Can't you…?は危険! 相手が絶対怒り出す3つの英語
デイビッド・セイン「影の英語」(37)急いで!
ひとつの言葉は様々な顔を持っています。日本人の言葉が意図していない意味合いで伝わることもあります。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が使いがちな言葉から「影にある意味」を紹介します。今回は、同僚を急がせる場面です。
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Time is money. ビジネスは時間との闘い。「早く、早く」と気持ちが急く場合もあります。自分が携わっていることであればひたすら急ぐのですが、同僚を急がせるとなるとそれはなかなかの難問です。でも避けては通れないのも事実です。
正しい訳:もっと早くできませんか?
影の意味:もっと早くできないの?
Can't you…? 「~できないんですか?」と否定で聞くのは相手にとって心地のよいものではありません。表の意味にも影の意味にも大差はなく、相手をバカにしているように聞こえてしまいます。
正しい訳:今やらなければなりません。
影の意味:今やるっきゃないでしょう。
相手にプレッシャーをかけるための言葉に聞こえてしまいます。
正しい訳:すぐにやってほしいんですけど。
影の意味:今すぐやりなさい。
私の気持ちwant が一番先、これは命令。上から目線のひと言です。
これなら「影の意味」はない!
もし、少し早くやっていただければ、とてもありがたいんですけど。
kind of …は「ある程度、もう少し」のように表現(この場合はquickly)を和らげる働きがあります。またこのように仮定法を使うことで、丁寧な表現となります。「あなた」という言葉を使わずに自分の気持ちを表していることもポイントです。
申し訳ありませんが、すぐにやっていただけるようにお願いしなければならないんです。
I need to … で「~する必要がある」ことを相手に伝えています。それなら仕方がないということになりますが、I'm afraidのひと言は忘れないようにしましょう。
もし、何とかすぐにやっていただけたら…
「ありがたいのですが、助かるのですが」というひと言を言わなくても、相手には伝わるでしょう。…の中にあなたの言いづらい気持ちが込められています。控え目な表現です。
あなたが知らない本当の使い方――quick
・We need to take quick action to make sure this problem doesn't get worse. この問題をさらに悪化させないために迅速な行動をとる必要があります。
*take quick action: 迅速な行動をとる
・A good leader needs to be able to make quick decisions under pressure. よきリーダーには、プレッシャーにありながらも、素早い決断が下せる必要があります。
*make quick decisions: 素早い決定を下す
・Do you want to get a quick drink after work tonight? 仕事の後、軽く一杯どうですか?
*get a quick drink: 軽く一杯飲む
・Let's do a quick fix now, and then deal with this problem later when we have more time. 今はその場しのぎの解決策でいきましょう。時間があるときにこの問題を解決しましょう。
*quick fix: その場しのぎの解決法(策)、手っ取り早い解決策
・I've never done this kind of work before, but I'm a quick learner. この手の仕事はやったことはありませんけど、私は飲み込みが早いです。
* quick learner: 素早い学習者、すなわち、「飲み込みが早いひと、物覚えの良い人」
・George is quick to get angry, so be careful with him. ジョージはすぐにカッとなるから、気をつけてください。
*be quick to get angry: すぐにカッとなる
・Linda is just starting, but I think she'll catch on quick. リンダは始めたばかりですが、彼女は飲み込みが早いと思います。
*catch on quick: 察しがよい、飲み込みが早い
・If you want to make a quick buck, don't invest in the stock market. もし、手っ取り早くお金を稼ぎたいなら、株式市場に投資しないでください。
*make a quick buck: 手っ取り早く金を稼ぐ、あぶく銭を稼ぐ
日本語にも「早い」と「速い」があるように、英語でもそこはきちんと使い分ける必要があります。
He gets up early every morning. 「彼は毎朝早く起きます」。この場合のearlyは「副詞」ですが、The early bird catches the worm.「早起き鳥は虫を捕らえる」すなわち「早起きは三文の得」の場合は形容詞です。この「はやさ」は時間的な「早さ」を表しています。
He can run fast. 「彼は速く走ることができます」。この場合のfast は「副詞」ですが、He's a fast runner.「彼は速いランナーです」なら、「形容詞」です。これは「速度の速さ」を表しています。
quickはa quick learner 「物覚えの良い人」のように、「ある行動や動作が素早い」ことを表しています。rapidは例えばrapid change 「急激な変化」rapid current 「急激な流れ」のように変化や流れの速度などが、急激であることを示しています。
Keep trying!
: D セイン
※デイビッド・セインの「ビジネス英語・今日の一場面」は木曜更新です。次回は7月27日の予定です。
米国出身、20数年前に来日。 翻訳、通訳、執筆、英語学校経営など活動は多岐にわたる。企業や学校の人気セミナー講師。英語関連の出版物の企画・編集を手掛けるAtoZ(http://www.atozenglish.jp)・AtoZ 英語学校代表。