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変わる弔いの光景 白洲次郎は「無用」としたが… 終活見聞録(8)

2017/7/7

 「終活」ブームが続いている。自分らしく人生を終えるために、元気なうちから準備をしておこうという動きだ。かつては人前で口にすることもはばかられた死の話題について、相続や家の片付けといった関連分野も巻き込んで、テレビや新聞、雑誌などで盛んに取り上げられている。背景には、家族関係や死生観の変化、高齢化の進展や地域のつながりの希薄化など様々な要因が垣間見える。

■入棺体験がひそかな人気

各地で開かれている終活フェア。様々なイベントや講座などが用意されている

 「少し怖い気がするわ」「大丈夫ですよ。入ると長生きすると言われてますよ」。年配の女性がおっかなびっくり足を入れたのは、実は棺の中。スタッフの勧めで女性はそのままあおむけに。白い布団が掛けられ、ふたが閉められる。東京都内のイオンの店舗で開かれた終活フェアのひとこまだ。実際に使う棺に入り、そこから見える景色を体感してもらおうという入棺体験は、各地のイベントで催されており、遺影撮影会と並んで人気コーナーになっている。体験した人は「思ったより狭かった」「外で話している声がよく聞こえた」など様々な感想を漏らす。自分の最期を想像した人もいたかもしれない。

入棺体験は「生前に霊柩車に乗ったり、棺に入ったりすると長生きする」という縁起かつぎにあやかった

 ショッピングセンターの一角で、死に関するイベントが開かれるなど、一昔前には考えられなかったことだ。遡れば、自分の葬儀やお墓について考えるようになったのは1990年ごろから。「終活」という言葉が使われ始めたのは2000年代後半で、12年には流行語大賞のひとつに選ばれた。最近はすっかり市民権を得て各地で関連のイベントが開かれ、大きな催しも増えている。

■都市部では家族葬が主流

 一口に終活と言ってもテーマは幅広い。代表的なものとして、まず葬儀が挙げられる。この弔いの儀式は都市部を中心に近年大きく変わってきた。キーワードは、「家族葬」と「直葬(ちょくそう)」だ。家族葬は、家族を中心に親しい人だけで見送る。周囲に告知して執り行う従来の葬儀(一般葬)と規模が異なる。通夜と告別式をして火葬する流れは変わらない。一方の直葬は、通夜や告別式をせずに荼毘(だび)に付すスタイル。

 供養・仏事の情報提供などを手掛ける鎌倉新書(東京都中央区)によれば、弔い方の割合は、一般葬が42%と最も多く、次いで家族葬32%、直葬16%となる(14年)。だが都市部で見るとこの割合は逆転する。東京の都市部では全体の5割が家族葬で一般葬は2~3割にすぎないとの指摘がある。直葬も増えており、3割近くに達する。戦後に吉田茂首相の側近として活躍した実業家の白洲次郎は、遺言に「葬式無用」と書き、遺族もそれを尊重したが、世の中の風潮はこの方向に向かっているのかもしれない。

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