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迷い猫の捜索費用も補償 ペット保険、プラスα競う LINEで保険請求や相談、イグアナなども対象

2017/7/23

猫がいなくなっても発信器付き首輪をつけていれば捜索費が補償される

飼い犬や飼い猫の治療費を補償するペット保険市場が拡大してきた。各社は、補償内容だけでなく交流サイト(SNS)を使うなどして「プラスα」を競う。補償対象の動物も爬虫(はちゅう)類まで拡大中。ペットはいまや子どもの数より多いとされ、医療の高度化が進む。当然お金もかかる。小回りが利き、手軽で手厚い支援で「家族の一員」を守る取り組みは、市場の一層の底上げを促しそうだ。

■スマホで簡単請求

コンピューター断層撮影装置(CT)で椎間板ヘルニアを見つけ、水中療法で2カ月間リハビリ――。名古屋市の主婦、田中洋子さん(67)本人ではない。愛犬のゴールデンレトリーバーの話。「高度な医療と保険がなければ、この子の命と家計は危なかった」。田中さんはこう話す。

ペット保険は動物病院での治療や入院・通院時の費用の一部を補償する。病院で専用の保険証を提示し窓口負担を軽くしたり後日に請求できたりする仕組みは、人間の健康保険や医療保険と大差ない。

ペットフード協会によると、ペットの犬と猫は国内に約1900万匹で、15歳未満の子どもの数より多い計算が成り立つ。人の世界と同様にペットも長寿命化と高齢化が進み、平均寿命は犬で14.36歳、猫は15.04歳。人間の70歳以上に相当する。家族の一員と考える人が多い中、もしもの事態に備えて保険各社は便利で対象の広い商品開発にこれまで以上に力を注ぐ。

捜索費用を補償します――。東京海上日動火災保険はオープンストリーム(東京)と提携し、行方がわからなくなった猫向けの新保険を6月から販売し始めた。あらかじめ猫に発信機付きの首輪「ねこもに」をつけ、スマートフォン(スマホ)のアプリと連動。飼い猫の位置が地図上に表示され、スマホと猫の距離が75メートル以上離れると、アプリ上から猫の位置表示が消える。

迷い猫はペット専門の捜索会社に依頼すれば、3日で5万円程度かかるという。保険加入者は、この捜索費用の補償も受けられる。犬に比べて気ままな性格な猫。迷子は犬の5倍以上発生しているといい、東京海上日動は「自力で探すことが難しい高齢者などにニーズがある」とみる。

スマホ活用を含めた利便性向上策は、もはや保険商品の開発に欠かせぬ要素だ。業界最大手のアニコム損害保険は、無料通話アプリ「LINE」を使い保険金を請求できるサービスを5月に開始。診察時の明細書をスマホで撮影してLINE上に添付、病名や診察日、診察代金を入力するだけで請求が済む。申請にかかる時間は3分ほどだ。6月からは、ペットの状況をLINE上で獣医師に相談できるサービスも始めている。

■ペットの多様化に対応

ペットの多様化への対応も急ぐ。アニコム損保は昨年11月、犬や猫などメジャーなペットに加え、モモンガやハムスター、カメ、トカゲなど8種類の動物を保険対象に増やした。日本アニマル倶楽部もウサギなど小動物の保険も取り扱う。対象にはチンチラやフェレット、イグアナなど珍しい動物も並ぶ。

日本少額短期保険協会によると、ペット保険の保険料収入は2016年度に103億円と100億円を超えた。最近は毎年2割以上の伸び率で推移、契約件数も35万件に達した。ここに来て北越銀行が取り扱いを始め、関西アーバン銀行も関西の地方銀行として初めて販売を開始した。日銀のマイナス金利政策を背景に、地銀の利息収入が減る構造が定着する中、ペット保険市場の急拡大は「異業種参入」も促している。

(塩崎健太郎)

[日本経済新聞朝刊2017年7月15日付]

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