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焼き肉のたれ「黄金の味」 39年振り刷新、2つの理由

日経トレンディネット

2017/7/16

「黄金の味」は「甘口」「中辛」「辛口」の3種類(各360g、小売参考価格430円)。ラベルには従来品にはなかったフルーツのイラストを追加している
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 エバラ食品工業(以下、エバラ食品)が焼き肉用のたれ「黄金の味」シリーズを大幅にリニューアル。2017年7月10日に発売した。

 「発売から39年間、その時代のニーズに合わせて細かな見直しを繰り返してきたが、今回は約2年もの期間を開発に費やし、品質や容器、容量などさまざまな部分を徹底的に見直した。これほど大きなリニューアルは発売以来初」と、リニューアルプロジェクトを担当した家庭用マーケティング第一課の小嶋定紘課長は話す。

 黄金の味は現在も年間約4000万本を出荷しているトップブランドだ。発売から約40年にわたってユーザーに支持されている商品の大幅なリニューアルを決行した理由には、ロングセラーゆえに見えにくかった、「2つの変化」があった。

■リンゴの品種を変えたことでとろみが「変化」

 黄金の味の特徴といえば、フルーツを多く使用していることによる「甘み」と「とろみ」だ。しかし、ユーザーから「たれがシャバシャバになっている」との指摘があり、調査したところ、原料の1/3を占めている国産リンゴの「ある変化」に気づいたという。

 「原料にはいろいろな品種のリンゴを用いているが、開発時は酸味が強くて水分が少ない紅玉が中心だった。しかし、甘みが強く水分の多いふじの流通量が増えたことで原料にもふじを多く用いるようになった結果、リンゴの量は同じでも水分量が増加していた」(小嶋課長)という。そのため、昔と比べてとろみが減ってきていたというわけだ。

 またここ数年、赤身肉の人気が高まるのにつれて、肉によく絡むたれが人気を集めるようになった。そこで、同社はとろみを増やすべく、フルーツピューレの生産工程を根本から見直した。「リンゴをしっかり加熱することで繊維が軟らかくなり、これまで裏ごし過程で取り除いていた部分も丸ごと使用できるようになった。そのため、リンゴのすりおろし感が残り、果実のコクがより肉に絡みやすくなった」と小嶋課長は説明する。工場で試作したリンゴピューレは20トン以上に上ったという。

■甘口、中辛、辛口の味の差がなくなっていた?

 今回のリニューアルのもうひとつのポイントは、甘口、中辛、辛口の特徴をそれぞれはっきりさせたことだ。きっかけはリニューアルプロジェクトを進める中で行ったグループインタビュー。「中辛と他の味との違いが分かりにくい」という参加者からの指摘だった。

 そう感じる理由について検証したところ、原因の一つとして、紅玉からふじに切り替えたことで酸味が抑えられ、甘みが増していたことが分かった。さらに、「ユーザーの好みも変化し、甘みやうまみを重視するようになっている。3つの味それぞれを消費者に好まれる味に近づけていった結果、はからずも味が似てきてしまったのかもしれない」(小嶋課長)。

 そこで今回のリニューアルでは、従来の味のベースは守りながら、甘口にはハチミツとリンゴ酢を、辛口にはコチジャンと豆板醤を加えて、それぞれの味の特徴をはっきりと際立たせた。ユーザーからの支持が多い中辛はニンニクなどでうまみとコクを強調したが、従来品と味はあまり変えていないという。「年齢を重ねると甘口から中辛に好みが変化することが多いが、辛口好みの人はずっと変わらないことが多い。リニューアルしたことにより、辛口を好む“焼き肉の大人マーケット”を拡大するきっかけになるのではないか」と、同社の丹羽真介マーケティング部長は話す。

 味の大幅なリニューアルに伴い、容器も見直した。これまでもキャップやラベルなどの改良を重ねてきたが、世帯人数の減少、共働き世帯、シニア世代の増加といった社会の変化に合わせて、サイズの見直しを行った。大きなポイントは400gを廃止して360gにしたこと。容量を減らしたことで開封後に早めに使い切れるようにしたのだ。また、仕事帰りにスーパーで購入するユーザーにとってはびん容器は重いのではないかと考えたこと、流通からも「ケースを持ち上げにくい」という指摘を受けたことから、360g以上の3サイズには今回からペットボトルを採用している。

左から210g、360g、480g、590g(全て中辛)。リニューアルに伴い400gの生産を中止し、360gと480gを追加した。360gと480gは持ちやすいように中央にくびれのあるデザインに変更している

■新・旧黄金の味を食べ比べてみた

 どれくらい味が変わったか、従来品と新しい黄金の味を実際に食べ比べてみた。

左が従来品、右がリニューアル後(ともに中辛)

 味を見る前に、小皿に注いだ時点で違いは歴然。新しい黄金の味のほうがどろりとして、粘度が高い。そのため、焼いた肉につけたときのからみがまったく違う。

 味も、食べ比べると違いがはっきり分かる。新しい黄金の味は、リンゴの風味が濃いせいか、味に膨らみがある。口に含んだ後、フルーティーな甘みとともに香辛料の香りがぐっと広がる。その後に従来品を食べると、やや物足りなく感じるのだ。ただ、あくまでも食べ比べてわかる範囲。従来の味のベースが大きく変わってはいないので、リニューアルに気づかずに新しい黄金の味を手に取った人は「いつもよりちょっとおいしく感じる」程度かもしれない。

 だが甘口、中辛、辛口の味の違いはかなりはっきり感じた。甘口は幅広い年代に好まれそうな食べやすい味。その後に中辛を食べると、ニンニクなどの香辛料の後味の広がりを感じる。辛口は、辛味もかなり感じるがそれと釣り合う力強いうまみもあって、あとをひく感じだ。家人(50代男性)は「辛いけどうまい!」と辛口の味付けが特に気に入ったようだった。

リニューアル後の商品は肉へのからみがよく、味の違いもはっきりと分かった
甘口、中辛、辛口の味の違いも、従来品より強調されていた

 エバラ食品は焼き肉のたれカテゴリーで約50%のシェアを持ち、黄金の味はその主力を占めるトップブランド。さらに、甘口・中辛・辛口各カテゴリーでもトップシェアを占めている。しかし、市場調査をすると購入世帯率は、全世帯の約2割強。つまりまだ使ったことがない層が7割以上もいることになる。同社は「黄金の味を知ってはいるが手に取ったことがないという層はまだまだ多い。今回のリニューアルで黄金の味を知ってもらい、新たな購入層を掘り起こしたい」(丹羽部長)と意気込んでいる。

(ライター 桑原恵美子)

[日経トレンディネット 2017年7月6日付の記事を再構成]

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