「4時間正社員」のストライプ 次の目標は残業5時間ストライプインターナショナル 石川康晴社長インタビュー(前編)

2017/7/13

白河 資生堂インパクトが意味するものは、2つあったと思います。1つは、育児をする女性だけに優しい制度をつくっても限界があるということです。特別扱いされたままでは、両立はできても、活躍に至らない。

同じ職場に労働時間の短い人と長い人が混在すると、それぞれが差別をしたり、自分の限界をつくってしまったりするということです。こういう精神的な影響がすごく大きいと感じます。

もう1つは「パパを雇っている会社も負担してくれ」ということですね。多分、平日の遅番や土日のシフトにはいる子育て中の社員は父親と交渉したと思うので。「今日は遅番だから、パパ早く帰って」と。

それらの点で、御社は今、時短勤務社員もその他の社員も、希望を持って活躍していけるような取り組みをどう構築しているのでしょう? しかも、それは、表面からはすごく見えにくくて、しかも成果がなかなか上がりにくいことです。

石川社長によると、同社は人手不足にまったく悩んでいないという

石川 まだ具体的には決まっていませんが、女性活躍という点でこれから進めようとしているアイデアがいくつかあります。

例えば、子育て中のママが、子どもが寝た後の夜8時以降、ノーメークでパジャマを着たまま仕事をできないか。そこで思いついたのが、ファッションeコマースのゴールデンタイムは、夜の9時から12時という3時間だということ。両者の時間は、ほぼ一致していますよね。

働きたいけど働けない。だけど、夜の空いた時間に、自宅でなら働ける。そんな女性たちに対して、新しい仕事をつくりたいと思っています。ネットワークをうまく使えば、自宅からお客様にアドバイスをすることも可能です。

もう一つは、IT(情報技術)をうまく活用できないかと考えています。例えば、キャリアの長い40歳のデザイナーが課長職に就いているとします。勤務時間を分析すると、クリエーティブな仕事が7割、エクセル入力のような事務的な仕事が3割を占めていたりします。この3割をAI(人工知能)などで削減できないかと議論しています。

白河 その分、クリエイティブな仕事に時間を使うことができますよね。

石川 それもありますし、残業時間を削減することもできます。

白河 御社は、ITに積極的に投資していますよね。ICタグを導入した話を聞いた時は衝撃を受けました。ICタグの導入は、小売り現場の残業の最も大きな要因になっている棚卸しを短時間でできるんでしたよね。

石川 理論的には1秒でできます。ただ、実際には調整や確認のために2時間ほどかかります。従来は24時間かかっていたことを考えますと、その削減効果は大きなものでした。

大事なのは「会社を魅力的にすること」

白河 対面での接客が必要な業種は、どこも人材の奪い合いです。特に、夜まで働ける人や女性は貴重な人材です。企業は人手が足らないと嘆くだけではなくて、積極的に対策を講じなければなりませんよね。

石川 今の学生たちはITリテラシーが高いですから、すぐに会社の評判を調べて、リアルな状況を知ることができます。

企業が労働環境を改善したとしても、2年間くらいは過去の情報がネット上で広まり続けていますから、その間は人が集まりません。逆に言えば、改革後3年目から人が集まり始めると感じています。既存社員たちが、就活サイトなどにいい評価を書いてくれるようになるからです。

流通のみならず、どの業種においても、学生は良い会社を探しているだけだと思います。労働環境が悪いとされている流通業でも、働きやすい会社にすれば、ちゃんと新卒は集まります。ちなみに、当社の人員充足率は104%。18年度新卒のエントリー状況は、前年比約150%です。

白河 最近、「内定者のうち7割から入社を断られた」という中小企業の声を耳にする機会があり、私はこれが中小企業の現実だなと思いました。でも、御社は人員に余裕があるのですね。

石川 内定辞退率も急激に下がっています。これだけ学生が売り手市場になってきて、なおかつ大手企業主義が強まっている中で、当社へのエントリーが増えているのは、少し不思議な状況です。

白河 長年取り組まれたことの結果ですね。もともと、学生さんに人気の高いブランドという要素は大きいと思いますが。

石川 ただ、新卒も中途も、「入社したい」という理由は、残業時間が少ないからとか、様々な優遇制度があるからというものではありません。やっぱり、会社がユニークだからだと思います。いくら良い制度がたくさんあっても、団塊世代の思想や男性主義が強い保守的な組織は、学生はなかなか入りたいと思わないのではないでしょうか。

当社の場合、LGBT(性的少数者)パレードに参加したり、インフルエンサーとコラボして商品開発をしたり、若い人たちの心に刺さることも同時にやっています。人事制度、稼ぐ力、ユニーク性、これらが一緒にならなければ、いくら給料を上げても、休暇を増やしても、人が集まりにくいのではないかと思います。

(来週公開の後編に続きます。時短勤務制度の定着、残業時間の削減など、実効性を上げるためにどのような運用をしているのか、女性社員同士の不満にどう対処するかなど、さらに具体的なお話をうかがっていきます。)

白河桃子
少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「婚活時代」(山田昌弘共著)、「妊活バイブル」(講談社新書)、「産むと働くの教科書」(講談社)など。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。7月16日に「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)が発売。

(ライター 森脇早絵)

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