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実家のお墓、引っ越しに300万円 専門業者が代行も

2017/7/27

「閉眼法要」をして遺骨を取り出す

 地方にある先祖のお墓を、お参りしやすい自宅近くに引っ越しする「改葬」が増えている。将来の子ども世代の負担も減らせる。手続きや費用について知っておこう。

 会社員の木曽琢真さん(57)は2年前に亡くなった父を東京・高輪に建てた新しい墓に葬った。先祖代々の墓は自宅から片道4時間かかる房総半島の南端にあり、お参りはせいぜい年1回。「オレが死んだら、おまえが適当なところに移せ」という生前の父の言葉にしたがって一族の墓を併せて改葬し、いまは月1~2回お参りしている。

■親戚との付き合い、見直す機会に

 厚生労働省によると、2015年度の改葬は9万1567件。地方出身の団塊世代が管理が難しくなった実家の墓を引っ越しするケースが増えている。古いお墓を撤去することになるので「墓じまい」と呼ぶ人もいる。お参りしやすくなるほか、これまでお墓の管理をしてもらっていた親戚との付き合いを見直す機会にもなるようだ。

 改葬は新しいお墓を決めることから始まる。最近はお墓のタイプもいろいろだ。「○○家之墓」などの文字を刻んだ石碑を建てる一般のお墓は土地使用権を含めて100万~300万円の費用がかかる。これまでのお墓の石碑を移設したいと考える人もいるだろうが、指定石材店が決まっているなどの理由で受け付けてくれない墓地もある。

 遺骨を土中に埋めるのではなく、専用施設にしつらえたロッカー式の棚に安置するお墓を「納骨堂」という。最近はお参りにいくと、コンピューター制御で指定された骨つぼが自動搬送されてくる方式もある。このほか、墓石の代わりに木を植えて慰霊のシンボルにする「樹木葬」の墓地、ひとつの大きな墓に他人と一緒に入る「永代供養墓」が候補になるだろう。

■納骨堂の費用、20万~100万円

 これら新形態のお墓の費用はどうだろうか。例えば納骨堂は20万~100万円くらい。立地に左右されるのは一般のお墓と同じだが、遺骨の数で値段を決めるところもあり、先祖代々の遺骨を安置しようとすると人数分だけ費用がかさむ。葬儀やお墓の情報サービス会社、鎌倉新書の草川一さんは「いろいろ検討はしても、結局は一般の墓に決める人が多い」という。

 新しいお墓が決まったら、これまでのお墓がある自治体に「改葬許可申請書」を出す手続きがある。この書類にはお墓の管理者の署名、なつ印が必要だが、管理者が寺の場合、日ごろ疎遠にしている檀家からいきなり改葬の話を切り出されると、機嫌を損ねて署名を拒む住職がいるという。メモリアルアートの大野屋の営業戦略室長、杉若昌秀さんは「早めに説明しておくことが大事」と助言する。

これまでのお墓は更地にして返却する

 檀家をやめる際には「世話になった謝礼としてお布施を渡すことが多い」と墓地大手ニチリョクの熊谷真充さんは話す。いわゆる「離壇料」で、目安は10万円くらい。木曽さんも10万円を支払った。寺の側から離壇料を求めてくるケースでは、30万円ほどの金額を提示されることがある。

■「離檀料」高額なら拒否も

 ただし、離檀料は事前の取り決めがない請求なので、社会通念に照らしてあまりに高額ならきっぱり断ればいい。埼玉県の寺からの改葬で「100万円も請求された」というAさん(59)は、法律の専門家を間に立てて支払いを拒否したという。

 自治体から改葬許可が出たら、「閉眼法要(魂抜き)」という儀式をして遺骨を取り出す。そして新しい墓で「開眼法要(魂入れ)」をして遺骨を納める。これまでのお墓を更地に戻す工事費用は1平方メートル当たり十数万円かかる。

 新しいお墓の立地条件などにもよるが、一般のお墓を建てて改葬すると、ざっと300万円ほどかかりそうだ。納骨堂など新形態のお墓ならもっと安く済む可能性はある。書類の作成などの事務手続きが面倒なら、代行してくれる専門業者に相談してもいい。

(土井誠司)

[NIKKEIプラス1 2017年7月15日付]

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