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立川談笑、らくご「虎の穴」

「走れメロス」で大ウケ 芸人誕生の瞬間とらえた写真 立川笑二

2017/7/23

津軽鉄道「走れメロス」号(PIXTA)

 師匠と兄弟子の吉笑とともにリレー形式で連載しているまくら投げ企画。25周目。今回の師匠からのお題は「写真」。

 ありがたいことに、私の実家には私が子供の頃から小学校を卒業するまでの間を撮った写真が多く、沢山のアルバムに収められている。

 そんな多くの写真の中で1枚、僕が芸人になるキッカケとなった瞬間が撮影されているものがある。

 私が小学5年生のころの学校の行事、学芸会で撮影されたものだ。

 今回はそんな、私が芸人になるきっかけとなった出来事の話。25投目。えいっ!

 私が通っていた小学校の学芸会では、毎年5年生は「走れメロス」の劇をやることが決まっていた。

 5年生は、ひとクラス30人編成の4クラスに別れていて、各クラスから1名ずつメロス役を出すことになっている。

 他のクラスでは立候補からの多数決でメロス役を決めたそうだが、私のクラスだけは先生の提案により、立候補した者同士でジャンケンをして、勝った者がメロス役になれるという運びとなった。

 なんとなく「メロスやりたいなぁ」と思っていた私はメロス役に名乗りを上げ、ほかの立候補者たちとのジャンケンを制し、メロス役を勝ち取ることが出来た。

 しかし、当時の私は健康優良児を通り過ぎてぶっちぎりの超肥満児であったため、多数決という名の人気投票を制してきた他のクラスのメロスたちと並ぶと、明らかに私だけが浮いていた。

 人気者、人気者、人気者、肥満児。

 かくして、この4人のメロスを中心にして劇は行われることとなった。

高座に上がる立川笑二さん(東京都武蔵野市) 

 さて、この4人のメロスの出演シーンをどうやって分担するかというと、まず1人目のメロスは、わがままな王様にたてついたことで王様を怒らせてしまい「お前を処刑してやる」と命じられる。しかしメロスは2日後に少し離れた村で妹の結婚式があることを理由に、往復にかかる時間も含めて「3日間だけ猶予をくれ」と王様に頼む。「その間、友人であるセリヌンティウスを身代わりにたてるから」と言い、「俺は必ず戻ってくるから」とセリヌンティウスに誓い、お城を飛び出す。ここまでが1人目のメロス。

 2人目のメロスは、お城を飛び出し、妹のいる村で妹の結婚式を見届ける。

 3人目のメロスは、妹と涙のお別れをし、お城に戻るまでの間、山賊たちに襲われたりしながらも、はいつくばるようにしてお城を目指す。

 4人目のメロスは、なんとか約束の時間にお城にたどりつき、セリヌンティウスと抱きしめあい、友情を見せつけて、王様を改心させる。

 この4つのシーンに分けられることになった。そして、誰がどのシーンのメロスを演じるかということも、ジャンケンで決めることになった。

 そして、私はこのジャンケンをも制してしまった。

 勝った者から出演シーンを選ぶことが出来る。私は迷わずに一番オイシイ最後のシーンのメロスを選んだ。

 しかし、この決定に他のメロスたちから苦情が出た。

 超肥満児の私が最後のメロス役になると、セリヌンティウスとの友情のために、三日三晩寝ずに走ったはずのメロスが太って戻ってくることになる。これはおかしいと。

 なるほど彼等の言うことも分からないではない。しかし、そんなことはジャンケンをする前に言うべきだ。「デブは目立つな」とまで言い出した誠実さのかけらもない他のメロスたちの意見を無視して、私は最後のシーンのメロス役を勝ち取った。

 それから本番までの私は、学校での劇のけいこで手を抜かないことはもちろん、家に帰っても母ヌンティウスと父ヌンティウスを相手に、けいこを重ねていった。

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