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「4時間正社員」のストライプ 次の目標は残業5時間

ストライプインターナショナル 石川康晴社長インタビュー(前編)

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NIKKEI STYLE

女性の労働力をあてにした企業は人手不足に悩んでいます。そんな中、いち早く「短時間正社員」に取り組んだのが、若い女性に人気のアパレルブランド「アース ミュージック&エコロジー」などを展開するストライプインターナショナル。「4時間正社員、6時間正社員」という多様な正社員制度で注目されました。同社は残業の大幅削減、短時間勤務制度や様々な休暇制度の導入などで成果を上げ、新制度を浸透させた後の「働き方改革・第2フェーズ」に移行しつつあるそうです。

時短社員の増加による現場の不満をどう解決するか。本当に女性が活躍するためには何をすればいいのか。人手不足から脱却するためには何が必要か。改革の未来を先取りするストライプの石川康晴社長に詳しくお聞きしました。

制度を導入しても、すぐには効果が出ない

白河(敬称略、以下同) ストライプのように、全国に多数の店舗を展開し、女性社員(特にライフイベント前の若い女性社員)をたくさん必要とする会社は、どこも人手不足の危機に陥っています。さらには、女性活躍に優しい会社ほど、現場から不満が噴出して「資生堂インパクト(育児中の短時間勤務社員は遅番や土日の勤務に入らないという勤務体系の習慣の変更)」のようなことが起こってしまいます。人手不足問題の一つの解となるのが、ストライプの「短時間勤務正社員」という試みだったと思うのです。そこに至るまでの道のりを教えてください。

石川 09年から11年にかけて会社が急成長する局面がありました。その頃、当社はまさに「モーレツ文化」で、夜中まで残業するのが当たり前になっていたのです。

このままでは会社が持たないということに気付き、短時間勤務制度や様々な休暇制度を作ったり、残業時間を大幅に圧縮させたりという改革を積極的に進めていきました。

現在、時短勤務制度を利用している正社員は、全体の15%。当社は全国に約900店舗展開しており、大体2~3店舗に1人は時短勤務社員がいる状況です。

白河 2~3店舗に1人とは、かなりの数ですよね。

石川 店舗での時短勤務制度が成功した理由は何かというと、妊娠しても退職しない「ママ社員」たちが社内にしっかり残り、これから結婚や出産をする社員たちの前例になってくれたことが大きいと思います。ママになっても会社で働き続けるためにアドバイスできる人が周辺にいるかどうかが、非常に大事なことだったんです。

ただ、「会社に残ってもらう」「前例になってもらう」と言葉で言うのは簡単ですが、我々も制度を導入してから最初の3~4年はうまくいきませんでした。

当社の時短勤務制度は、4時間、5時間、6時間から状況に応じて勤務時間が選択可能です。しかし、トップがいくら「この制度を取得してもいい」と言っても、メディアに「こういう制度がある」と公表しても、妊娠した女性社員たちは「どうせ取れないよね」「辞めなきゃいけないよね」と考えてしまって、結局何人も辞めていくというジレンマ期間があったんです。

白河 多くの企業は、働き方改革を始めてから1~3年間はそういった混乱期があるという話を聞きます。

石川 そうですね。社長や役員たちが、「その制度を利用してもいいんだよ」と根気強くアナウンスし続け、社員たちが「実際に利用した」という背中をちゃんとみんなに見せてくれれば、既婚者予備軍も結婚・出産後の働き方のイメージがつきやすくなります。

この制度が本当に社内に浸透しだしたのが、導入の11年から3年ほどたった頃でした。制度を導入しても、すぐにはうまくいかないのです。

白河 トップが丁寧にアナウンスしても、それだけ時間がかかるんですね。

石川 「制度」と「運営の質」はワンセットです。いくら良い制度であっても、運営の質が悪ければ、定着に時間がかかります。

短時間勤務正社員制度に、応募者が殺到した

白河 特に地方は人手不足が深刻です。その一方で、ブランド力のある企業に人が集中する傾向があると感じます。短時間勤務制度を導入したことで、地方で新たに入社する人が増えましたか。

