旅行・レジャー

日本の歩き方

地域活性化へのペダル 自転車の旅が町ひらく

2017/7/8

 自転車で旅を楽しむ人を呼び込み、町づくりに生かす試みが広がっている。自転車の旅は徒歩よりも遠くへ、クルマよりゆっくり。そんな特徴を利用して地域の魅力を伝えようと、ツアーイベントが活況だ。さらに日常的にサイクリストを受け入れる態勢が整えば、大きな人の流れが生まれる可能性もある。好調なスポーツ自転車の販売が後押しし、地方の町も追い風に乗る。

■地元特産を満喫

「豪華すぎやわ」。5月、穏やかな瀬戸内海を眺めながら小豆島を一周するイベントが開かれた。コース途中で待っていたのは特産の和牛やハモ料理など。目玉は無人島でのバーベキューだ。主催は香川県土庄町。企画したのは、地域おこし協力隊の須藤渚さん(32)。役場の仲間や住民らの協力も得た。

 参加者は20代から60代の17人。走行距離は約65キロでアップダウンの多い中級者向けのコースだ。自転車歴10年の横内雄一郎さん(47)は、大阪府から夫婦で参加。「景色も料理も人も最高。おもてなしに感謝」と満足そう。

 都会からUターンした須藤さんが伝えたかったのは、ありのままの島の魅力だ。ツアーの様子を交流サイト(SNS)で発信すると、多くの島民からも「いいね」。参加者だけでなく地元の心もつかむ。目指すは世界のサイクリストが集まる島だ。

■「宝」の再発見

 6月、東京都内で「自転車まちづくり」に取り組む各地のリーダーが集まった。自転車部品大手のシマノが開催する勉強会で、今年は全国から22の自治体を含む53団体が参加。地域資源の生かし方や課題について熱い議論となった。

 「みずから自転車に乗ることが大事」。参加者の一人、岡山県真庭市観光振興室の石賀義久さん(38)は、仲間とのコースづくりからスタート。それまでのクルマ生活では気づかなかった地元の「宝」を次々と発見する。

 山間にある同市でも昨年からツアーを企画、6月には地元在住のフランス人が、田舎の魅力を案内する「散走ツアー」を開催した。参加した石原綾さん(29)は、「小さなお堂や田舎道がいい。人との出会いで町を身近に感じた」と笑顔だ。今後もテーマを発掘しイベントを計画する。

■持続性が大切

 広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ「しまなみ海道」は、今や「サイクリストの聖地」。地元のNPO法人「シクロツーリズムしまなみ」代表理事の山本優子さん(43)は、「一過性のイベントだけではなく、住民を巻き込んだ持続的な取り組みが重要」と説く。

 数千人集める大イベントより、毎日10人が訪れてくれる町づくり。当地では住民が水、トイレ、情報を提供し、自然な会話が生まれる「サイクルオアシス」という仕組みが実を結ぶ。2015年度の推計で年間約32万6千人(尾道市観光課)が訪れた。この10年で日常の風景が一変した。

 自転車の旅を選ぶ人は、スローな地方の暮らしそのものに魅力を感じる傾向がある。山本さんは「交流を重ね地元の人が元気になることが本当の地域振興」と力を込める。

 5月に自転車活用推進法が施行され、専用道の整備やコースの広がりにも期待が高まる。国や地方、そして民間の取り組みが原動力。それぞれのギアがかみ合えば、日本のサイクルツーリズムがぐんと加速する。

 スポーツ自転車は軽快な走行性と、女性でも片手で持ち上がる軽さが特徴。「輪行袋」と呼ばれる専用のバッグなどに入れれば、鉄道や飛行機にも積むことができる。
 販売は堅調で、大手の「あさひ」では、スポーツ自転車の売り上げは過去3期連続で10%以上の伸びだ。また専門店の「ワイズロード」によると、高速走行が可能でレースなどにも使用するロードバイクの売れ筋は20万~30万円ほど。中心購入層は40~50代。楽しみ方が分かってくると、より高価格のものに買い替える人も。
 高価格なスポーツ自転車の人気に伴い、「自転車購入ローン」の利用者も増えている。2010年にスルガ銀行が始め、福岡銀行、愛媛銀行、栃木信金などにも取り扱いが広がっている。
 また万一の事故に備えた保険も充実する。個人賠償補償が自動車保険並みに高額設定されたものや、ロードサービスを付帯した商品も出てきている。

(小園雅之)

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