不動産・住宅ローン

プロが教える住まいのキホン

夢の注文住宅のはずが… 業者まかせはトラブルのもと 弁護士 上床竜司

2017/8/2

 ハウスメーカーに注文住宅の新築を依頼することになりました。基本的な設計プランや工事金額の打ち合わせが終わり、近く請負契約を結ぶ予定ですが、ハウスメーカーから送られてきた契約書には、建物の簡単な間取り図と立面図しかついていません。このまま契約を結んでも大丈夫でしょうか。

■設計図と仕様書、念入りにチェックを

 「注文住宅でデザインも間取りも自分の理想のマイホームをつくる」。そう考えただけで夢が膨らみ、ワクワクするのではないでしょうか。注文住宅は自分の好みに合わせて自由に建物を設計できるメリットがあります。一方、建売住宅と違って契約時には建物はまだ影も形もありませんので、建物が建った後で「自分のイメージとは違う」といった理由でトラブルになることがあります。

 これから建てる建物の内容は設計図や仕様書で決まります。設計図や仕様書に書かれていない部分は、できあがったものが自分の希望と食い違っても、「契約違反だ」と主張しにくくなります。トラブルを防止するためには、ハウスメーカーに設計図や仕様書をきちんと作らせることが重要です。

 その設計図と仕様書の概要を下記にまとめました。

【設計図】建物の外観や間取り、構造、各部位の形状や寸法、設備の配置などを示した図面。設計図には配置図、平面図、立面図、断面図など建物全体を示した図面や、細部を拡大した詳細図、構造設計図、電気や給排水などを示した設備設計図など様々な図面がある。

【仕様書】工事で使う材料や製品の品質、性能、メーカー、施工方法などの仕様が書かれている。設計図には詳しい仕様までは書き込めないので、仕様書を別に作る。

 設計図と仕様書は、これから建てようとする建物の内容、つまり施工者との契約の内容を決める重要な書類なので、普通は工事請負契約書に設計図・仕様書を添付します。建物の設計を正確に表現しようとすれば、詳しい設計図や仕様書が必要になるはずです。ところが、中には契約書に間取り図や立面図など数枚の図面や簡易な仕様書しか添付しない業者もいます。「設計図や仕様書には細かい部分は書いていないけれど、打ち合わせでこちらの要望を伝えてあるから大丈夫だろう」と油断していると、後述するような思わぬ落とし穴が待っています。逆に、図面には寸法まで細かく書いてあるのに、見方がよくわからないからといって後で確認しようと見過ごしていると、これもトラブルの原因になります。

■トラブル事例(1)追加工事代金の請求
 業者と設計プランの打ち合わせを始めたところ、担当者から「まず契約を結ばせてほしい。細かい仕様は後からいくらでも変更できる」とせかされて契約を結びました。その後の打ち合わせで、内装材として契約前に見せられたイメージ図に近い色柄のクロスを選んだところ、「追加の工事代金が発生する」と言われました。仕様書では内装材の種類について「ビニールクロス」とだけ書かれていましたが、担当者からは「仕様書のものはベーシックなタイプで単価は1平方メートルあたり1000円。工事代金はこのタイプを使う前提で見積もっている。先ほど選んだクロスはプレミアムタイプで単価は1平方メートルあたり3000円なので、差額が追加になる」と言われました。イメージ図に近いのはプレミアムタイプなのですが、担当者は「イメージ図はあくまでもイメージ」と取り合ってくれません。

 このケースでは、仕様書にクロスの品名などが詳しく書かれていないのに、「後からいくらでも変更できる」という担当者の言葉を安易に信じて契約したことが原因です。

■トラブル事例(2)照明の位置にずれ
 天井に直接取り付ける「シーリングライト」をダイニングルームに設置したところ、テーブルの真ん中からかなりずれていました。契約前のイメージ図にはテーブルや家具、照明の絵も書かれていたので、当然その配置に合わせて取り付けてもらえると思っていました。業者に位置を変えてほしいと苦情を言ったところ、「設計図には照明の取り付け位置は書かれていない。部屋のだいたい真ん中に取り付けているので問題ない」と言われました。
■トラブル事例(3)駐車場に車が入らない
 我が家は普通乗用車を持っていて、新築を機にもう1台、大型のワゴンを購入することにしました。業者には車を2台とめられるよう、駐車場は広めに確保してほしいと要望しました。ところが、家が出来上がって車を駐車場にとめようとしたところ、幅が狭く2台の車を駐車できませんでした。しかし、業者は「駐車場の寸法は図面のとおりなので、契約違反ではない」と言われてしまいました。

