2007年に設立され、10年にスタジオ1作目『怪盗グルーの月泥棒 3D』を公開したイルミネーション・エンターテインメント。その後日本で、一つ目の「黄色いやつ」=ミニオンが大ブレイク。ディズニー、ピクサーに並ぶスタジオに躍り出て、2010年代のアニメ躍進を象徴する存在となった。7月21日からは最新作『怪盗グルーのミニオン大脱走』が日本公開される。イルミネーションの強さの理由を、スタジオ取材から探った。

イルミネーションの設立者であり、全作品をプロデュースしてきたのがクリス・メレダンドリ氏だ。20世紀フォックスアニメーションの初代代表で『アイス・エイジ』シリーズなどを大ヒットさせた。新スタジオ設立で目指したのは「よりインターナショナルな視点を持ったスタジオ」だという。「年齢や文化に関係なく、世界中の人々の心に触れるアニメを作っていきたかった」(メレダンドリ氏、以下同)。
アメリカでは20世紀フォックスやピクサーなどアニメーションスタジオがデジタルアーティストの囲い込み競争を行っていたため、スタジオの候補地には米国外に目を向けた。最終的にフランス・パリを拠点にしたアニメーション/VFXスタジオのマックガフ(※)と『怪盗グルー』を作ることに。
「『これだけいれば(スタジオ運営には)大丈夫』というデジタルアーティストの人数やCG技術のレベル、アニメ業界が確立している場所を考えると、イギリス、日本、フランスが選択肢でした。当時、日本のCGアニメ業界はまだ若かった。そこで最終的にフランスにしました」
ミニオンにフランスらしさ
イルミネーション作品の特徴については、「ビジュアルスタイルとユーモアにフランスらしさを感じている」と言う。ビジュアルスタイルとは、単にデザインだけではなく、キャラクターの動かし方をも含む。「ミニオンの本質的な部分は監督のピエール・コフィンとクリス・ルノー、美術を手がけるエリック・ギヨンから生まれています。3人がよく参考にしているのが、体を使ったコメディ表現をしていた昔の映画。チャップリン、バスター・キートン、ジャック・タチ、ピーター・セラーズです」。
ミニオンがお互いにこづきあったり、舌を出したり、オナラをしたり。意味不明のミニオン語を話しながらイタズラと悪ふざけを繰り広げるのが魅力。その彼らの動きを生んでいるのがフランスらしさであり、チャップリンなど昔のコメディ映画だったというわけだ。