マネー研究所

投信調査隊

山高ければ谷深し 投信高値づかみのダメージ度を検証 QUICK資産運用研究所 高瀬浩

2017/7/19

PIXTA

 定時定額で時間分散しながらコツコツ投資する積み立て投資と違い、一度にまとめて投資を行う一括投資は、相場のピークで買ってしまう「高値づかみ」の恐れがつきまとう。では高値づかみをすると、どれほどのダメージになるのだろうか。主な投資信託で検証したところ、価格変動リスクが大きい投信ほど、高値から安値まで大きく下落する「山高ければ谷深し」の傾向が鮮明となった。積み立て投資でなく、あえて一括投資を行う場合は、そうしたリスクを覚悟しておく必要がある。

 資金を一度に投じて株式や投信を購入するのが一括投資だ。ボーナスなどまとまった資金が入ったときに行う人もいるかもしれない。ただ、一括投資はタイミングによっては高値づかみになってしまう。運悪く投信の基準価格が高値圏のときに買い、その後安値圏に沈む場合もあるからだ。最初に、日経平均株価を例にとり、高値づかみの状況をグラフ(A)で確認しておこう。

■過去3年の最大下落率は28%

 今回の調査では高値から安値までの振れ幅が一番大きく、期間内で最大下落率を記録した際の起点である高値で買った場合を、高値づかみと見なした。高値は期間内の最高値とは限らない。その後の下落率が大きくない場合もあるためだ。

 それでは高値づかみの状況を具体的に見ていこう。過去3年での最大下落率は28%で、高値は2015年6月につけた2万868円、安値は16年6月の1万4952円(安値)だった。安値を付けた後は上昇基調をたどっているものの、現値(17年6月末)は2万33円と高値から4%下落した水準にある。2年経過してもまだ購入時の高値を回復できていない。

 過去10年での最大下落率は61%。このときの高値は07年7月の1万8261円で、安値は7054円(リーマン・ショック後の09年3月)だった。この高値を回復したのは7.6年も経過した15年2月だが、高値回復後は上昇傾向をたどり、高値から現値まで10%上昇している。

■価格変動リスクと密接な関係

 高値や安値は、投信の価格変動リスクと密接な関係にある。価格変動リスクとは、投信の値動きの大きさを数値化したものだ。価格変動リスクは投資する対象によって決まり、通常は投資先が国内債券、海外債券、国内株式、新興国株式の順にリスクが大きくなる。価格変動リスクが大きい投信ほど、高いリターンが期待できる半面、元本割れ時の損失も大きくなる。

 こうした点を踏まえ、表(B)を作成した。価格変動リスクの階級(6段階に区分、数字が大きいほどリスクが高い)ごとに純資産残高の大きな投信を3本まで選び、3年前(14年6月末)・10年前(07年6月末)に一括投資した場合のリターンと
(1)高値から安値までの下落率(高値づかみした場合の最大下落率)
(2)高値から現値(17年6月末)までのリターン
(3)高値を回復するまでの年数
――について計測したものだ。

 一見して分かるように、リスク階級が上がるほど最大下落率が大きくなり、「山高ければ谷深し」の傾向が鮮明だ。茶色の線で囲った過去3年の最大下落率は、リスク階級が最小の「1」の「ダイワ日本国債ファンド(毎月分配型)」が▲2.9%と小さめだ。

 一方、リスク階級が「4」の「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」は▲18.8%、リスク階級「5」の「東証銀行業株価指数連動型上場投資信託」は▲48.6%と大きい。

■リスクが大きいほど下落する

 過去10年に広げて計測すると、この間は金融危機を挟むため高リスクな投信ほど下げ幅が大きくなり、リスク階級が最大の「6」では最大下落率が▲80%前後に達している。ただし、高値から現値までのリターンは2桁以上の上昇が目立つ。長期保有することで「山高ければ谷深し」から「谷深ければ山高し」に転じる可能性があるということだ。

 過去3年で見ても、リスク階級「4」の「野村インド株投資」の場合、高値をつかむと最大で31.6%下落し、高値を回復するまで2.1年かかった。ただ、同ファンドは高値を回復してから一段高となり、高値から現値まで7.1%上昇。同リターンが表の中では唯一プラスのケースとなった。

 興味深いのは、低リスクのファンドでもいったん高値づかみをすると元本回復まで時間がかかることだ。「ダイワ日本国債ファンド(毎月分配型)」は高値を付けた日から現在まで1年たっても2.7%下落したままで、高値は回復していない。値動きがわかるように、「野村インド株投資」とともに基準価格(分配金再投資)のグラフ(C)を作成したので参考にしてほしい。

■積み立てで高値づかみを回避

 一括投資で投信を高値づかみしてしまうと、価格変動リスクに応じて損失額が膨らみ、元本回復まで数年以上かかると覚悟しておいた方がいい。数年経過しても元本割れしたままというのもあり得る。

 最悪の事態を想定して投資するのが、こうしたときに生じる後悔の念を少しでも和らげる。そのためには投信の価格変動リスクを知って、身の丈に合った投信を選択するのが肝心だ。もうけ損なったときに生活に困るような過大な投資をしないのはいうまでもない。余裕資金の運用の範囲なら損をしてもあきらめもつく。

 その一方で、積み立て投資の強みに改めて目を向けたい。定時定額の積み立て投資は「高値では少ない口数、安値では多くの口数」を購入するので、購入価格は保有口数で平均すると低く抑えられるためだ。つまり、一括購入と違い、高値づかみを回避する効果がある。

 ただし、積み立て投資でも価格変動リスクが高い投信を購入する場合は、相場急落による元本割れもあり得る。その後は相場が急回復して利益が膨らむ可能性もあるが、一時的にせよ元本割れすると心理的なダメージは小さくないかもしれない。そうしたリスクを抱え込みたくない人は価格変動リスクが低い投信を購入すべきだ。リスクや値動きの傾向の異なる投信を組み合わせて国際分散投資するなど、投信選びは個々の状況に応じて柔軟に行いたい。

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL