職場の憧れの男性 自分にないものを持つ人は魅力的[川本麻里さん(仮名) 第3回]

こんにちは。職場に憧れの異性がいるという話を聞くのが好きな、ライターの大宮冬洋です。僕は長くフリーランスで働いているので、仕事仲間はいても同僚がいません。だから妄想に過ぎないんですけど、仕事がすごくできるのに謙虚で感じがいい女性が職場にいたら、毎日仕事に行くのが楽しみになるでしょう。いつも一緒に作業するわけではない。でも、共通の目的のために、相手も全力で仕事に取り組んでいることは分かっている――。戦友みたいな関係ですね。成果が出て打ち上げをした夜には、友情から恋愛に発展するかもしれません。

妄想はこれぐらいにして本題に入りましょう。愛知県内の中堅メーカーで働いている川本麻里さん(仮名、35歳)の話です。責任ある業務を懸命にこなしつつ一人暮らしを楽しんでいる麻里さん。大学院を出てから10年間、恋人がいません。社員の8割が男性という勤務先に気になる人はいますが、ほとんどが既婚者なのだそうです。

前回は、自社工場の責任者を務める正明さん(仮名、40歳)の話でした(記事はこちら)。麻里さんが気になっている人はほかにもいます。情報システム部にいる12歳年上の武志さん(仮名)です。

自分にないものを持っている人にひかれる

「武志さんと会ったのも新入社員のときです。最初は業務の電話で話しました。顔を合わせたこともないのにいきなりタメ口なので、『なんだ、この人は』と思った記憶があります。でも、その後で一緒にお酒を飲む機会があり、とてもパワフルでユニークな人だと感じました。問題が起きたときの解決法が人とは違う。私にはできない発想だなと思いました」

麻里さんは「自分にないものを持っている人」に恋心を持ってしまいがちだと明かします。そもそも男女は異なるからこそひかれ合い、補い合おうとするんですよね。問題はないと思います。ただし、「自分にないもの」が「幸せな結婚生活から生まれる余裕」であるケースもあります。相手が既婚者である場合は、そのへんを差し引いて考えたほうがいいかもしれません。

ただ、実際にはそれほど冷静にはなれません。職場は真剣勝負の場なので、頼もしい人はひたすら頼もしくて、ダメな人は徹底的にダメだったりするからです。

「私のパソコンが動かなくなって、武志さんにみてもらったことがありました。あれこれ調べた結果、私が勝手に余計なソフトを入れていたことが原因だったと分かったんです。もちろん、仕事に関係するソフトですが、明らかに私のミス。彼からどやされることを覚悟していました。でも、彼は『直ってよかったね』の一言。あ、優しいな~、大人だな~、としみじみ思いました」

僕もIT全般や機械に弱いので、ITに詳しかったり車の運転が上手な人に優しくしてもらったりするとほれてしまいそうになります。でも、相手からすればこちらも「自分にないもの」を持っている可能性は高いですよね。例えば僕は飲み会の幹事が得意です。メンバーに声をかけて日程調整をし、よさそうなお店を予約して、当日は寂しい人がいないように気を配る。それだけのことですが、「よくやれるね」と感心されることもあります。

好きだとは思っていなかったのに、止まらぬ涙

麻里さんは大学院で学んだ技能も生かして働いている専門職です。しかも美人。話しかけたいと思っている男性社員も少なくないはず。でも、麻里さんは「自分が好きになる」ことに意識が向いています。

「7年前に退職した同い年の先輩社員には憧れていました。彼は多分、今でも未婚です。自分の意見を論理的にハッキリ言うのに、占いも信じていたりする面白い人。好きだとは思っていなかったのですが、彼が家業を継ぐために退職することになり、最終出勤日に花束を渡してお別れの言葉を言っていたら涙が止まらなくなってしまいました。予想外だったし、すごく恥ずかしかったです」

麻里さん、とってもいい話じゃないですか。恥ずかしがることはありません。彼もうれしかったと思いますよ。どうして彼の退職後の連絡先を聞かなかったのですか。泣いただけでも好意は伝わりますが、さらに踏み込んで交際に発展するには勇気と行動が必要なんですよ。好きだ、会いたいと伝えても、「ありがとう。ごめん」と断られて傷つくかもしれない。それでも自分の恋に殉じ、しかも相手の立場や心情も思いやる。それが恋愛における勇気です。

今からでも遅くありません。彼の同期などにお願いして連絡してみましょうよ。まずは一緒に飲むだけでもいいじゃないですか。……つい興奮してしまいました。続きはまた来週。

大宮冬洋
フリーライター。1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに就職。1年後に退職、編集プロダクションを経て02年よりフリーに。著書に『30代未婚男』(共著/NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)など。電子書籍に『僕たちが結婚できない理由』(日経BP社)。読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京・愛知・大阪のいずれかで毎月開催中。
ライター大宮冬洋のホームページ http://omiyatoyo.com/

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