出世ナビ

プロが明かす出世のカラクリ

「稼ぐ」から「稼がせる」へ 出世の天井越える仕事観 20代から考える出世戦略(12)

2017/7/18

PIXTA

 会社で働いて給与を稼ぐ。このような一般的な感覚だけを持っている限り、出世の天井を超えることは難しくなります。

 出世の天井とは、役職で言えば課長と部長の間、あるいは役員手前に存在しています。年収でいえば、中堅企業で1000万円、大企業だと1500万円から2000万円の間くらいにあります。あるいは、起業して成功できるかどうか、ということの出世の天井の一つでしょう。

 会社が働いて給与を稼ぐ場所じゃないとすれば、どういう場所なのでしょう。

■行動に対する対価という考え方のワナ

 私たちは何かをすればそのお返しを得るということを普通のことだと理解しています。自分の時間を使って、その代わりにお金を得る。アルバイトをした時に最初に理解する「稼ぐ」構造はそういうものです。

 GIVE&TAKEという言葉に示されるように、何かをしたらそのお返しを受け取る、あるいはしてもらったらお返しをする、という発想を自然に学びます。

 しかしこのお返しという概念、つまり「対価」という考え方をした瞬間に、私たちがそのためにしたことを「負荷」として捉えるようになります。そして負荷と対価を比べるようになり、損得を考えるようになってしまうのです。

 たしかに、いくつもの心理学、経済学の実験が、行動と対価の関係について研究を進めています。それらの構造は基本的には、前回記事「『好子』のススメ 部下に楽しみ与える出世術」で説明したとおり、インセンティブが行動を促すきっかけになるというものです。

 だから、対価を得て行動するということは、会社が求める成功を手に入れやすくなるし、その結果として成長実感も満足度も得られるので、決して悪いことではありません。

 けれども、「稼ぐ」ことを対価として理解した時、出世の天井がこっそりと私たちの頭の上にできてしまいます。

■対価を「稼ぐ」ことはコストになるということ

 行動に対価を支払う。あたりまえのようですが、ここには大前提があります。それは「対価を支払う」存在があるということです。

 会社が従業員に給与を支払うのは、勤労に対する対価です。勤労の結果、なんらかの財が生み出されるから対価を支払うのですが、それはすなわち、「勤労が財のコストになっている」ということです。つまり、対価を受け取る時点で、それはコストになることを受け入れていることうことに他なりません。

 対価を支払う存在としての会社。この存在を私たちはあたりまえに考えすぎているのかもしれません。

 そもそも通貨の発生概念からいえば、通貨は交換のためにあるものです。交換を効率的に行うために、共通の信頼をもとにしたモノサシとして生まれたものが通貨であるとするならば、交換できるものが通貨に対応します。そして現代に生きる私たちは労働を通貨に交換することをあたりまえに考えてしまっています。

 それはすなわち、自分自身の労働を、モノを生み出すためのコストにしてしまっているということ。とすれば、そこに生まれる天井とは、生み出される財に対するコストとしての天井です。

 月に100万円が財として生まれていて、それに対して労働が貢献している割合が30%とすれば、コストとしての割合もおよそ30%になるでしょう。すると支払われる対価は30万円。そしてもしこの財が労働する時間に比例して生み出されるとすれば、飛躍的に対価を増やすことはとても困難だということがわかります。

■会社とは稼ぐ場ではなく稼がせる仕組みの場

 会社の中には役割の分担があります。たとえば居酒屋のホールスタッフがいくら2000万円の年収を求めたとしても、ホールスタッフとしての役割には2000万円のコストを支払う構造がありません。

 だから、会社の中で年収を増やすためには出世して、役割を変えていくしかない。役職を上げて、高いコスト割合を受け取れる立場を目指すしかないわけです。しかしそれでもやってくるのが出世の天井です。

 出世の天井とは、ここまでに説明した「仕組みで使われる側の天井」をあらわしています。

 出世の天井を超えた先にあるものは「仕組みを作る側」の構造です。天井を超えた人たちにとって会社とは、稼ぐ場所ではなく「稼がせる場所」なのです。一人一人の従業員に気持ちよく稼いでもらい、その対価を受け取ってもらう。その仕組みを回しながら、残った利益を自分たちのものにしていく。それが会社の本当の姿なのです。

■稼がせるためのマネジメントを覚える

 自分が提供する労働に対する対価を「稼ぐ」限り、コストの呪縛はついてまわります。

 もちろん企業規模や業種によってコストとして支払える割合は異なりますので、条件による損得はあるでしょう。企業規模が大きく、コスト構造の良い業種だと、天井は比較的高くなります。(これらは「出世速度に会社の規模がどのくらい影響するか?」「50代後半で年収が130万円も下がる業界はどこだ?」のそれぞれに詳細を記載しています)

 一方で、就職できる会社の規模は、その時の景気動向に大きく左右されます。また、どの業界が得なのかは、入社してから10年以上たたないとわかりません。たとえば1990年代前半には、30歳で1000万円の年収があたりまえ、といわれていた都銀の平均年収はすでに1000万円に満たなくなっていたりします。

 コスト構造が良くて企業規模が大きい会社に行くと、出世の天井が高めになる。それはそうなのですが、そういう会社を計画的に選ぶことが難しいのもまた事実です。

 であれば今いる会社でできる出世の対策は、「稼ぐ」という考え方から「稼がせる」という考え方にシフトすることです。「稼がせる」考え方を身に着けることができれば、今いる会社の経営層に出世していくことも決して難しいものではなくなります。また、自分自身が独立するなど、起業することになったとしても、経営を後押ししてくれるようになります。

 そのための学問がまさに、HRM(人材マネジメント)に他なりません。人事コンサルタントとして私は、多くの人にぜひ人材マネジメントの本質を学んでほしいと思っています。そうすれば、給与や賞与の上がり下がりに一喜一憂しなくなる、「人事評価を気にしない人」になってゆけることがわかっているからです。それは出世する人になるきっかけでもあります。

平康慶浩
 セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。

キャリアアップしたい人の――「エグゼクティブ転職」

好条件のオファーを受けませんか?
わずか5分の無料登録で「待つ」転職

>> 登録する(無料)

「エグゼクティブ転職」は、日本経済新聞社グループが運営する 次世代リーダーの転職支援サイトです

NIKKEI 日経HR


マンガでわかる いまどきの「出世学」

著者 : 平康 慶浩
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,404円 (税込み)

出世ナビ新着記事

ALL CHANNEL