 (2)(3)のケースでは、大切な要望が明確に業者に伝わらず、設計図に正確に反映されているのか確認しなかったことがトラブルの原因になっています。業者はプロなのだからきちんとやってくれるはず、という思い込みは禁物です。建築主はたとえ素人でも、設計図を見て照明やコンセントが表示されているかどうかや、その位置を確認したり、駐車場にとめる車の車種やサイズを伝えてスムーズに車庫入れができる幅を確保するよう求めたりすることはできます。特に自分がこだわりを持っている部分は期待が裏切られたときの落胆も大きくなりますので、入念にチェックしてください。

■設計契約を先に結ぶこともできる

 ハウスメーカーに依頼して注文住宅を建てる場合、設計・監理と施工を同じ会社に発注するのが一般的です。これを「設計施工一貫方式」と呼びます。この場合、まず設計・監理業務と施工業務を含めた形で工事請負契約を締結して、契約後に詳細な設計を行うことが一般的です。そのため契約を結ぶ前にはあまり詳細な設計の打ち合わせができないので、契約書に添付する図面は簡単なものになりがちです。しかし、それではトラブルを防ぐことができません。そこで、この方式であっても設計契約を先に結び、詳しい設計内容が固まった後で工事請負契約を締結することが考えられます。工事請負契約書のひな型として利用されている業界団体の約款の一つには「設計施工一貫」の場合でも、まず設計契約を結んで、設計が完了した後に施工と工事監理に関する工事請負契約を締結する、という二段階の手続きを前提にした契約の形もありますので、使うことができるか確認してください。

 設計プランを検討している段階では、設計図を何度か書き直しますが、請負契約書に設計図が添付されていないために、どれが最終的に確定した設計図なのかはっきりせず、後でトラブルになることもあります。設計図は必ず請負契約書に添付してもらうようにしてください。また、役所などへの確認申請手続きで使用した図面の内容が最終的に確定した設計図と違い、業者が確認申請用の図面に合わせて工事を進めてしまうトラブルもあります。これは確認申請用の図面に設計打ち合わせでの修正要望が反映されていないことなどが原因です。確認申請用の図面も業者まかせにしないできちんとチェックしましょう。

■内訳書のチェックも忘れずに

 契約を結ぶときに受け取る書類では、設計図や仕様書のほかに「内訳書」も大切です。内訳書は、各工事の単価と数量といった請負代金の詳しい内訳を表にまとめた書面です。契約書に添付することもあります。内訳書には、設計図や仕様書には書き切れなかった工事内容が書かれていることが多く、工事内容、つまり契約内容を知る手掛かりになりますし、工事代金額が適正かどうかをチェックするための資料になります。

 また、内訳書は工事の追加や変更があったときにも重要になります。例えば、契約時には書斎に作り付け棚をつける予定だったのを、契約後の予算の関係で取りやめることにした場合、本来ならば契約した工事代金から棚の金額を減額しなければなりません。しかし、内訳書に棚の金額(単価と数量)が書かれておらず、「建具工事 一式 ●●円」としか書いていなければ、いくら減額したらよいのかはっきりしません。悪質な業者であれば、棚の金額は本当は20万円なのに「5万円としか見積もっていなかった」と言い張って5万円分しか減額しないかもしれません。このようなトラブルを避けるためにも、工事の単価と数量が細かく書かれている内訳書の提出を求めるべきです。

(監修 建築家 米田耕司)

■上床竜司
 1994年弁護士登録。あさひ法律事務所所属。不動産法務、建築紛争、会社法など企業法務、倒産案件などを中心に取り扱っている。建築紛争の取り扱い経験は多数あり、マンションの瑕疵(かし)紛争や建て替え案件も多く手掛けている。弁護士会の委員として民法(債権法)改正検討作業にも従事。趣味はゴルフ、サッカー観戦など。

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