HISはメタボ体質 大胆な改革こそ創業者の強み
エイチ・アイ・エスの沢田会長兼社長(CEO)
エイチ・アイ・エスの沢田秀雄氏
昭和を代表するベンチャー起業家で大手旅行会社エイチ・アイ・エス(HIS)などを築き上げた沢田秀雄氏。2016年11月に突然、HISの社長に復帰し、自ら改革に乗り出しました。破壊と再生を通じ企業組織に新しい力を生み出していく沢田氏の下でHISは大きな転換期を迎えています。今回は旅行業界で急速に進む地殻変動と、「新生HIS」が目指す新しい旅行ビジネスの姿を語ってもらいました。
赤字事業は撤退、経営のスピード上げる
HISの売上高構成をみると、まだ旅行事業のウエートが大きいですが、旅行といっても多岐にわたります。インバウンド(訪日外国人)受け入れ、アウトバウンド(海外送迎)、海外旅行と国内旅行、クルーズ、HISの海外拠点で扱うその国の居住者の「海外旅行」などです。カンパニー制、事業部制を導入し、責任と権限を現場に委譲していかないと、組織や意思決定のスピードが上がりません。本社が全て仕切っては、小回りがきかなかったり、生産性が悪くなったりする弊害が出ますからね。
今、HISは改革の時期です。当社には社員が1万人います。色々な部署ができ、肥満とは言わないまでも、メタボ体質になっているところがあるから、無駄をなくしていくことが必要です。子会社の中でも赤字の部門は「将来成長して黒字になるのだったら残す。そうでなければ撤退する」と言っています。それには、思い切った決裁が必要ですから、僕が最終決断します。
例えば、「スマ宿」という国内宿泊の予約サイトがありましたが、撤退を決めました。ハイヤーの送迎サービスは撤退を終えました。僕が社長に戻ってから半年、ずっとこうした作業をしてきました。今見ているだけで、あと20億円くらいコストカットができそうです。削れた分は、2018年10月期の収益のプラスになりますから、利益が出る体質にぐっと変わるはずです。撤退モードは今期までで、18年10月期は反撃のモードに変えます。
あとは成長分野を伸ばすことに尽きます。前回、旅行業界ではOTA(オンライン旅行会社)の時代が到来し、スマートフォン(スマホ)とインターネット予約が主流のスタイルに変わったといいましたが、そっちを伸ばしていくしかないですね。あと船のクルーズも市場が拡大します。インバウンドも伸びます。伸びる分野にヒト・モノ・カネを集中します。
企画力とオプションを強化、旅行は情報力の勝負
OTAというのはプラットフォーム(情報基盤)の勝負です。そこに行けば様々な情報にアクセスできるという基盤です。社内からあまり言うなと口止めされていますが(笑)、今伸びているのはバスツアーです。富士山に行って名所旧跡を巡るような、日帰りか1泊の小旅行です。