ナショジオ

ニュース

4000年前の高貴な族長一家 デジタル技術で顔を復元

日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/7/17

ナショナルジオグラフィック日本版

墓から見つかった骨や遺物を基に、はるか昔のカナダで暮らしていた人々の顔がデジタル技術によって蘇った。(PHOTOGRAPH BY PHILIPPE FROESCH, VISUAL FORENSIC)

 2010年、カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州のセイリッシュ海を見下ろす遺跡で、驚きの発見があった。古代の貝塚の採掘調査を行っていたトロント大学の研究者と先住のシーシェルト族の人々が、およそ3700年前に埋葬された族長の墓を見つけたのだ。族長の体は、重さが30キロ以上あるビーズの衣装に包まれており、付近には族長の家族の墓もあった。

 「ヨーロッパ人と接触を持つ前の北米で行われた埋葬としては、これは非常に手の込んだものと言えます」。発掘プロジェクトの責任者で、カナダ、サスカチュワン大学のテレンス・クラーク氏はそう語る。

 カナダ建国150周年の記念日にあたる2017年7月1日、ケベックのカナダ歴史博物館とブリティッシュ・コロンビア州のテムズ・スウィヤ博物館で、デジタル技術によって復元された族長とその親族たちの顔が初めて一般に公開された。

 生物人類学者とコンピューター生成画像(CGI)の専門家からなるチームが、シーシェルト族の長老たちの協力を得て作成したこの復元画像は、実に生き生きとして人間らしく、やや不気味に感じられるほどだ。「この画像を見た我々の部族の人間は、この人は私の叔父に似ているとか、あの人は誰それの奥さんに似ているなどと言っています」とシーシェルト族の部族評議員キース・ジュリアス氏は言う。

 この族長の墓を含む遺跡が発見されたきっかけは、バンクーバーの北西に位置するシーシェルト族の土地で、浸食された土手から貝がらや遺物が顔を出したことだった。これに気づいた地元の研究者らが、その後、再び現場を訪れた際に石のビーズをいくつか発見し、考古学者に本格的な調査を依頼した。

 浅い皿のような形状で、ところどころにレッド・オーカー(カナダの北西沿岸先住民が儀式に用いる顔料で、現在でも使用されている)のしみのある墓の中からは、50歳くらいの男性の骨が、脇腹を下にして体を丸め、海の入江の方角を向いた状態で寝かされていた。約35万個もの小さな石のビーズ(浴槽をいっぱいにするほどの量)を何列も平行につないで作った衣装が、彼の全身をすっかり覆っていた。

50歳前後で亡くなったこの族長は、墓の中で重さが30キロ以上あるビーズの衣服をまとっていた。これは彼が大きな富と権力を持っていたことを示唆している。(PHOTOGRAPH BY PHILIPPE FROESCH, VISUAL FORENSIC)

 これほど大量のビーズを手作業で作るには、途方もない時間がかかったに違いないとクラーク氏は言う。頁岩(けつがん)や泥岩のかけらからビーズを作るには、まずかけらを研磨して錠剤の半分ほどの大きさの円盤を作り、そこに穴を開けなくてはならない。数年前、カナダ、ビクトリア大学の考古学者ブライアン・トム氏が、頁岩と石器を使ってこのプロセスを再現したところ、たったひと粒のビーズを作るのに平均で13分かかったという。熟練のビーズ職人であれば、おそらくその倍の速さで作ることができただろう。しかしそれだけのスピードで作ったとしても、族長の衣装を完成させるには3万5000時間以上が必要だった計算になる。

ナショジオ新着記事

ALL CHANNEL