日本人は信頼できない プレゼンで避けたい3つの英語
デイビッド・セイン「影の英語」(36)人前でスピーチする
ひとつの言葉は様々な顔を持っています。日本人の言葉が意図していない意味合いで伝わることもあります。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が使いがちな言葉から「影にある意味」を紹介します。今回は、スピーチやプレゼン前の緊張の場面です。
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人によって「度胸」が収まった袋の大小は違うようです。「あがり症」の人は、見知った顔ばかり並ぶ小さな会場でも、スピーチやプレゼンをするときには胸がドキドキ、自分なりのパフォーマンスができないものです。おまけに英語が不得意と来ている……。さて、このような場合は何と言えばよいでしょうか。
正しい訳:今すごく神経質になっています。
影の意味:自信はまったくありません。
「自信がない」という言葉にはネガティブな響きが大きく、このような人にはなかなか信頼を置くことはできそうもありません。ビジネスでは「信頼」が大切です。
正しい訳:英語が下手で申し訳ありません。
影の意味:私の英語が下手で通じなかったかもしれません。
これでは「英語についてはもう諦めているんです」と聞こえかねません。あくまでも頑張っていくという態勢を見せることがスマートでしょう。
正しい訳:このトピックについてはあまりよく分かっていませんが(とにかくやってみます)。
影の意味:実はこのトピックにはあまり関心はないんです。
トピックによってはすべて把握することができないこともあります。しかし、最初から知らないと言うと、自分の知識不足を補うために最善の努力をしていないと伝わる恐れがあります。
これなら「影の意味」はない!
皆様にお話しできる機会を得まして、大変感謝しております。
とにかく前向きな気持ちで臨むことを伝えることで、相手も耳を傾ける気持ちを持ってくれることでしょう。
何か不明点がございましたら、お知らせください。分かりやすく説明するようにいたします。
このように伝えることで、あなたが相手の疑問点などを受け入れる姿勢があることを知らせることができます。そこで双方向のよい時間が生まれるはずです。
この複雑な問題につきまして、大切なお知らせがあります。
むずかしい問題であることも事前に分かってもらうことができますし、同時にこれからあなたが述べることが重要であることを伝えることもできます。
あなたが知らない本当の使い方―― nervous
nervous は「神経に関する」の意味で「神経質な、ビクビクした、怖がって」などの意味を持ちます。「ナーバスになる」は日本語にもなっているので、ほとんどの日本人は意味を理解しているはずですが、少し幅広くnervousを知っておきましょう。
・It was so stressful I thought I was going to have a nervous breakdown. 非常にストレスが強かったので、ノイローゼになるかと思いました。
*It was so stressful (that) …の構文「… なので、~になる」でthatが省略されています。nervous breakdownは「神経の崩壊」すなわち、ノイローゼ、重度のストレスなどの心(精神)の病。
・When George made his insensitive comment, there was nervous laughter. ジョージが配慮に欠けたコメントをしたときには、意味のない困惑した笑いが起きました。
*nervous laughter:困惑したりしたときの気まずい笑い、ごまかすような笑い
・Before his speech, he was a nervous wreck. スピーチの前、彼は精神的に参っていました。
*wreckは「倒壊、難破船」などの意味があり、nervous wreck であれば「精神的に参っている人」の意味になります。
・I've never seen Linda get nervous like that before. 以前リンダがあのように神経質になっているのを見たことがありません。
*ということは、現在、いまだかつて見たことないほど神経質になっている、ということになります。
*get nervous:神経質になる、イライラする、硬くなる
・He lacked confidence, so he spoke in a nervous tone of voice. 彼は自信がなかったので、神経質な口調で話しました。
*in a nervous tone of voice:神経質な口調で = with a nervous tone (of voice)
・I felt a little nervous about talking to the lawyer. 弁護士と話すことには少々緊張しました。
*feel a little nervous about …ing:~するのに少々緊張する
・You seem a bit nervous. Is everything okay? 少し緊張しているようですけど、すべて順調ですか?
*seem a little nervous:少々緊張しているように見える
*Is everything okay? は神経質そうな人や、非常に疲れている人などに対して「大丈夫ですか? すべて順調ですか?」のようにかける言葉です。
・You have a lot of nerve to say that. それを言うならいい度胸をしていますね。
*have a lot of nerve: いい度胸をしている、神経が図太い
・Steve has nerves of steel. Nothing bothers him. スティーブは鋼の神経をしています。彼を悩ますものは何もありません。
*have nerves of steel: 肝が据わっている、豪胆である
・I'm having a war of nerves with one of my coworkers. 私は今、同僚のひとりと神経戦を戦っています。
* a war / battle of nerves:神経戦
・Don't talk about his divorce. That hits a raw nerve with him. 彼の離婚について話しちゃだめだよ。彼の泣き所に触れることになっちゃうよ。
*touch (strike) a (raw) nerve:人の泣き所や弱点に触れる、痛いところをつく
ドキドキする場面は様々です。
例えばI have butterflies in my stomach.という表現があります。「胃の中に蝶々が飛んでいる」は「ザワザワしている」すなわち「緊張して落ち着かない」の意味になります。I have butterflies in my stomach, but I'm also excited about talking to you today.「緊張していますけど、同時に今日お話ができると思ってわくわくしています」。これは前向きな表現になります。
Have butterflies in my stomach = have stage fright 「あがる、緊張する、硬くなる」こと。
日本語でも「心臓が早鐘のように打つ」という表現があるように英語でもMy heart's beating fast. という言い回しがあります。
Whenever I see my boss, my heart starts beating fast.「上司に会うといつも、心臓が早鐘のように打ちます」
I must be in love with Alice. Whenever I see her, my heart starts beating fast.「アリスに恋をしているのかもしれない。彼女に会うといつも、胸がドキドキし始めてします」
同じドキドキでも、怖い上司に会うとき、愛しい彼女に会うときでは気持ちがガラッと違うわけです。
I'm thrilled. なら「ハラハラ、わくわくする」
I'm thrilled to be able to go to Europe on business.「出張でヨーロッパに行けるなんてわくわくします」
You can and you will!
: D セイン
※デイビッド・セインの「ビジネス英語・今日の一場面」は木曜更新です。次回は7月20日の予定です。
米国出身、20数年前に来日。 翻訳、通訳、執筆、英語学校経営など活動は多岐にわたる。企業や学校の人気セミナー講師。英語関連の出版物の企画・編集を手掛けるAtoZ(http://www.atozenglish.jp)・AtoZ 英語学校代表。