会社員も副業の時代 副収入にかかる税金の扱いは?所得20万円超なら確定申告が必要

2017/7/16

副業に関心を持つ会社員が増えている。企業では残業時間を削減したり副業を容認したりする動きが進む。会社員が副収入を得る際に知っておきたい税金や留意点をまとめた。

IT(情報技術)企業に勤める中村龍太さん(53)は週末になると農業にいそしむ。千葉県の畑でニンジンなどを育て、「生産性をいかに上げるか仲間と考えるのが楽しい」。中村さんの勤務先は副業を「仕事の幅を広げる」と積極的にとらえ容認している。

働き方改革で退社時間を繰り上げる動きも相次ぎ、空いた時間を副業に回す人も増えている。まずは所得税の基本について押さえておこう。

まず所得区分を確認

給与所得者は勤務先が従業員に代わって年末調整し、所得税を給与天引きの形で納めている。しかし、副業をする人は収入から必要経費を引いた所得金額が20万円を超えたら確定申告が必要になる。マイナンバーの導入で税務署は申告漏れをより把握しやすくなっている。無申告のまま放置していると追加の税負担が生じる可能性がある。

次に確認したいのが自分の副業がどの所得区分に属するかだ。アルバイトで従業員として働くなら「給与所得」、不動産で賃貸収入を得るなら「不動産所得」になる。いずれも本業の給与所得と合わせた総合課税となる。動画投稿で広告収入を得る「ユーチューバー」やアフィリエイト広告、フリマなどの収入は「大抵の場合、雑所得に区分される」(税理士の柴原一氏)。

一方、副業であっても人材・設備などをそろえて本格的に取り組み、継続的に収益が見込めたり職業として認知されたりしていれば「事業所得」となる。赤字の場合、給与所得と損益通算して所得税額を減らすことができる。

住民税で会社に知られる?

注意が必要なのは住民税だ。所得税は確定申告をした結果、源泉徴収された税額より多くなる場合は直接、税務署に納付すればよいが、住民税については会社に副収入を知られる可能性があるのだ。

住民税は前年分の所得情報を基に3~5月ごろ、市区町村が副業収入を含んだ住民税額を決定し、納税者に通知する。住民税通知書には自宅に届く「普通徴収(自分で納付)」と、会社に届く「特別徴収(給与から差し引き)」の2種類がある。

副業が給与所得の場合、税法上は特別徴収と決まっていて、自治体は特別徴収の徹底を進めている。副業収入を含めた住民税額が会社に届くことによって副業が会社に伝わる可能性を覚悟しよう。

事業所得、雑所得などであれば確定申告書の「自分で納付」の欄に丸印を付けておけば住民税通知書が自宅に届く。ただ、「まれに会社に届くことがあるので、心配なら4月中旬から下旬に自治体に電話で確認したほうがいい」(中屋達朗税理士)。

副業支援のNPO「二枚目の名刺」の調査によると、今年1~2月時点で62%の企業が副業を禁止している。「本業に専念してほしい」「悪影響が出る」などが理由だ。

まず、勤務先の就業規則を確認しよう。上司などに副業を知られたくないという人は少なくないだろうが、規則があるのに無届けだと「場合によっては就業規則違反で処罰の対象になる」(社会保険労務士の池田直子氏)。

また、副業で労働時間が増え、健康を害しては元も子もない。「二枚目の名刺」の広優樹代表は「副業はやりがいを感じ元気にやることが大切」と話す。

(南毅)

[日本経済新聞朝刊2017年7月8日付]