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4000年前の高貴な族長一家 デジタル技術で顔を復元

日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/7/17

 現金のない社会において、労働時間とは価値そのものであり、族長のビーズは「富が極端に集中していたことを示しています」と、カナダ、サイモン・フレーザー大学の考古学者アラン・マクミラン氏は言う(マクミラン氏は今回の調査には参加していない)。

■若い女性の遺骸や輝く貝殻の首飾りも

 クラーク氏のチームが遺跡の発掘範囲を広げると、さらに多くの墓と財宝が見つかった。族長の墓からわずか数メートル離れたところには、19~23歳で亡くなったとみられる女性の遺骸が埋められていた。その首には輝く貝がらの首飾りがかけられ、体は5700個もの石のビーズで飾られていた。さらに彼女の頭蓋骨周辺の土からは、およそ3200個の小さな貝がらのビーズが見つかった。ビーズのひと粒の大きさは砂粒の2.5倍ほどしかなく、石のビーズよりもはるかに作るのが難しい。「世界中のビーズの専門家に問い合わせましたが、どうやって作られたのかは誰にもわかりませんでした」とクラーク氏は言う。

 これほど小さなビーズであれば、髪飾りとして女性の髪に編み込むこともできただろう。「おそらくこのビーズは、本来は真っ白でかすかなツヤがあり、黒髪につければとても映えたことでしょう」

この若い女性の頭蓋骨周辺から見つかった小さな貝がらのビーズは、彼女の髪を飾っていたものかもしれない。(PHOTOGRAPH BY PHILIPPE FROESCH, VISUAL FORENSIC)

 この若い女性の近くからは、さらにふたつの墓が見つかっている。そのうちのひとつにはふたりの若い男性の遺骸が、2200個の石や貝のビーズと共に埋葬されていた。墓を調査したカナダ歴史博物館の生物人類学者ジェローム・チブルスキー氏によると、このふたりの男性には共通の特徴があり、双子だった可能性があるという。

 「ふたりにはそっくり同じ埋伏歯があり、頭蓋縫合線のパターンも同じです」とクラーク氏は言う。もう一方の墓に埋葬されていたのは幼児の遺骸で、骨にはレッド・オーカーで塗られた跡があった。

 族長一家が3700年前、どのようにしてこれほどの富を集めることができたのかはわからない。当時のセイリッシュ海岸沿いの住人たちは、魚を釣り、シカなどの動物を狩り、オモダカなどの炭水化物が豊富な根菜類を採集・栽培して暮らしていた。彼らが奴隷を所有するか、この時代特有の、複数の家族が共同で使う家に暮らしていたのであれば、あるいはこれほどの富を手にすることも可能だったかもしれない。

 クラーク氏は、族長一家が他の人々にとって非常に価値のある知識を有していたため、祝祭の折などにさまざまな贈り物を受け取ったのではないかと考えている。「この一家は儀式や霊的なことに関する特別な知識を持っていたために、非常に裕福だったのでしょう」

 カナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学の考古学者アンドリュー・マーティンデール氏は今回の研究には参加していないが、研究チームがシーシェルト族の長老たちと協力して、古代の族長一家の顔の復元を行ったことを高く評価している。

 「このプロジェクトでは互いを尊重し、力を合わせることによって、古代の人々の姿を復元しました。これは非常に重要なことだと私は考えます」

(文 Heather Pringle、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2017年7月5日付]

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