東京パラの「追い風続かない」 補助金依存から脱却をブラインドサッカー協会・松崎事務局長に聞く(下)

スポーツイノベイターズOnline

障害者スポーツのなかで、いち早く試合の有料化を進めているが、収益源の柱にするのは難しいという(2016年の日本選手権、東京都調布市)
障害者スポーツのなかで、いち早く試合の有料化を進めているが、収益源の柱にするのは難しいという(2016年の日本選手権、東京都調布市)

視覚障害を持った選手がプレーする5人制のサッカー、ブラインドサッカー。日本でこの競技を統括するNPO法人、日本ブラインドサッカー協会はほかの障害者スポーツでは例をみない自立した運営で注目を集める。「混ざり合う社会の実現」というビジョンを掲げ、賛同する企業から協賛を得るほか、試合の有料化も進める。背景には、2020年の東京パラリンピックが終わった後の補助金の減少に備えるという意味合いもある。前編(「『自立してこその普及』 障害者サッカーが挑む新常識」)に続き、同協会の松崎英吾事務局長(37)に語ってもらった。(聞き手・構成は久我智也=ライター)

日本ブラインドサッカー協会事務局長の松崎英吾氏

――企業からの協賛には、どう取り組んでいますか。

「かつては自分たちがどういう価値を企業側に提供できるかをきちんと説明できておらず、『日本代表は頑張っているので応援してください』『遠征費が足りないので協力してください』と言って企業を回っていました。それでは企業側も協力することはできません。実際、08年ごろは200社ほどにアプローチしても、アポイントを取れるのは3社ほど。そのうちの2社は1回お会いしただけで終わってしまい、残りの1社はただお茶を飲む友達のようになってしまいました(笑)」

「でも2009年に『視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現する』という明確なビジョンを掲げてからは、日本代表が活躍することや、小学校や企業向けの研修プログラムを実施することで、その目標に近づけるということをしっかりと説明できるようになりました。すると数あるパラリンピック競技の中でもブラインドサッカーを応援していただければ、企業のなかで多様性を推進できることが、はっきりと企業に理解していただけるんです。現在は30社ほどの協賛企業についていただいていて、企業との連携も非常にスムーズになったと感じています」

――主要な協賛企業を「スポンサー」ではなく、「パートナー」と呼んでいますね。

「私たちが目指すビジョンに共感いただき、共に混ざり合う社会を築いていくためのパートナーです。もちろん、なかには純粋な広告を目的としている企業もあって、なかなか枠組みを作れていないケースもあります。それでも我々が研修プログラムを提供することを、できる限り契約書に明記しています。広告の費用対効果だけを見るのであれば、もっとメジャーな競技やスポーツイベントに出資をした方が効果はあります。『広告効果+多様性の理解度』を社内で広める、そのような価値を提供するようにしています」

個人からの収入拡大に注力

――障害者スポーツとしては珍しい、試合の有料化も進めています。先駆けとなった14年の世界選手権と15年のアジア選手権のチケット販売はいかがでしたか。

「多くの方が見に来てくれて、チケットの販売率は80%ほどに達しました。当初、有料化しようと関係各所を回っていた際には『絶対に失敗するからやめた方がいい』と言われることもありました。しかし、私たちはこれから先も国際大会を日本に招くという戦略を立てていたので、どこかで有料化にチャレンジしたいと考えていました。そうしないと、チケットをいくらで売っていいか分からない状態でした。14年のチケットの平均販売単価は1362円で、15年は1817円でした。平均単価はまだ上げられるという実感を持っていますが、それは実際にやってみて分かったことです」

――勝算はあったのでしょうか。

「自信はありました。私たちは学校や企業向けの研修プログラムを通して年間2万人の方々にブラインドサッカーを90分間以上体験していただいているので、そうした人たちが訪れてくれるはずだと考えていました。逆に、それでも観客を集められないようであれば、我々の事業を抜本的に見直さなければダメだとも思っていました。観客を集められるという勝算があったからこそ、安全の確保や試合のスムーズな運営のために有料化すべきだろうという考えもありました」

「14年は渋谷(国立代々木競技場フットサルコート)に独自に会場を作った効果で、観客の密度が高まり、今まで経験したことがないような一体感が生まれました。以前は『グラウンドなどの環境は、すでにあるものを提供してもらう』という考えでしたが、それ以降は『自分たちで作るもの』になりました。メディアの方々も取材に訪れ、その様子を世の中に広く伝えてくれました。サポーターやスタンド、施設も含めてスポーツなんだということに気づきました」

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