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積立投資 定時定額、メンタルにも利点(窪田真之) 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト

2017/7/18

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「積み立て投資の特徴である『定時定額』はメリットが多い」

 私は25年間、日本株を運用するファンドマネジャーでした。年金・投資信託などいろいろなファンドを担当しましたが、その中で時々残念に思うことがありました。

 それは私が運用していた公募投信(日本株のアクティブ型ファンド)では、相場の高値圏で設定が増えるのに、安値圏ではほとんど設定がなかったことです。設定とは顧客の投信購入(資金流入)を受け、ファンドマネジャーが株券を買い付けることです。

 株は安いときに買って、高くなったときに売ると利益が得られるわけですが、公募投信では残念ながら、その逆でした。顧客である個人投資家の方々は、相場が高値圏のときは強気に、安値圏のときは弱気になりがちなためです。

 一方、うれしいこともありました。私が運用していたファンドがDC(確定拠出年金)の対象となり、多数の企業に採用していただけたことです。DCでは加入者は「定時定額」で投資することになるため、毎月、一定額の設定があります。そうすると、相場の高値圏でも、安値圏でも淡々と設定が入り続けるわけです。

■総悲観のときこそ投資チャンス

 過去を振り返ると、相場が大暴落して世の中が総悲観になっているときが絶好の投資チャンスとなっています。ファンドマネジャーはそんなときこそ、しっかりと投資を増やすべきでしょう。それができるのがDCのような定時定額の積み立て投資だと思います。

 ところで、定時定額には高値では買いを抑え、安値では買いを増やすというよく知られたメリットのほかにも、2つのメリットがあると私は考えています。

 (1)支出をコントロールする習慣が身に付く

 (2)株価の変動によるストレスから解放される

 まず(1)ですが、例えば、毎月1万円の投資を行うためにはその分、支出を絞らなければなりません。支出が収入を上回る状態では、積み立て投資はできません。つまり、積み立て投資をするためには支出が収入を下回るようにコントロールする習慣を身に付けなければならないのです。

 私はファンドマネジャーをやめてストラテジストとなってから、個人投資家の方から、いろいろな相談を受けるようになりました。一番、困る相談が以下のようなものです。「給料が減って生活費が足りなくなった。何かいい投資はないか?」

 減収分を投資で挽回するというのは、かなり無謀です。こうした発想では投資してもほぼ確実に失敗するでしょう。心の中で苦笑しながら私は、こう答えます。「まず、支出が収入の範囲に収まるように、支出を見直す必要があります。さらに、月々1000円でもいいので、積み立て投資をしていくことを目指したらいいと思います」と。

 次に(2)です。株式投資を行えば、どうしても株価が乱高下するリスクを負わなければなりません。特に相場が下がると気が気ではありませんが、淡々と行う積み立て投資ではストレスを減らすことができます。

■プロの投資家でも大きなストレス

 プロの投資家でも下がることで大きなストレスを感じると、冷静な判断ができなくなることがあります。自分のことは、自分がよくわかっていると思いがちですが、意外と自分のリスク許容度を正しく理解している人は多くないものです。

 考えるヒントとして、以下のグラフをご覧ください。これは、高リスク高リターンの投信Aと、低リスク低リターンの投信Bの基準価格の変動のイメージです。

 個人投資家の皆さんが4年間、使うあてのない余裕資金100万円を持っているとして、上記の投信Aと投信Bのどちらに投資したいでしょうか?

 投信Aは4年後に20%値上がりし、年率5%の運用利回りが得られます。一方、投信Bは4年後に5%の値上がりですから、年率1.25%の利回りです。

 どちらに投資すべきかは、皆さんのリスク許容度で決まります。年率5%のリターンの投信Aが、毎年5%着実に値上がりしていくファンドなら申し分ありません。ところが、3年後に元本割れのマイナス10%という試練が待ち受けています。ここでパニックになって売ってしまうようなら、あなたは投信Aに投資するのに十分なリスク許容度を備えていません。売らなくても毎日基準価格を見て、ため息をついて余計なストレスを抱えているようなら、投信Aはお勧めできません。

 十分なリスク許容度がなければ、投信Aに投資するのは諦め、投信Bを選んだ方がいいという結論になります。株だけでなく、債券などにも分散投資するバランス型ファンドには、投信Bのような値動きになるものもあります。

■途中の「試練」に翻弄されない

 もう一つの選択肢は、投信Aに毎月1万円など積み立てで投資していくことです。時間分散しながら投資していくことで、短期的な乱高下に耐えられる場合もあります。

 投信Aと書きましたが、私は日経平均株価のインデックスファンドをイメージしながらグラフをつくってみました。私は日経平均に投資すれば、配当金と値上がり益を合わせて、中期的に年率5%くらいのリターンが得られると考えています。

 ただ、途中でかなり意地悪な値動きをする可能性があります。リスクを負って、リターンを得ていくには、途中で待っている試練に翻弄されないようにする工夫が必要です。積み立て投資は、有力な解決方法になるでしょう。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。原則火曜日掲載で、楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジストの窪田真之氏とレオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏が交代で執筆します。
窪田真之
 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト。1961年生まれ。84年慶応義塾大学経済学部卒業後、住友銀行(当時)入行。99年大和住銀投信投資顧問日本株シニア・ファンドマネジャー。2014年楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト、15年所長。大和住銀では日本株運用歴25年のファンドマネジャーとして活躍した。

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