「就職うつ」にご用心 SNS社会はいい子ほど危うい精神科医の和田秀樹・国際医療福祉大学大学院教授に聞く

精神科医の和田秀樹・国際医療福祉大学大学院教授

精神科医の和田秀樹・国際医療福祉大学大学院教授は、「さきほど、ある新入社員のうつのカウンセリングの依頼を受けたところですが、今の若い人のうつには3つの要因があると思います」という。和田氏は、灘高校を経て東大理科3類に入学して医師になったが、受験アドバイザーとしても知られ、若年層の行動パターンにも詳しい。

推薦入試、いい子でいないと

1つ目はストレス耐性の問題だ。「現在の20代は激しい競争にさらされて育っていない。小学校の運動会で徒競走の順位をつけなくなったとか、中学高校では成績の順番を公表しないようにしているとか。子供をきずつけないという教育の結果、以前よりストレスに弱くなっている、それがまず前提にあります」と和田氏は話す。

次に「いい子ちゃん症候群」がまん延しているのではないかと和田氏は指摘する。常に社会からいい子で見られたいと思う若者が増えているというのだ。その傾向を促した一因は新たな入試の形態にある。「かつてはすべての入試がペーパーテストの一発勝負だった。高1や高2の頃は授業をさぼって、遊んでいても入試で結果を出せばいいという生徒もたくさんいた。しかし、推薦入試とか、AO入試が増えてきた。そうなると高校3年間ずっと優等生でいないといけなくなる。相手にどう思われるか、『いい子』に見られないという心理が働きがちになります」という。

SNS社会も「いい子ちゃん症候群」を助長しているという。LINEやフェイスブックなどが普及し、「つながっている友達はたくさんいる。だが、本音で話せる真の友人は何人いるのでしょうか。本当の友人というのは、自分の汚いところを見せられる相手です。本音で話せる、つきあえる相手がいれば、うつになる可能性はすごく下がります」と和田氏は話す。

最後に「日本人は結果以上にプロセスを重視するまじめな人が多い。これもうつになる要因の一つといえるでしょう。例えば一流高校から東大を卒業して官僚を経て政治家になるとか。エリート街道をひた走ることにばかりこだわる人が少なくない。そんな人はそのプロセスのどこかで挫折するともう修正がきかない。はみ出すことが怖いという人が多いですね」と語る。

若者はカウセリング療法で

うつの治療法にはどんな処方があるのだろうか。和田氏は「若い人は『新型うつ』と呼ばれるうつが多く、薬療法は副作用のリスクがかえって高まります。カウンセリング療法が主体です」という。

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