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転ばぬ先の不動産学

郊外の広い宅地、実質増税に 税制改正で18年から 不動産コンサルタント 田中歩

2017/7/12

リニア予定駅周辺の街並み=PIXTA

 相続税における「広大地の評価」をご存じでしょうか? 広大地とは、例えば三大都市圏の場合だと土地の面積(地積)が「500平方メートル以上」といったように、その地域の標準的な宅地の面積に比べて著しく地積が広大で、開発するときに道路や公園など公共施設のための用地が必要となる宅地を指します。簡単にいえば、最寄り駅から遠いなどマンションの分譲が難しい立地なので、戸建ての分譲用地として道路などを含め開発せざるをえないような広い宅地というイメージです。

■広大な宅地、これまでは評価減

 通常、相続税を算出する際に宅地を評価をする場合、まず宅地面積に路線価を乗じて基本となる評価額を算出します。広大地に相当する宅地については、道路などの負担に応じて最大65%まで評価額を減らせ、地積が大きいほど減額割合も大きくなります。詳細な計算式は省略しますが、この評価額を算出する際には「広大地補整率」が用いられます。

 しかし、2017年度税制改正大綱では「広大地の評価」が全て削除され、「地積規模の大きな宅地の評価」が新設されることになっています。まだ確定ではないものの、18年1月1日以降、おおむねこの案の内容で改正されるだろうといわれています。

 これは何を意味するのでしょうか。筆者が広大地を含む相続案件で一緒に仕事をしている東京シティ税理士事務所の石井力さんは、この改正案について「実質的に増税」と分析します。宅地の評価額を算出する際には広大地補整率に代わり、「規模格差補整率」(計算式は省略)で評価されるようになり、地積が大きくなればなるほど増税の度合いが高まります。

■改正後は実質増税

 下の表で広大地補正率と規模格差補正率で宅地の評価額の減額割合がどの程度、変わるかを比較しました。500平方メートルの宅地のケースをみてみましょう。従来の広大地補正率は0.575。宅地の評価額は42.5%(1-0.575=0.425)減額されます。一方、規模格差補正率は0.8で評価額は20%(1-0.8=0.2)の減額にとどまります。これまでと比べると、22.5ポイントもの開きがあります。

 なぜこのような改正案が検討されているのでしょうか。一つの要因として、土地の形状にかかわらず面積を基準に最大65%も減額できる現行制度について「優遇しすぎている」との批判があることが挙げられるでしょう。

 ただ、実質増税となる今回の改正案について石井さんは「良い面もある」と指摘します。広大地は、そもそも「広大地に該当するかどうか」の基準が曖昧な面があったのですが、「地積の大きな宅地」についてはその基準が明確になっています。広大地であるかどうかの判断基準は、例えば「マンションの立地に適しているかどうか」といったものがあったのですが、この判断は専門家でも極めて難しく、納税者と税務当局で論争になることが多々ありました。

 一方の「地積規模の大きな宅地」については(1)地積が500平方メートル以上(三大都市圏以外は1000平方メートル以上)(2)路線価図の「普通商業・併用住宅地区」または「普通住宅地区」にある(3)市街化調整区域(条例指定区域を除く)、工業専用地域、指定容積率が400%以上(東京都の特別区は300%以上)の地域以外にある――が条件となっており、明快な基準が示されているのです。

■再評価し、売却も

 今回の改正をざっくりまとめると、大きく変わるのは3つあるといえます。

 (1) マンションに適している宅地でも減税の恩恵を受けやすくなる
 (2) 賃貸マンションがすでに建っている宅地でも減税の恩恵を受けやすくなる
 (3) 広大地に該当しやすかった駅から遠い郊外の大規模宅地は増税となりやすい

 以上から考えると、広大地の評価を受けようと考えていた宅地については、改正後の基準に照らして再評価し、「売却して節税効果の高い他の不動産に組み替える」「マンションに適している土地(長期的に賃貸事業の収支が安定しそうな土地)をほかに所有しているならば、そこに売却資金をもって賃貸マンションを建築する」などといったことを改めて検討しなおす必要がありそうです。

 今回の改正案は、一定規模以上の土地を所有している人に限られる話ではありますが、節税効果の問題だけでなく、財産分割や納税資金の捻出のための売却など、相続全体の戦略に大きな影響を及ぼしそうですので、もし該当するようであれば、チェックしておくとよいでしょう。

田中歩 
 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。

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