「イルミネーション作品の一番の魅力はキャラクターです。例えばグルーは悪党ですが、スイートさがあって観客の心に響きます。キャラクターにアピール力がないと、観客は作品自体にほれこんでくれません。イルミネーション作品はまずビジュアルがあり、セリフが2番目。(セリフに頼らず)ビジュアルを重視することで、より普遍的な共感性を持つことができます」
ビジュアル重視で共感呼ぶ
メレダンドリ氏と長年親交のある、『劇場版ポケットモンスター』の1~14作目までエグゼクティブプロデューサーを務めた小学館集英社プロダクションの久保雅一氏は、「エスプリの効いたギャグや下ネタの使い方にフランスらしさを感じます。ディズニーは泣きの要素が強いですが、イルミネーションは笑いの要素が多いですね」と見る。
最新作『怪盗グルーのミニオン大脱走』のカイル・バルダ監督は、ピクサーでアニメーターとして働いた経験がある。彼はイルミネーションと他スタジオとの違いについてはこう語る。
「ピクサーはストーリーを重視している気がします。一方イルミネーションは、『よりエッジなものを』というところがあって、ファミリー向けではあるが、大人も楽しめることを求めています。グルーがいい例で、主人公なのに悪党。そして悪党であるボスについてきたのがミニオン。伝統的な物語ではなく、ひねってあると思います」
日本での人気の転換点となったのが『ペット』『シング』の大ヒットだ。ミニオンが支えてきたイルミネーション人気に広がりが出た。「『ペット』は自分たちが飼っているペットを思い出すのと同時に、キャラクターとしてもかわいいのが魅力。『シング』はエモーショナルなストーリーが特に日本の観客に響いたので、ここまでヒットしたのでは」(久保氏)。
イルミネーションでは今後も年に1本から2本ペースで製作していく。欧米で人気の絵本作家Dr.スースの原作『グリンチはどうやってクリスマスを盗んだか』(原題)のアニメ化を18年11月、19年7月に『ペット2』、20年7月に『ミニオンズ2』、12月に『シング2』の公開を予定する(公開時期は米国の予定)。「21年以降はオリジナル作品と続編をバランスよく作っていきたいですね」とメレダンドリ氏。日本でも大ヒットした作品の続編が公開されることもあり、今後もイルミネーション旋風は続きそうだ。
※マックガフはその後、イルミネーションに買収され、イルミネーション・マックガフと社名を変更。

グルーとルーシーは悪党バルタザール・ブラットを逃したことから、反悪党同盟をクビになる。一方ミニオンたちは、グルーが悪の道に戻る気がないことから、新たなボスを求めて家を出てしまう。ある日、グルーにドルーという双子の兄弟がいることが判明する。
本作の新キャラが双子の兄弟ドルーと、新たな敵バルタザールだ。「グルーは1作目で3姉妹の父親になり、2作目でルーシーと結婚しました。グルーの物語として家族を考えた際、次に思いついたのが双子の兄弟でした」(カイル・パルダ監督)。
バルタザールは80年代の子役出身のため、今でもその時代のファッションや音楽が大好き。劇中では80年代のヒットナンバーが数多く流れる。「場面場面に合い、物語の推進力が落ちないような、楽しいエネルギーを感じさせてくれる楽曲を選んだ」。人気のミニオンに音楽が加わり、さらなるヒットが期待できそうだ。
(ライター 相良智弘)
[日経エンタテインメント! 2017年8月号の記事を再構成]