石川 増えました。ただ、逆に増えすぎてしまって、4時間、6時間の正社員での入社希望者が我々の採用キャパシティーを超えてきたんです。

白河 やっぱり、その時間帯で働きたい希望者はたくさんいるんですね。

石川 ええ、圧倒的な数でした。そして1年半ほど前に、短時間正社員の採用を凍結しました。資生堂インパクトではありませんが、時短勤務での社員が増えすぎてしまい、フルタイムで働く社員からの不平不満が出てきそうな雰囲気が高まったタイミングでした。

白河 私は、それは必然だと思います。短時間勤務にいち早く取り組まれたので、次のフェーズに進んでいかれるのは当然のことです。

石川 ええ、当社が短時間社員の採用を凍結したくらいのタイミングで、他の会社でも短時間社員の門扉が開きだした感じでした。

今、当社が最も注力しているのは、残業時間を減らすことです。僕は、これが働き方改革の「万能薬」であると考えています。当社のここ1~2年の平均残業時間は、本部も店舗も全て平均すると、月9時間です。

白河 すごく短いですね!

石川 そのように言われることが多いのですが、僕はそう思っていないんです。最終的には、月5時間まで削減しようとしています。

直近の平均残業時間は、短い月で6時間程度まで減らすことができました。なぜ、月9時間から6時間まで減らすことができたかといいますと、政府が推進しているプレミアムフライデーをうまく使ったからです。

当社には約3500人の社員がいて、本社・本部の職員はそのうちの1割にあたる300人強。ここがプレミアムフライデーを利用するのは簡単ですが、問題は、残りの約3000人の店舗職員です。

店舗職員が一斉にプレミアムフライデーで早く帰ることはできません。そこで、自店の売上予算を見ながら、「この日は余裕があるだろう」という日を選んでもらい、「プレミアム早番・遅番」という形で、月に一度だけ、3時間遅く来るか、3 時間早く帰るという形をとることにしました。

白河 確かにプレミアムフライデーに、店舗が人員不足だったら困りますよね。そこは閑散日を選んでやっているということですね。

石川 そうです。ブランドや立地によって、本当にバラバラな取り方をしています。流通の現場の中で、プレミアムフライデーの概念を導入しているというのは、面白い事例だと思います。

白河 プレミアムフライデーで、会社に勤務している人は早く帰ることができますけど、飲食店や小売店の人はどうするんだという議論は必ずありますよね。

石川 BtoBの会社ですと、みんな一緒に早い時間に帰ることは可能でしょうが、BtoCの会社の場合はそうはいきません。Bに関連する職員はプレミアムフライデーをそのままやって、Cに関連する職員は、タイミングを計って月に一度とるという「セット取得」が、これからの小売業の事例の一つになっていくのではないかと思います。

白河 資生堂インパクトが意味するものは、2つあったと思います。1つは、育児をする女性だけに優しい制度をつくっても限界があるということです。特別扱いされたままでは、両立はできても、活躍に至らない。

同じ職場に労働時間の短い人と長い人が混在すると、それぞれが差別をしたり、自分の限界をつくってしまったりするということです。こういう精神的な影響がすごく大きいと感じます。

もう1つは「パパを雇っている会社も負担してくれ」ということですね。多分、平日の遅番や土日のシフトにはいる子育て中の社員は父親と交渉したと思うので。「今日は遅番だから、パパ早く帰って」と。

それらの点で、御社は今、時短勤務社員もその他の社員も、希望を持って活躍していけるような取り組みをどう構築しているのでしょう? しかも、それは、表面からはすごく見えにくくて、しかも成果がなかなか上がりにくいことです。

