕事、逆に長い時間をかけても収益につながらない仕事を確認し、各自、非効率な仕事を削減してもらったのです。

時短勤務は会社のメリットも大きい

白河 私は現場の社員たちの「やりがい」と「時間」の意識を変えるのが非常に難しいと思っているんです。例えば、店舗で働く人は「お客様のために」という意識が強いですよね。また、「残業してでもお客様に対応することがすごくいいことだ」と考える企業も少なくありません。

石川 上層部が男性ばかりだと、そういう意識になりやすいですね。

白河 そういう人たちに、「残業しないように」と言い聞かせるのは難しいと思いますが、どのように社内の意識を変えられたんですか。

石川 トップダウンで根気よくアナウンスし続けるしかありません。当社は18時が定時になっていますが、僕は18時5分には退社しています。東京本部も岡山県の本社も、この時間に消灯になりますから、例え商談中であっても、照明が切れるんです(笑)。

もちろん、例えばM&A(合併・買収)の局面でCFO(最高財務責任者)の役員が残っていたり、月末に経理が少し残っていたりすることはあります。その場合は、事前申請が必要です。

白河 やはりトップの本気のコミットメントは大事ですね。しかも長い時間をかける覚悟も必要です。店舗ではどうされていますか。テナントに入っていると、残業時間が増えてしまうこともあると思いますが。

石川 店舗でも、各自の出社時間と退社時間を測定しています。効率が悪い店舗、良い店舗、効率が悪いスタッフ、良いスタッフ、すべて分かるようになっているんです。

細かいことですが、同じようなロケーション、人数、仕事内容で、同じくらいの収益を上げているのに、帰る時間に差がある場合は、個人の力量に問題があると考えます。帰る時間が遅い店舗があると、本部でアラームが出る。すると、スーパーバイザーがすぐに現場に出向き、閉店から退社までのフローチャートを調査して原因を探ります。その中で、非効率な作業があると、すぐに指導するのです。

白河 フローチャートで改善する! 店に任せるのではなく、本部のオペレーションの中に現場の管理が組み込まれているのですね。例えば、店舗のスタッフの中に子育て中のママがいますと、夜や土日の勤務ができず、他のスタッフから不満が出てくることもあると思います。そういうトラブルの際も介入するのですか。

石川 その場合もあります。ただ、基本的には残業が発生した時にすぐに気付くような共有フローができていて、原因を追及することが大事なポイントになります。

また、生産性という視点では、かなりざっくりな感覚値ではありますが、4時間や6時間の時短勤務社員のグループと、8時間勤務の社員のグループを比べた場合、前者の方が売上効率は1.2倍程度高いような気がするんです。

白河 時短勤務社員のほうが労働時間が短い分、集中して仕事をするからですか?

石川 それもありますが、8時間のグループは若手社員の割合が大きい。一方、時短勤務社員のグループには、比較的ベテランが多いのです。だから、時短勤務社員の方が生産性が高くなる傾向にあるのかもしれません。そのため会社としては、現場が困らないことを前提にですが、時短勤務社員の比率を従来の15%からもう少し高めることも検討していきたいと思っています。そうすることで、会社全体の生産性を高める可能性があるからです。

時短勤務制度は、半分は社員のためにやっていて、残り半分は会社の生産性も考慮してやっているといえます。

白河 アパレルの現場は若い女性が入れ替わるというのが従来のビジネスモデルでしたが、会社としてもベテラン社員に、いつまでも活躍してほしい、制度を入れたら利益につながるということですね。

石川 そうです。どの会社も、やはり「生産性や収益の向上」という要素がないと、会社の制度は変えられません。僕は、時短勤務制度は、女性のキャリアステージのために必要なことであると同時に、会社にもメリットがあるということを発信していきたいです。

白河 一般的には、「時短勤務社員は店舗の中ではマイナス要因」と捉えられてしまうところを、逆に、彼女たちはキャリアもあるし、ライフイベント前の社員たちの将来の希望にもなるわけですね。

