「自立してこその普及」 障害者サッカーが挑む新常識ブラインドサッカー協会・松崎事務局長に聞く(上)

スポーツイノベイターズOnline

ブラインドサッカーは視界が完全に遮られているため、メンバー同士のコミュニケーションが重要になる(練習する日本代表メンバー、2015年8月撮影)
ブラインドサッカーは視界が完全に遮られているため、メンバー同士のコミュニケーションが重要になる(練習する日本代表メンバー、2015年8月撮影)

ブラインドサッカーは視覚障害を持つ選手による5人制のサッカーだ。選手たちはアイマスクをつけて、専用のボールが出す「音」と、敵陣のゴール裏にいるガイドの「声」を頼りにプレーする。視界が完全に遮られているにもかかわらず、フィールドを駆け、ドリブルし、体同士ぶつかり合いながら、シュートを打つ。

そんな競技の迫力に加えて、ブラインドサッカーにはもう一つ際だった特徴がある。競技を統括するNPO法人の「日本ブラインドサッカー協会」が自立した運営を成功させているのだ。ほかの多くの障害者スポーツの競技団体が国や自治体からの補助金に頼っているのに対し、独自の事業で活動資金の約3割をまかなう。

同協会の事務局長として自立運営をけん引してきた松崎英吾氏(37)に自立を目指すようになった経緯と狙いについて聞いた。(聞き手・構成は久我智也=ライター)

国・自治体からの補助は収入の2割

――現在、ブラインドサッカー協会の収入の内訳はどのようになっていますか。

日本ブラインドサッカー協会の事務局長を務める松崎英吾氏

「約45%が法人からの協賛金・寄付金、約30%が事業収入。残りの約20%が国や自治体からの補助金・助成金です。小学校向けの教育プログラム『スポ育』や、企業向けの研修プログラム『OFF TIME Biz』といった事業を手がけています。ほかにブラインドサッカーで使用する、音が鳴るボールなど競技用品もよく売れています。学校や企業だけではなく、老人ホームなどからも購入いただいています」

――障害者スポーツの競技団体の場合、収入の80~90%を官の補助金・助成金で賄っているということも珍しくありません。独自の運営で収入を得ているというのは珍しいのではないでしょうか。

「ほかの競技については分かりませんが、サッカーについていえば、世界でもまれだと思います。イングランドではプレミアリーグを統括するFA(フットボール・アソシエーション)がブラインドサッカーも統括しています。FAは自分たちのプログラムを海外に導入するために各国を巡っているのですが、そんな彼らでも、日本ブラインドサッカー協会のような運営をしているところは『見たことがない』と言っていました」

――「スポ育」や「OFF TIME Biz」はサービスを受ける側にどのような効果があるのでしょうか。

「私たちはそれらの事業を『ダイバーシティ(多様性)教育プログラム』として位置付けています。ブラインドサッカーを体験することでコミュニケーションスキルやチームビルディング、リーダーシップ、ボランティア精神などを養い、同時に障害者への理解を深めるという効果があります」

(注)ブラインドサッカーは、通常80%の情報を得ている視覚情報を遮断して行う。遮断された情報を補うため、他のスポーツなどよりもメンバー同士で声を掛け合うことが重要になる。また、目が見えない状態の人とコミュニケーションを取ることになるので、コミュニケーションの取り方や、そのタイミングなどのスキルが向上する。メンバー同士がお互いのことを考えないとうまく回らないので、チームビルディングにも効果的だといわれている。
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