1万円超のイヤホン 盤石人気の「SE215」シリーズ
前回の「スポーツ向けイヤホン 人気上位は全て無線式」に続き、今回はe☆イヤホン秋葉原店に1万円を超える価格帯のイヤホンの売れ筋を取材した。同店広報の松田信行氏は「少し前までは、1万円超えは高級というイメージも強かったですが、最近は普通の価格帯と捉える人も多いですね。入門用に調べていったらこのクラスに行き着くことも普通にあるという感覚です」と語る。
それを踏まえて、最新ランキングを見ていこう。
1位●SE215m+ Special Edition、SHURE、1万2276円(税込み)
2016年9月に売り出されたSE215のバリエーションモデル。「SE215 Special Edition」と同じチューニングで、マイクを内蔵している。カラーはホワイトのみで、MMCXケーブルに対応。
2位●MA750、RHA、1万3020円(税込み)
ステンレス削り出しのハウジングを採用した、2013年12月発売のハイスペックモデル。ケーブルは耳掛けに向いたカーブを描いている。カラーはシルバー1色。リケーブルは非対応。
3位●HP-NHR21、radius、1万2510円(税込み)
「High-MFDチューニング」による解像感の高いハイレゾ対応をうたう2015年5月発売モデル。カラーバリエーションはレッドとブラックの2色で、リケーブルは非対応となる。
4位●ATH-LS70、オーディオテクニカ、1万3910円(税込み)
ひとつのユニット内に2つのドライバーを直列に配置した「デュアルD型」機構が特徴。2016年11月に発売されたモデルで、カラーは1色のみ。交換ケーブルはA2DCに対応する。
5位●HEM1、NuForce、1万2510円(税込み)
2017年3月に登場した、フルレンジBAドライバー搭載のコストパフォーマンスモデル。2pinリケーブルに対応し、カラーバリエーションはブラックとレッド、ブルーの3種類をそろえる。
SHUREの「SE215m+ Special Edition」と、RHAの「MA750」という以前からの人気モデルが上位に並び、国内メーカーのradiusが続く構図になっていた。その下にはオーディオテクニカやNuForceの新しいモデルも台頭しており、新しい動きも見逃せない。
[注]掲載している価格は2017年6月7日15:00時点のもの。日々変動しているので、参考程度に見ていただきたい。
・低中高域の解像感が高いのは基本。そこに上乗せされた個性を聞き比べよう
・試聴とともに装着感のチェックも忘れずに。有線と無線の違いを比べるのも重要
・リケーブルタイプが多く見つかるが、規格が複数あるので要チェック
スタンダード的存在の「SE215」
一番人気になったのは、SHUREの「SE215m+ Special Edition」。2011年発売の「SE215」の系譜にある定番シリーズに属する最新モデルだ。
「SE215は、とにかくスタンダードなイヤホンの代表格みたいな存在になっていますね。ワイヤレスイヤホンを探しに来た人が、とりあえずワイヤードの代表としてSE215で試聴する、といったことがよくありますから」
SE215シリーズは、標準の「SE215」(税込み9560円)や、アジア向けのチューニングを施した「SE215 Special Edition」(税込み1万1390円)なども併売されているが、そのなかでもSE215m+ Special Editionが明確に一番人気となっているそうだ。
「白いボディーがとくに女性に受けているのと、あとは内蔵マイクの存在ですね。いい音を楽しみつつ通話もこなせるという実用性の高さから選ぶ人も多いです」
続く2位は、英国メーカーのRHAから登場した「MA750」。削り出しのステンレスボディーにドライバーユニットを手作業で組み込んだモデルで、メーカー3年保証もついている。品質の高さから、2013年末の発売から長らく安定した人気を獲得しているという。
特に、ロック好きな人からの支持が厚い。「硬い音作りで、低音がピシッと締まって聴けるんですよね。上位のリケーブルモデル『CL750』(税込み1万5450円)や、下位の『S500』(税込み4550円)なども音作りの良さは共通していますが、売れ行きはダントツでMA750なんですよね」
ハイレゾ対応で人気の「HP-NHR21」
3位は、国内メーカーradiusの「HP-NHR21」。独自の「High-MFD System」による解像感が高く音圧のあるハイレゾ音源の表現力が評価されているという。
「これはハイレゾ対応を前面に出すだけはあるな、と思わせる音を出します。どの音域もクリアに出るので、不得意ジャンルがないタイプといえます。発売から1年かけてじわじわと評価を上げてきていますよ」
4位は、オーディオテクニカの「ATH-LS70」。8.8mm径のダイナミックドライバーを直列に2個並べた「デュアル・シンフォニック・ドライバー」構造を採用したモデルで、振動板のゆがみを抑えてクリアで均一な音が出せる特徴を持つ。
「透明感があって粒立ちがすごいんですよね。どちからといえば低音域重視の人に向いていますけれど、中音域と高音域もしっかり出るので、全部の音をていねいに楽しみたいという人にもお薦めしやすいですね」
BA型で1万円台前半の「HEM1」も勢いアリ!
5位は、NuForceの「HEM1」。2017年3月に登場した新製品だが、税込み1万2510円でフルレンジBA[注]ドライバーを搭載している割安感が話題を呼び、現在も衰え知らずの勢いで売れているという。
「4位のATH-LS70と拮抗した売れ行きが続いていますね。ハイレゾ対応のBAでここまで低価格というのはそうそうないですから。音的には、どちらかといえば中高音域が得意ですが、低音域もしっかり出ます。このあたりは本当好みの問題になってくるでしょうね」
[注]バランスドアーマチュアと呼ばれる方式。もう一つの方式であるダイナミック型と比べて繊細な音が出る傾向がある
はみ出し情報…夏場でも人気が出そうなヘッドホン
ヘッドホンの売れ行きは、暑い時期は総じて落ち込むといわれるが、そのなかでも今夏にヒットしそうなモデルもピックアップしてもらった。
松田氏が選んだのは、Skullcandyのワイヤレスモデル「Crusher Wireless S6CRW」。左右の独立したサブウーハーが低音に合わせて大きく振動する構造で、取材の価格は税込み2万1180円だった。
「音楽だけでなく映画や動画を楽しむのにもピッタリなんですよね。シーンの迫力を低音の振動で倍増して楽しめます。フル充電で約40時間使えて重量も約275gと、長く使うのにも向いています。屋外ではなく屋内用としてけっこう響くんじゃないかと期待しています」
1977年生まれ。建設業界と葬祭業界を経て2002年にライターへ転職し、テクニカル系の記事執筆と死の周辺の実情調査を進める。
[日経トレンディネット 2017年6月19日付の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。