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障害者が憂鬱な梅雨 車椅子で傘させず、音に戸惑いも マセソン美季さんのパラフレーズ

2017/7/14 日本経済新聞 朝刊

 パラリンピアンの河合純一さんの話を聞いて、子どもの頃に大好きだったハメハメハ大王の歌を思い出した。「風が吹いたら遅刻して、雨が降ったらお休みで」という歌詞があった。障害があると、梅雨や台風の季節は一層憂鬱だ。

 視覚障害者の河合さんは白杖(はくじょう)を使って歩く。通い慣れた道でさえ、どこに水たまりができているかわからないので避けられず、思い切り足を踏み入れることがあるそうだ。だから防水の革靴がとても助かる、と。雨が傘に落ちる音や路面の水を車が散らしていく音で、いつもと同じ場所が異空間に感じられることすらあるという。路面も滑りやすくなるし、植え込みが衣服にあたってずぶぬれになる。また、風が強い日も、耳からの情報が極端に変わると聞いた。

 私も雨の日は、基本的に好きではない。車椅子をこぎながら上手に傘をさす方法が見つからないからだ。平たんに見える歩道でも、どちらかに傾いていることがあるし、若干でも傾斜がついている時は両手でハンドリム(車椅子をこぐ時に持つ輪っかの部分)を押さえる必要があるので、片手で傘を持ち続けるわけにはいかない。

 かなり前になるが、車椅子に傘を固定する器具のようなものを購入して、「これで大丈夫!」と喜んだのもつかの間、風にあおられ、見事に転倒したことがあった。転ぶよりはぬれた方がいいと、結局使わなくなった。雨が激しいときはタクシーに乗りたいが、そんな時は空車も少ないし、空車の車両に素通りされる頻度も高くなる。

 河合さんも私も共通して感じているのは、傘をさすと人は周囲に注意を向けることが少なくなるということ。河合さんは顔に傘をぶつけられたことがあったし、私の場合は電車の中で他人の傘のしずくでずぶぬれになったことがあった。先端部で突かれることもある傘は、結構危険だ。

 「でも特別なシチュエーションでは雨が好きだった」と河合さん。それはデート中に1本の傘で雨をしのぐこと。もちろん女性と親密になれるからで、そんな時だけ、雨さまさま。

マセソン美季
 1973年生まれ。大学1年時に交通事故で車いす生活に。98年長野パラリンピックのアイススレッジスピードレースで金メダル3個、銀メダル1個を獲得。カナダのアイススレッジホッケー選手と結婚し、カナダ在住。2016年から日本財団パラリンピックサポートセンター勤務。

[日本経済新聞朝刊2017年7月13日付]

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