石川 まだ具体的には決まっていませんが、女性活躍という点でこれから進めようとしているアイデアがいくつかあります。

例えば、子育て中のママが、子どもが寝た後の夜8時以降、ノーメークでパジャマを着たまま仕事をできないか。そこで思いついたのが、ファッションeコマースのゴールデンタイムは、夜の9時から12時という3時間だということ。両者の時間は、ほぼ一致していますよね。

働きたいけど働けない。だけど、夜の空いた時間に、自宅でなら働ける。そんな女性たちに対して、新しい仕事をつくりたいと思っています。ネットワークをうまく使えば、自宅からお客様にアドバイスをすることも可能です。

もう一つは、IT(情報技術)をうまく活用できないかと考えています。例えば、キャリアの長い40歳のデザイナーが課長職に就いているとします。勤務時間を分析すると、クリエーティブな仕事が7割、エクセル入力のような事務的な仕事が3割を占めていたりします。この3割をAI(人工知能)などで削減できないかと議論しています。

白河 その分、クリエイティブな仕事に時間を使うことができますよね。

石川 それもありますし、残業時間を削減することもできます。

白河 御社は、ITに積極的に投資していますよね。ICタグを導入した話を聞いた時は衝撃を受けました。ICタグの導入は、小売り現場の残業の最も大きな要因になっている棚卸しを短時間でできるんでしたよね。

石川 理論的には1秒でできます。ただ、実際には調整や確認のために2時間ほどかかります。従来は24時間かかっていたことを考えますと、その削減効果は大きなものでした。

大事なのは「会社を魅力的にすること」

白河 対面での接客が必要な業種は、どこも人材の奪い合いです。特に、夜まで働ける人や女性は貴重な人材です。企業は人手が足らないと嘆くだけではなくて、積極的に対策を講じなければなりませんよね。

石川 今の学生たちはITリテラシーが高いですから、すぐに会社の評判を調べて、リアルな状況を知ることができます。

企業が労働環境を改善したとしても、2年間くらいは過去の情報がネット上で広まり続けていますから、その間は人が集まりません。逆に言えば、改革後3年目から人が集まり始めると感じています。既存社員たちが、就活サイトなどにいい評価を書いてくれるようになるからです。

流通のみならず、どの業種においても、学生は良い会社を探しているだけだと思います。労働環境が悪いとされている流通業でも、働きやすい会社にすれば、ちゃんと新卒は集まります。ちなみに、当社の人員充足率は104%。18年度新卒のエントリー状況は、前年比約150%です。

白河 最近、「内定者のうち7割から入社を断られた」という中小企業の声を耳にする機会があり、私はこれが中小企業の現実だなと思いました。でも、御社は人員に余裕があるのですね。

石川 内定辞退率も急激に下がっています。これだけ学生が売り手市場になってきて、なおかつ大手企業主義が強まっている中で、当社へのエントリーが増えているのは、少し不思議な状況です。

白河 長年取り組まれたことの結果ですね。もともと、学生さんに人気の高いブランドという要素は大きいと思いますが。

石川 ただ、新卒も中途も、「入社したい」という理由は、残業時間が少ないからとか、様々な優遇制度があるからというものではありません。やっぱり、会社がユニークだからだと思います。いくら良い制度がたくさんあっても、団塊世代の思想や男性主義が強い保守的な組織は、学生はなかなか入りたいと思わないのではないでしょうか。

当社の場合、LGBT(性的少数者)パレードに参加したり、インフルエンサーとコラボして商品開発をしたり、若い人たちの心に刺さることも同時にやっています。人事制度、稼ぐ力、ユニーク性、これらが一緒にならなければ、いくら給料を上げても、休暇を増やしても、人が集まりにくいのではないかと思います。

(来週公開の後編に続きます。時短勤務制度の定着、残業時間の削減など、実効性を上げるためにどのような運用をしているのか、女性社員同士の不満にどう対処するかなど、さらに具体的なお話をうかがっていきます。)

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「婚活時代」(山田昌弘共著)、「妊活バイブル」(講談社新書)、「産むと働くの教科書」(講談社)など。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。7月16日に「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)が発売。

(ライター 森脇早絵)

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