石川 そうです。ただ、若手社員たちからすれば、結婚も出産も当分先の話だと思っていますから、「なぜママ社員だけ早く帰るんだ」とか、「なぜママ社員だけ土日休むんだ」とか、不満はどうしても出てきてしまいます。

しかし、どこまで時短勤務社員の比率を上げると現場がうまくいかなくなるか、という臨界点が、経験から分かってきました。具体的には、当社の基準になりますが、1店舗あたり平均5人のスタッフがいて、そのうち2人がママ社員になりますと、現場がうまく回らなくなる。1人までなら、なんとか回ると感じています。

白河 非常に具体的ですね。ここは対面販売で女性社員に頼る会社は、どこも知りたいリアルだと思います。

石川 理由はシンプルです。5人のうち2人がママ社員になると、その2人は土日出勤ができない場合が多くなります。来客数の多い土日に、残り3人で回さなければならないと、得られるはずだった売り上げも得られなくなり、現場が回らなくなるのです。

現場スタッフたちの声に耳を傾けると、「ママばかり優遇されていて、自分たちは不自由が多い」というものが全てではありません。週末に売り上げを伸ばそうとしているのに、ママ社員がいないことで伸ばせないことも意見として多く上がっているのです。

ですから、ちゃんと売り上げを確保できる状態さえキープできていれば、ママ社員がいてもうまく店舗を運営していけると思っています。

人が接客しなくてもいい時代がくる?

白河 今後、日本は人口減少がどんどん進んでいきます。その中で、店舗の営業時間も見直す必要があると考えていますか?

石川 僕は、世の中と逆のことを考えていて、そのうち店舗の営業時間を延ばせたらいいなと思っているんです。

白河 飲食店などが営業時間を短くするのとは、逆の発想ですね。おもしろい。それはなぜですか?

石川 日本の慣習からすると、朝10時から夜8時くらいまではちゃんとスタッフが接客をしなければならないという感覚がありますが、その前後の時間は、例えば多少店内が整理されていなくても、接客サービスがなくても、多くのお客様は許してくれると思うのです。

例えば、夜9時以降は照明を落として、クラブハウスのような音楽を流して、無人になる店舗をつくってみれば面白いのではないかと考えています。

IT(情報技術)業界にお勤めの方なんかは、終電直前に退社することが多いわけですから、商業施設が開いている時間に買い物をすることはできません。また、フェイス・トゥ・フェイスの接客に抵抗があるお客様にも喜ばれるかもしれない。接客スタッフがいなくても、新たな需要を開拓できるのではと考えています。

白河 すごくユニークなアイデアですね! 私も、特に地方では、リアル接客店舗の限界が来るんじゃないかと思っていたのです。そこで早い時間に閉店するのではなく、自由なスタイルの接客にしていこうということですね。実現するのを楽しみにしています。

あとがき

いち早く短時間正社員など多様な人事制度、斬新な改革を打ち出したストライプインターナショナル。ほかの会社がようやく多様な正社員をいれだした今、すでに次のステージを見ているので、ぜひ取材したいと思いました。

他社に先駆けて「労働時間」への意識を強く持ち、労働時間のアラートに対して、本社がすぐに介入するような「運用」にとりくんだのはなぜか? 実は同社の働き方がブラックだと評判になり、そのイメージを払拭するのに苦しんだ過去があったのです。

「ネットの時代ですから、いくら素晴らしい制度を導入しても、会社の実情はすぐに学生にわかってしまう」と、真摯に改善に取り組んできた結果、この働き方改革の時代に他社より先行する結果となったのです。

今問題を抱えている、改革を迫られている企業はぜひ「制度」と「運用」を本気でまわしてほしい。本気だけが、次のフェイズへの扉を開くと思います。

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「婚活時代」(山田昌弘共著)、「妊活バイブル」(講談社新書)、「産むと働くの教科書」(講談社)など。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。7月16日に「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)が発売。

(ライター 森脇早絵)

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