2017/7/7

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葬儀の主役はもともとは家族だったが、高度経済成長期からバブル期にかけて会葬者が主役になった。遺族は会葬者の対応に追われ、故人とゆっくりお別れできないことも少なくなかった。家族葬の人気はその反動との見方もある。長寿化で故人も喪主も高齢のケースが増えたことに加えて、核家族化の進展、近所付き合いの減少で、呼びかけても会葬者が集まらないという現実もあるだろう。年配者の多くは「家族に負担をかけたくない」と小規模な葬儀を望む。家族葬をさらに省略したのが、通夜をせずに告別式のみの「一日葬」であり、通夜も告別式もしない直葬であるというわけだ。

奥に霊安室があって自動で遺体が出てくる面会室。24時間いつでも利用できる(ラステル新横浜)

「ラステル新横浜」という施設がある。JR新横浜駅からほど近く、地下1階から8階までのフロアを家族葬を中心とした葬儀をテーマにする「家族葬の館」だ。運営する霊園販売・葬祭事業のニチリョクによれば、ラステルとは家族が遺体に別れを告げる「ラストホテル」の略。

近年は病院で亡くなり、自宅ではなく葬儀会館やホールで葬儀をする人が増えた。マンション暮らしなどのため自宅が狭いといった事情もあるだろう。家族の死亡や葬儀を近所に知られたくないという人も多い。ラステルはそんな人向けの遺体ホテルとして12年にオープンした。24時間いつでも遺体と面会でき、安置だけでなく、ゆっくりと家族葬ができるように個室の面会室や専用ホール、広々としたリビングやキッチン、バスルームがある葬儀式場も備える。直葬で利用する見送りのスペースもある。

小規模化で費用は減少

業者は小規模な葬儀にシフトを強めている。家族葬や直葬の格安プランをそろえ、施設もコンパクトに。100~200人対応だった会場は50~60人規模に分割・縮小。20~30人が入る家族葬専用の部屋をつくる会館も増えた。おカネの面から見れば、当然ながら会葬者が多い一般葬の方が割が良い。葬儀業者を対象にした葬儀1件当たりの売上高は、06年の152万円をピークに下落傾向(経済産業省の特定サービス産業動態統計調査から算出)。

実際に葬儀をした人を対象にした16年の日本消費者協会(東京都千代田区)の調査では、葬儀費用の全国平均は195万7000円とピーク時(03年)より約2割減っている。業者は終活をPRすることで自らの首を絞めているとも言えそうだ。届け出や許認可が不要な葬儀業は新規参入が相次いでおり、流通大手のイオンやヤフー、「小さなお葬式」のユニクエスト・オンラインなどがその代表。競争激化も価格低下に拍車をかけている。

(注)年間の死亡数は人口動態調査(厚生労働省)、葬儀1件当たりの売上高は特定サービス産業動態統計調査(経済産業省)より
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早めに家族と話し合いを